「う蝕(虫歯)の原因になりにくい」という特性をもつ甘味料のグループがあります。糖アルコールと呼ばれる成分で、砂糖と同じように甘みをもちながら、消化管で吸収されにくい性質をもつため、低カロリー甘味料として食品に使われています。キシリトール・ソルビトール・マルチトール・エリスリトールなどがその代表例です。厚生労働省のe-ヘルスネットは「糖アルコール(ソルビトール・マンニトール等)は発酵性(酸産生性)がなく、う蝕の原因になりません」と明示しています。なお、糖アルコールには日本人の食事摂取基準に推奨量や目安量などの定量的な基準は設定されていません。
日本食品標準成分表(八訂)で糖アルコールの含有量を調べると、上位に意外な顔ぶれが並びます。1位・2位は加工品の甘味料ですが、3位と4位に昆布が2品も登場するのです。この「昆布という海藻に天然の糖アルコールが豊富」という事実は、同時に見逃せない注意点とセットになっています。
上位5食品を読み解く
1位・2位:甘味料として設計された製品
第1位は還元麦芽糖(でん粉糖類)で、可食部100gあたり98.9gという高い数値です。第2位の還元水あめ(でん粉糖類)は69.9gを含みます。どちらもトウモロコシなどのでん粉を原料に工業的に生産された甘味料で、う蝕リスクを抑えたい用途向けに製造された製品です。これらは料理や加工食品の材料として使う甘味料であり、日常的に大量にそのまま食べるものではありません。
3位・4位:天然の糖アルコールを含む昆布
第3位のまこんぶ(乾燥品)は可食部100gあたり糖アルコール23.4g、その全量がマンニトールという成分です。第4位の刻み昆布は12.4gで、こちらも全量がマンニトールです。マンニトールは昆布に天然に含まれる糖アルコールの一種で、昆布の表面に白く粉をふいている成分がこれにあたります。
ここで重要な数字を並べます。まこんぶ(乾燥品)の可食部100gには、ヨウ素が200,000µg含まれています。刻み昆布は230,000µgです。ヨウ素の耐容上限量(これを超えると健康への悪影響が懸念される量)は1日3,000µgと定められています。100gあたりの数値と上限量を比べると、まこんぶは約66.7倍、刻み昆布は約76.7倍に相当します。これはあくまで「可食部100gあたりの値」と「1日の耐容上限量」を比較した数字であり、100gを一度に食べることを推奨するものではありませんが、ヨウ素については通常の推奨量に対する割合という基準ではなく、耐容上限量そのものを大きく超える水準であることを確認しておく必要があります。なお、妊婦・授乳婦・甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病など)を有する方はヨウ素過剰に対する感受性が特に高く、一般成人の耐容上限量とは別に注意が必要です。これらに該当する方は、昆布の摂取量について医師または管理栄養士にご相談ください。
「糖アルコールが豊富だから」という理由で昆布を積極的に食べようとすると、糖アルコールより先にヨウ素の過剰摂取リスクにぶつかる——これがこのランキングの持つ逆説です。安心に見える成分を追いかける行為が、別の栄養素の過剰を生む構図を、数字の上に浮かび上がらせます。
5位:果実由来のソルビトール
第5位はプルーン 乾で、100gあたりソルビトール12.1gを含みます。プルーンは西洋すももとも呼ばれ、果実が卵形をしています。文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」の目安量欄では種なし1個を約10gとしており、その量に含まれる糖アルコールはごく少量です。果実由来の甘味と糖アルコールが同居する、日常にとり入れやすい存在といえます。
「ランキングの数字」と「日常の食べ方」の間にある安全地帯
昆布の一食の目安量は、日本昆布協会の目安を参考にすると、まこんぶ(乾燥品)で5cm角約2g、刻み昆布で1人分約5gとされています。しかし、まこんぶ(乾燥品)を約2g食べた場合でも、ヨウ素量は約4,000µgとなり、1日の耐容上限量3,000µgを上回ります。ランキングの100gあたりの数値と比べれば絶対量は大きく下がりますが、少量であっても耐容上限量を超えうる点は認識しておく必要があります。昆布を日常的に料理のだしや少量の具として使うことは日本の食文化に根ざした自然な食べ方ですが、ヨウ素摂取の観点からは頻度と量の両方に目を向けることが大切です。
ただし、昆布だしとして使う場合も、加熱によってヨウ素は煮汁に溶出します。毎日昆布だしを使う習慣がある場合は、累積的なヨウ素摂取量にも目を向けることが大切です。特に妊婦・授乳婦・甲状腺疾患を有する方は、かつおだしやいりこだしと使い分けるなど、摂取頻度に配慮することをお勧めします。気になる方は医師または管理栄養士にご相談ください。
糖アルコールという成分に着目してランキングを眺めるとき、数字の背後にある別の文脈——ヨウ素という栄養素と、その耐容上限量——まで読み届けてはじめて、食品の特性を正しく把握したことになります。成分表のデータは「何がどれだけ入っているか」を教えてくれますが、「どう食べるか」という文脈と合わせて読むことで、はじめて食卓での判断に役立ちます。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「代用甘味料」/文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」/厚生労働省「日本人の食事摂取基準」/日本昆布協会「昆布の目安量」
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。