お弁当のおかずを「揚げない」で仕上げようとすると、選択肢は自然と焼く・蒸す・ソテーするに絞られます。その中で栄養の数値を見比べると、ぶたヒレ赤肉 生が100gあたりビタミンB1 1.32mgと、この記事で扱う食材の中で突出して多く含んでいます。同じ100gあたりで比べると、しろさけ生が0.15mg、うずら卵全卵生が0.14mg、にわとりむね皮なし生が0.10mgですから、豚ヒレの数値がひとつだけ際立って高いことがわかります。「揚げない」お弁当作りでは、この数値をどう調理に活かすかが選び方の分かれ目になります。

ビタミンB1は水と一緒に流れやすい

豚ヒレを茹でこぼしたり、長時間水にさらしたりする下ごしらえをすると、せっかくの1.32mgという数値の恩恵を活かしきれない可能性があります。揚げない調理として選びたいのは、蒸す、フライパンで油を控えてソテーする、といった水に長く触れさせない加熱法です。ビタミンB1は糖質などの代謝・エネルギー産生を助ける補酵素とされる水溶性のビタミンで、長く水にさらすと流れ出やすい性質があるとされています。ビタミンB1の推奨量(成人30〜49歳)は男性1.2mg・女性0.9mgという基準に照らしても、豚ヒレ100gに含まれる量がどれだけ大きいかが見えてきます。

さらに、にんにくや玉ねぎに含まれる硫化アリル系の成分は、ビタミンB1の体内での利用を助けるとされています。豚ヒレのソテーに、みじん切りのにんにくや薄切りの玉ねぎを添えるだけで、豚ヒレを選んだ意味がより活きる組み合わせになるということです。お弁当のおかずとしては、下味ににんにくを効かせたソテーや、玉ねぎと一緒に炒め合わせる一品が、この性質にかなった作り方といえます。

ほかの食材はビタミンB群で個性が分かれる

にわとりむね 皮なし 生は、100gあたりナイアシン12.0mg、ビタミンB6 0.64mg、パントテン酸1.92mgと、B群のいくつかの項目で豚ヒレやしろさけを上回ります。ナイアシンやパントテン酸は皮膚や粘膜の健康維持を助けるとされる栄養素で、たんぱく質23.3gという数値と合わせて、揚げずに蒸し鶏やソテーにしても崩れにくい食材です。

しろさけ 生は100gあたりビタミンD 32µgが際立ちます。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し骨の形成に関わるとされる脂溶性のビタミンで、皮を面倒に思わず身をムニエルやホイル蒸しにすれば、揚げずに一切れ(目安100g)をそのままお弁当の主菜にできます。なお、さけは食物アレルギーを起こしやすいとされる特定原材料に準ずる食材のひとつでもあるため、初めて食べさせる場合などは留意が必要です。

野菜とうずら卵で彩りと粘りを添える

ブロッコリー 花序 ゆでは100gあたりビタミンC 55mg、ビタミンK 190µgを含みます。ビタミンCは抗酸化やコラーゲンの生成に関わるとされ、ビタミンKは血液凝固や骨の形成に関わるとされる栄養素です。ビタミンCの推奨量(成人30〜49歳)は男女ともに100mgと照らしても、ゆでたブロッコリーひと房分でまとまった量になることがわかります。オクラ 果実 ゆでは刻むと粘りが出るのが特徴で、水溶性食物繊維を100gあたり1.6g含み、ブロッコリーの1.0gと並んで水溶性食物繊維が多い側の野菜です。彩りとしても粘りとしても、揚げないお弁当の副菜に向いています。

うずら卵 全卵 生は100gあたりでヨウ素140µg、レチノール350µg、セレン46µg、ビオチン19µgと、複数のミネラル・ビタミンで数値が高めです。ヨウ素とセレンには耐容上限量が設定されており、ヨウ素の推奨量(成人30〜49歳)は男女ともに140µg、セレンの推奨量(成人30〜49歳)は男性35µg・女性25µgという基準がありますが、うずら卵は1個がおよそ10gと小さく、卵殻を除いた可食部はさらに少量になるため、煮卵にして1〜2個を彩りに添える程度であれば過剰を心配する量ではありません。

お弁当への取り入れ方

豚ヒレは適量をそぎ切りにしてにんにくの薄切りと玉ねぎとともに油を控えたフライパンでソテーすれば、揚げずに一皿が完成します。水にさらす下ごしらえを省き、短時間でさっと火を通すことが数値を活かす調理の要点です。副菜にはゆでブロッコリーやゆでオクラを添え、彩りにうずら卵を1〜2個加えれば、揚げ物を使わなくても主菜・副菜がそろったお弁当になります。

まとめ

豚ヒレのビタミンB1量は、同じ100gあたりで比べたほかの食材と比べて大きく上回ります。その数値は、水にさらしすぎない調理と、にんにくや玉ねぎとの組み合わせがあってはじめて活きるとされています。揚げない選択肢の中でも、蒸す・ソテーするといった水に長く触れさせない加熱法を選び、香味野菜を添えることが、豚ヒレを選ぶ理由をそのままお弁当に持ち込むコツといえそうです。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 日本人の食事摂取基準