鶏肉の脂質を抑えたいとき、部位選びと同じくらい効いてくる要素がある。皮の有無だ。食品成分表の数値を並べると、部位を変えるよりも皮を一枚外すほうが脂質を大きく減らせるケースがあることが、数字として浮かび上がる。

皮ひとつで脂質は5.9gから1.9gへ

皮つきのむね肉(生)は脂質5.9g、皮なしのむね肉(生)は1.9g——100gあたりで4.0gの差、つまり皮つきの約3分の1(32%)まで下がる計算だ。皮の部分は脂肪が多く、たんぱく質が相対的に薄い組成のため、皮を取ることで脂質が大幅に減るのに、たんぱく質はほぼ落ちないどころかわずかに増える(皮つき21.3g→皮なし23.3g)。

市販品の目安量はそれぞれ異なり(皮つきが約200g、皮なしが約170g)、同一個体の皮剥き前後の重量変化ではなく別々の販売形態の目安量として参考にされたい。100gあたりの差(4.0g)を主軸に置きつつ、一食分換算の参考値として示すと:皮つき約200g分で約11.8g、皮なし約170g分で約3.2gとなる。

ささみ・もも皮なしと並べると見えてくること

ではささみ(生)はどうか。脂質は100gあたり0.8gとさらに低く、たんぱく質は23.9g。脂質の少なさではささみが頭ひとつ抜けている。ただし1本あたりの目安量は約40gなので、1本で摂れるたんぱく質は約10gにとどまる。複数本まとめて使う料理向きの食材だ。

もも肉(皮なし・ゆで)は脂質5.2g、たんぱく質25.1g。この数値はゆでた状態であり、むね皮なし(生)の1.9gとは調理状態が異なるため単純比較には注意が必要だが、参考として並べると脂質は2.7g多い。部位ごとの傾向として、皮を外したもも肉よりも、むね(皮なし)のほうが脂質は低い水準にある。

むね(皮なし)はたんぱく質の効率も高い

脂質を減らしながら、むね(皮なし)はたんぱく質とビタミン面でも高い水準を保っている。ナイアシンは100gあたり12mg、ビタミンB6は0.64mg(日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳の推奨量1.2mg/日の53%)。

ナイアシンは皮膚や粘膜の健康維持に関わるとされ、ほかのビタミンB群と一緒にとると効率よく働くとされる。ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関わるビタミンだ。水溶性ビタミンであるため、水にさらす時間を短くする調理法(炒める・蒸すなど)を選ぶとよいとされる。なお、ビタミンB6には耐容上限量(過剰摂取の上限)が設定されており、他の食品からの摂取量も合わせて累積量を意識することが望ましい。

エネルギーは100gあたり105kcalで、皮つきの133kcalから28kcal下がる。たんぱく質1gあたりのカロリーを少なくしたい場面でも、皮なしのむねは実用的な選択肢になる。

皮を剥ぐ、それが脂質コントロールの一手になる

脂質を抑えたいなら、まず皮を外す。むね肉の皮を剥ぐだけで、脂質は大幅に下がり、たんぱく質・ナイアシン・ビタミンB6は高い水準のまま残る。ただし、脂質コントロールは一食品の操作だけで完結するものではなく、食事全体の構成とあわせて検討することも大切だ。

ささみは脂質の少なさでは優位だが、1本あたりの量が少ないため複数本必要になる。もも(皮なし)はゆでた状態でも脂質がむね(皮なし・生)を上回る。部位で悩む前に、手元の鶏肉の皮を見る——それが脂質を意識した食選びの実践的な最初の一歩になる。

  • むね(皮つき・生):脂質5.9g・たんぱく質21.3g(100gあたり)
  • むね(皮なし・生):脂質1.9g・たんぱく質23.3g(100gあたり)
  • もも(皮なし・ゆで):脂質5.2g・たんぱく質25.1g(100gあたり)
  • ささみ(生):脂質0.8g・たんぱく質23.9g(100gあたり)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準