食品の甘みのもとになる「糖アルコール」。糖の分子にアルコール基がついた構造をもち、消化管で吸収されにくいために低カロリー甘味料として用いられます。キシリトールやソルビトールなどがその仲間で、酸をつくらないため、う蝕(虫歯)の原因になりにくいとされています。トウモロコシやヤシのでんぷんを原料に工業的に生産されるものも多くあります。この糖アルコール、日本人の食事摂取基準には推奨量や目安量といった数値の基準は設定されていません。しかし、どの食品にどれだけ含まれているかを見ていくと、意外な顔ぶれが浮かび上がってきます。
成分表のデータで糖アルコールの含有量(100gあたり)が多い食品を並べると、上位5食品のうち2つを「こんぶ」が占めていました。しかもこのこんぶ、糖アルコールとは別の成分で見過ごせない事実を抱えていたのです。
上位5食品を読み解く
1位・2位はでんぷん由来の甘味料
1位は還元麦芽糖で、糖アルコールが100gあたり98.9g、ほぼ丸ごと糖アルコールという構成です。炭水化物も100gと突出しており、脂質やナトリウムはほとんど含まれません。2位の還元水あめも69.9g(推定値)と多く、そのうちソルビトールが16.4gを占めています。水あめはでんぷんを分解してつくられ、砂糖よりも甘さがソフトで料理に照りやつやを与える性質があります。ここまでは「甘味料だから糖アルコールが多い」という納得の展開です。
3位・4位、まさかのこんぶ
ところが3位に躍り出るのがまこんぶ 素干しで、糖アルコール23.4g。4位も刻み昆布で12.4gと、甘味料でも果物でもない海藻が2枠を占めています。この2品の糖アルコールは、いずれもマンニトールによるものです。こんぶは食物繊維が豊富でエネルギーが低い藻類ですが、糖アルコールという切り口で見ると、意外にも上位の常連だったわけです。
ただし、ここで数字の裏側をもう少し覗いてみる必要があります。まこんぶにはヨウ素が100gあたり200000µg含まれており、これは女性30〜49歳の推奨量140µg/日の約1400倍にあたります。さらに見過ごせないのは、この量が耐容上限量3000µg/日の約66.7倍に達している点です。刻み昆布はもっと多く、ヨウ素230000µgで上限量の約76.7倍にもなります。
いずれも100gあたりの値で、まるごと100g食べることは通常ありません。ただし乾燥こんぶはヨウ素が非常に濃く、ごく少量でも上限に届きます。たとえば刻み昆布5gでヨウ素は約11500µg、上限量の3倍を超える計算です。少量だから安心、とは言い切れません。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わる成分ですが、こんぶのように極端に濃い食品は、だしや煮物に少量使う程度にとどめるのが無難です。
こんぶにはほかにもカリウム(まこんぶ6100mg、刻み昆布8200mg)やマグネシウム(まこんぶ530mg=推奨量290mg/日の183%、刻み昆布720mg=同248%)も豊富です。栄養素ごとに「多い=良い」とは限らない、というのがこんぶの数字が教えてくれることです。
5位は果物の甘み由来
5位はプルーン 乾で、糖アルコール12.1g。プルーンは西洋すももの別名を持つ果実で、甘みの主体はぶどう糖24.6g(推定値)です。ほかにβ-クリプトキサンチン220µg(体内でビタミンAに変わる成分)や水溶性食物繊維3.4gも含みます。少量でも自然な甘みと糖アルコールの両方を含む果物といえます。
まとめ
糖アルコールの上位を辿ると、甘味料であるでん粉糖類が並ぶのは想定内としても、そこにこんぶが2品も食い込んでくるのは、数字を見なければ気づきにくい発見でした。しかもそのこんぶは、同じ100gという土俵でヨウ素が耐容上限量の数十倍という顔も持っていたのです。乾物のこんぶはだしや煮物に少量使うことが多い食品ですが、ヨウ素が非常に濃いため、まとめて大量に食べる使い方は避け、少量を上手に取り入れるのが安心です。糖アルコールという一つの物差しだけでは見えてこない食品の姿を、こんぶは教えてくれます。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準