運動した後、筋肉は微細な損傷を修復しながら強くなる。その材料になるのがたんぱく質だ。食品によって含有量も、一緒に含まれる成分も違う。今回は日本人の食事摂取基準のデータと日本食品標準成分表(八訂)の数値をもとに、スポーツ後の回復を意識したときに役立つ食品を比べてみる。

たんぱく質の量だけ見ていては、もったいない

肉や魚はたんぱく質の供給源として知られるが、100gあたりの含有量を実際に見ると、食品ごとに個性がある。にわとり若どりむね肉(皮なし・生)は可食部100gあたりたんぱく質23.3g、女性30〜49歳の推奨量50g/日の47%に相当する。低脂質(1.9g)でエネルギーは105kcalとコンパクトで、1枚(約170g)を食べれば推奨量の1日分に近い量を一度に補える計算になる。

ぶた中型種もも赤肉(生)は100gあたり21.9g(推奨量の44%)で、脂質は5.3gとやや増えるぶん、エネルギーは133kcal。薄切り1枚が約30gなので、1食で4〜5枚使えばたんぱく質量はしっかり確保できる。特に注目したいのはビタミンB1で、100gあたり1.01mgと推奨量0.9mg/日を上回る水準(112%)だ。ビタミンB1は糖質などの代謝・エネルギー産生を助ける補酵素。運動でエネルギーを大量に使った後に、たんぱく質と一緒に摂れる点が豚もも肉のひとつの特徴といえる。なお、ビタミンB1は水に弱く長時間水にさらすと流れ出やすいため、炒め物や短時間の調理が向いている。にんにくや玉ねぎと合わせると吸収が高まるとされており、豚肉のにんにく炒めは理にかなった組み合わせだ。

魚介類から選ぶなら、みなみまぐろ赤身(生)が際立つ。別名インドまぐろとも呼ばれ、南半球の海域でとれる。100gあたりのたんぱく質は21.6g(推奨量の43%)で、脂質はわずか0.4g、エネルギーは88kcalとこの中で最も低い。刺し身5切れ(約50g)で摂れるたんぱく質は約10.8gと手軽だ。ビタミンB6も100gあたり1.08mg(推奨量1.2mg/日の90%)と高い水準にある。ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関わる補酵素で、たんぱく質の摂取量が多いほど必要量が増すとされるため、高たんぱく食と合わせて意識したい成分のひとつだ。ビタミンB6は加熱や水に弱く損失しやすいため、刺し身のように生で食べられるみなみまぐろは、この成分を活かしやすい食べ方でもある。

植物性・乳製品も組み合わせの戦力になる

糸引き納豆は100gあたりたんぱく質16.5g(推奨量の33%)と動物性食品よりは少ないが、1パック(約100g)で手軽に補えるのが魅力だ。食物繊維が100gあたり9.5g(目標量18g/日の53%)と豊富で、腸内環境も同時に整えやすい。納豆菌を含む発酵食品でもある。運動後に副菜1品として加えるだけで、たんぱく質と食物繊維の両方を一度に確保できる。

無脂肪無糖ヨーグルトは100gあたりたんぱく質4g、エネルギー37kcalと量は少ないが、そのまま食べるよりも他の食品と組み合わせる「つなぎ役」として使いやすい。乳酸菌を含む発酵食品であることも特徴だ。

植物性たんぱく質の補助として、ひまわりの種(乾)はひとつかみ(20〜30g程度)でたんぱく質約3.9〜5.9gを摂れる。乾燥種実の可食部100gあたりでは19.5g(推奨量の39%)と高い数値だが、一度に食べる現実的な量は20〜30g程度だ。スープやサラダに少量ちらすトッピングとして、たんぱく質を上乗せする感覚で活用すると使いやすい。

回復食の組み立て方:一品でまかなわず、重ねる

運動後の食事でたんぱく質を意識するとき、一品で全量を確保しようとするよりも、複数の食品を組み合わせて一食のトータルを積み上げる方が現実的だ。たとえば、みなみまぐろの刺し身5切れ(約50g)でたんぱく質約10.8g、そこに糸引き納豆の小パック(約50g)で約8.3g、無脂肪無糖ヨーグルト100gで4gを合わせると、合計で約23gになる。ここに豚もも肉や鶏むね肉を加えた主菜を組み合わせれば、回復に向けたたんぱく質量をより確実に確保できる。

また、高たんぱく食を継続するときはビタミンB6の需要も上がるとされている。みなみまぐろ・鶏むね肉のように、たんぱく質と同じ食品からビタミンB6を摂れる選択肢を軸にするのは、実践的なアプローチのひとつだ。豚もも肉を使うときは、アリシンを含むにんにくや玉ねぎを加えると、ビタミンB1が体内に留まりやすくなるとされている。食べ合わせのひと工夫が、同じ食材の価値を少し変えてくれる。

「回復」はひとつの食品や成分で完結するものではない。いくつかの食品に含まれる成分を日々の食卓で重ねていく、その積み重ねが大切になる。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準文部科学省 食品成分データベース消費者庁