糖アルコールと聞くと、多くの人が思い浮かべるのはガムや飴に使われる人工甘味料でしょう。糖アルコールとは、糖の分子にアルコール基(-OH)をつけた構造をもつ甘味成分の総称で、キシリトールやソルビトール、マルチトール、エリスリトールなどが代表例です。トウモロコシやヤシの澱粉などを原料に工業的につくられ、消化管で吸収されにくいため低カロリー甘味料として使われます。ソルビトールやマルチトール、キシリトールといった糖質系甘味料は、いずれも低う蝕性(虫歯になりにくい性質)をもつとされる点も特徴です。
日本食品標準成分表(八訂)で糖アルコールの含有量を可食部100gあたりで比べてみると、上位5食品のうち1位・2位は予想どおり甘味料そのものですが、3位・4位に海藻の昆布が入ってきます。しかもこの昆布、糖アルコールと同時にヨウ素を大量に含んでおり、耐容上限量を60〜70倍超えるという別の顔を持っています。数字を追いながら、その意外な中身を見ていきましょう。
1位・2位は「甘味料としての糖アルコール」の王道
第1位は還元麦芽糖で、糖アルコールが100gあたり98.9g、ほぼ全量を占めます。エネルギーは208kcalで、これは炭水化物100g(その大半を占める糖アルコール)に由来する数値です。脂質やナトリウムはほぼゼロで、まさに糖アルコールの塊といえる食品です。
第2位は還元水あめで、糖アルコールは69.9g(推定値)、うちソルビトールが16.4gを占めます。エネルギーは210kcalです。でんぷんを酸で分解してつくられる水あめは、粘りがあり砂糖よりも甘さがソフトで、料理に照りやつやを与える性質があります。大さじ1杯なら21g、小さじ1杯で7g程度が目安量なので、実際に料理で使う量で見れば摂取できる糖アルコールはごく少量にとどまります。
3位・4位に昆布が浮上——その裏にあるヨウ素の注意点
ここで順位表に意外な顔ぶれが登場します。第3位のまこんぶ 素干しは糖アルコールが23.4g、第4位の刻み昆布は12.4gと、甘味料に混じって海藻が食い込んでいるのです。昆布は食物繊維が豊富でエネルギーが低い藻類ですが、この2つの数字の裏には見過ごせない事実が隠れています。
まこんぶ(素干し)はヨウ素を100gあたり200,000µg含みます。ヨウ素の耐容上限量は3,000µg/日(18歳以上)と定められており、この含有量はその約66.7倍(200,000µg÷3,000µg)に達します。刻み昆布はさらに多く、ヨウ素230,000µgで耐容上限量の約76.7倍(230,000µg÷3,000µg)です。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わる成分ですが、これはあくまで乾燥昆布100gあたりの値であり、日常的な使用量ではここまで摂ることは通常ありません。ただし「糖アルコール目当てで昆布を積極的に食べる」という発想をした場合、ヨウ素の過剰摂取という別のリスクを背負うことになる点は押さえておきたいところです。まこんぶは5cm角で約2g、素干し10cm角1枚で約10g、刻み昆布は1人分約5gが目安量とされ、通常の使い方であれば過度に心配する数値ではありません。
なお昆布はカリウムも豊富で、まこんぶは6,100mg、刻み昆布は8,200mgと、女性30〜49歳の目安量2,000mg/日を大きく上回ります(いずれも100gあたりの値)。カリウムは細胞内の浸透圧を保ち、正常な血圧の維持に関わる成分です。マグネシウムもまこんぶで530mg(女性30〜49歳の推奨量290mg/日の約183%)、刻み昆布で720mg(同約248%)と高く、骨をつくり多くの酵素やエネルギー代謝に関わる成分として、こちらも100gあたりの数値としては高水準です。
5位のプルーンは「量で見れば控えめ」
第5位はプルーン 乾で、糖アルコールは12.1g、エネルギーは211kcalです。プルーンは西洋すももとも呼ばれ、果実は卵形をしています。ぶどう糖も24.6g(推定値)含み、これは脳など特定の組織の主要なエネルギー源となる単糖です。また体内でビタミンAに変わる成分であるβ-クリプトキサンチンを220µg、水溶性食物繊維を3.4g含みます。種なし1個で約10gが目安量なので、これも一度に摂れる糖アルコールの量としてはわずかです。
※特定の食品の効果を示すものではありません。
数字の濃さは「量の多さ」ではなく「乾物ゆえの濃縮」
今回の上位5食品を並べてみると、還元麦芽糖や還元水あめは甘味料そのものとして糖アルコールが濃縮されている一方、実際に使う量(大さじ・小さじ単位)で見れば摂取量は限られます。プルーンも1個約10gという目安量では、含まれる糖アルコールはごく少量です。対して昆布は乾物であるため、少量の重量でも100gあたりの数値そのものは大きく出やすい食品です。数字だけを見て「昆布は糖アルコールが多いから」と積極的に食べる量を増やすのではなく、いつもの目安量を守りながら、だしや炒め物に使う程度で楽しむのが無理のない付き合い方といえそうです。糖アルコールという一つの切り口をたどるだけで、甘味料と海藻という意外な組み合わせと、その裏に潜むヨウ素の数字まで見えてくるのは、成分表を読み解く面白さかもしれません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)