甘いのに虫歯になりにくい——そんな性質を持つ糖アルコールが「ソルビトール」です。ソルビトールは糖質系の甘味料の中でも低う蝕性(虫歯の原因になりにくい)とされる成分です。日本人の食事摂取基準には摂取量の目安となる基準値は設定されていませんが、成分表には含有量が記録されている食品があり、そこから「どの食品に多いか」を見ていくと、意外な一面が見えてきます。
ソルビトールが多い食品トップ5
1位・2位:水あめとプルーンの共通点
もっとも多いのは(でん粉糖類) 還元水あめで、可食部100gあたり16.4g、210kcal。でんぷんを酸で分解して糖化させた水あめは、砂糖よりやわらかな甘さと料理への照り・つやづけに使われる食材で、大さじ1杯(21g)でも一定量のソルビトールを含んでいます。2位はプルーン 乾で可食部100gあたり12.1g(推定値)、211kcal。西洋すももとも呼ばれる果実で、種なし1個約10gが目安量です。水溶性食物繊維は可食部100gあたり3.4g含みます。水あめもプルーンも、脂質やナトリウムがほぼゼロという共通点も持っています。
3位:松前漬けしょうゆ漬に潜む別の顔
3位は和風料理 その他 松前漬け しょうゆ漬で、可食部100gあたりソルビトール4.3g、166kcal。昆布や数の子を使う和風の惣菜で、ここまでは「甘みがありながら虫歯になりにくい食品」という並びに違和感はありません。ところがこの食品、もう一つの顔を持っています。ヨウ素の含有量が可食部100gあたり10000µgと突出しており、可食部100gあたりで換算すると成人の推奨量140µg/日の7143%(約71.4倍)に相当します。同じく可食部100gあたりで換算すると、耐容上限量3000µg/日の約3.3倍にもなります。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わる成分とされていますが、多ければ多いほど良いというものではなく、この食品に関しては食べる量に気をつけたい食品といえます。目安としては、一度に100gをまるごと食べきるのではなく、小鉢に取り分ける程度の少量にとどめ、毎日ではなく時々の楽しみとして頻度を抑えて食卓に取り入れると、ヨウ素の摂りすぎを避けながら松前漬けの風味を楽しみやすくなります。虫歯になりにくい甘みを持ちながら、量には気をつけたい——同じ食品の中に利点と注意点が同居している、興味深い一例です。
4位・5位:果実と練り物にも
4位はあんず 乾で可食部100gあたり3.4g(推定値)、296kcal。アプリコットとも呼ばれ、独特の芳香と甘さを持つ果実です。1個約8gが目安量で、可食部100gあたりで見ると、体内でビタミンAに変わるとされるβ-クリプトキサンチンを270µg、細胞内の浸透圧を保ち正常な血圧の維持に関わるとされるカリウムを1300mg含みます。5位はさつま揚げで可食部100gあたり3.3g、116kcal。1枚(小判型)30gが目安量で、揚げ物のため脂質はやや多めの食品です。果実由来の甘みだけでなく、練り物のような加工食品にもソルビトールが使われていることがわかります。
数字から見える食品選びのヒント
今回の上位5食品を並べてみると、ソルビトールという一つの糖アルコールが、水あめのような甘味料から果実の乾物、さらには練り物まで、意外に幅広い食品に含まれていることが見えてきます。虫歯になりにくいという性質は魅力的ですが、松前漬けしょうゆ漬のように、同じ食品の中にヨウ素という別の成分が大きな存在感を持っているケースもあります。甘さの性質だけを見て食品を選ぶのではなく、その食品にどんな成分がどれくらい含まれているのか、あわせて確認してみることが、日々の食事選びをより丁寧にしてくれそうです。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準