7月23日は大暑にあたる。一年で最も暑さが厳しいとされる時期で、この時期をはさむ「土用の丑の日」にうなぎを食べる風習は広く知られている。なぜ他の食材ではなくうなぎなのか。その起源は諸説あり、語呂合わせなど文化的な由来によるところが大きいとされるが、栄養の中身を見ていくと、うなぎには多くの脂溶性ビタミンが含まれており、脂と一緒に食べることで体への取り込みが良くなるという性質を持つ。これはあくまで後付けの見方だが、もちろんうなぎの主要成分はたんぱく質や脂質でもあり、かば焼という食べ方は、そうした栄養をまとめてとれる組み合わせといえる。
うなぎの実測値を見てみる。うなぎ かば焼には100gあたりレチノール(ビタミンAの一種で、視覚の維持や成長・生殖、皮膚や粘膜の健康に関わる)が1500µg含まれる。うなぎ 養殖 生ではさらに多く2400µgだ。加えてビタミンDもかば焼で19µg、養殖生で18µgと、女性30〜49歳の目安量9.0µg/日を大きく上回る量を含む(いずれも100gあたり)。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨の形成に関わるとされる栄養素で、脂溶性のため油脂と一緒にとると吸収率が高まるという性質がある。うなぎ自体が脂質19.3g(養殖生)・21g(かば焼、いずれも100gあたり)を含む脂ののった魚であることを考えると、この一皿はビタミンDを摂るには理にかなった食べ方といえる。さらに抗酸化に関わるα-トコフェロール(ビタミンEの一種)も養殖生で7.4mgと、女性30〜49歳の目安量6.0mg/日を超える(100gあたり)。うなぎはレチノール・ビタミンD・α-トコフェロールという脂溶性ビタミンを併せ持つ食材だ。1串=約100gのかば焼を思い浮かべると、この量感がイメージしやすい。ただしビタミンAには摂りすぎに注意が必要な耐容上限量が設定されており、ここで示した量は目安量に対する数値であって上限の基準ではない。かば焼はたんぱく質も23g(100gあたり)と豊富で、女性の推奨量50g/日の46%にあたる。
大暑の食卓を彩るのはうなぎだけではない。こってりと脂ののったうなぎを主役に据えると、まわりに欲しくなるのは口直しや水分を補う品々だ。冷たい麺を食べる習慣も夏らしい涼のとり方だ。そうめん・ひやむぎ 乾のうち、ひやむぎはそうめんとうどんの中間の太さの麺とされる。エネルギーは100gあたり333kcalで、糖のうちで最も多いのは麦芽糖2.4g(100gあたり)である。乾麺1食分の目安は約80gだ。うなぎの脂と甘辛いたれに対して、さっぱりとした麺つゆで食べる冷たい麺は箸休めのような存在になる。
夏の楽しみといえば果物や野菜も欠かせない。すいか 赤肉種 生は黒皮で果肉が赤色のものが対象で、エネルギーは100gあたり41kcalと軽い。おなかを冷やすとされるため、下痢気味の人や胃腸が弱い人は控えめにしたい。1/8玉で約400gが目安になる。もも 白肉種 生も夏の代表的な果物で、酸味の主体はリンゴ酸0.3g(100gあたり)である。1個の目安は約250gだ。赤色トマト 果実 生は赤い色素成分リコピンを含み、出回っているもののほとんどは完熟型と呼ばれる品種とされる。お弁当にミニトマトを入れる際はヘタを取ると食中毒のリスクを抑えられるとされているので覚えておきたい。スイートコーン 未熟種子 生(成分表に個別収録がないため一般的な食品の参考値)は甘みの強い種を未熟なうちに収穫したもので、ハニーバンタムが代表品種とされる。糖のうちで最も多いのはしょ糖3.3g(100gあたり)だ。1本の見当は約300gだが、廃棄率が50%あるため実際に食べられる量はその半分ほどになる。夏バテしがちなこの時期は、こうした水分の多い野菜や果物で食が進むよう工夫されてきたのだろう。
食卓を支える主食にも触れておきたい。水稲めし 精白米 うるち米は、茶碗1杯で約150gが目安とされる。そして食後や食間には麦茶 浸出液が涼をとる定番だ。100gあたりわずか1kcalと、汗をかいた体に負担なく水分を補える存在である。
大暑の献立を並べてみると、うなぎのこってりとした一皿を軸に、冷たい麺で口直しをし、すいかやトマト、とうもろこしで水分と彩りを添え、麦茶で喉を潤す——という流れが見えてくる。脂ののったうなぎを土用の丑の日に食べる風習の起源は諸説あるが、結果として脂溶性ビタミンを脂と一緒にとる食べ方にもなっている、という見方もできる。次にうなぎを口にするときは、その一切れに込められた「脂と一緒だからこそ吸収が高まる」という組み合わせを、少し思い出してみてもいいかもしれない。
参考:日本人の食事摂取基準
【摂取量の目安】うなぎ 養殖 生は、ビタミンA(レチノール)が1食(約200g)で耐容上限量2700μgRAEの約1.8倍(100gでは約89%)にあたります。 うなぎ かば焼は、ビタミンA(レチノール)が100gで耐容上限量2700μgRAEの約56%で、多めの一食で上限に達し得ます。 ビタミンA・Dは脂溶性で体に蓄積しやすいため、多量・連日の摂取やサプリメント併用、妊娠中は過剰摂取に注意が必要とされます(通常の食事で時折とる分には問題になりにくいとされます)。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準