多くの地域では、月遅れ盆として8月13日から16日にお盆が営まれます。一方、東京・神奈川・北海道の一部、金沢市、静岡県の都市部などでは新暦の7月13日から16日に行われるとされています。明治の改暦への対応が地域で分かれたことによるといわれ、同じ「お盆」でも家庭によって日取りが違うのは、この歴史的な経緯のためです。お盆は先祖の魂を迎える行事で、なすやきゅうりで精霊馬を作る風習が知られています。この時期の食卓にはそうめんべいなすあずきが並びます。三品は見た目も食べる場面もまったく異なりますが、成分表を開くとそれぞれが違う成分で自分だけの一番を持っていることがわかります。

そうめんの甘みの正体

そうめん・ひやむぎ乾(乾麺)は100gあたりエネルギー333kcal、たんぱく質9.5g、炭水化物72.7gです。この炭水化物の大部分を占めるのはでん粉62.4gで、消化されてエネルギー源になる多糖です。一方、糖類(単糖・二糖)に絞ると麦芽糖2.4g、しょ糖0.2g、ぶどう糖0.1gの順で、麦芽糖が最も多くなっています。麦芽糖はブドウ糖2つがつながった二糖で、ゆでる前の乾麺の時点ですでにこの構成です。そうめんの淡い甘みは、この麦芽糖が主体だと読み取れます。乾麺1食分は目安として約80g程度で、氷水で冷やしてつるりと食べる涼の一皿です。

あずきの多面的な際立ち

あずき全粒乾は100gあたりエネルギー304kcal、たんぱく質20.8gで、これは女性30〜49歳のたんぱく質推奨量50g/日の約42%にあたります。この記事で並べた3食品の中で、あずきが最も多い成分は一つではありません。

ミネラルではモリブデンが210µgで際立っており、これは女性30〜49歳の推奨量25µg/日の840%にあたります(いずれも100gあたりの値)。モリブデンは尿酸の生成などに関わる酵素の材料となる微量ミネラルです。耐容上限量(女性30〜49歳:500µg/日)が定められていますが、この840%という数値は100gあたりのものであり、小さじ1(4.1g)や大さじ1(12.3g)といった実際の一食量での摂取量とは異なります。有機酸ではクエン酸1.1gも3品の中で最多で、クエン酸はエネルギー代謝(クエン酸回路)に関わる有機酸として知られています。

さらにビタミンEの仲間のδ-トコフェロールは11mg、細胞内の浸透圧を保ち正常な血圧の維持に関わるとされるカリウムは1300mg、必須アミノ酸のフェニルアラニンは1200mgと、これらも3品の中ではあずきがいちばん多い値でした。有機酸・ビタミン・ミネラル・アミノ酸という異なる4つの側面でそれぞれ一番を持っている——それが、あずきの持ち場の広さです。

目安量は小さじ1で4.1g、大さじ1で12.3g、½カップ(100mL)で82.3gです。あずきは「日本書紀」にも記される歴史ある食材で、赤い色が魔除けを願うものとされ、赤飯や餡子など祝い事・厄払いの食に用いられてきたと伝えられています。あんこや汁粉としてなじみ深い、赤い縁起物の甘味です。

べいなすの持ち場

べいなすは洋なすとも呼ばれ、へたが緑色、果皮が紫紺色の大型だ円形のなすです。煮る、焼く、揚げるといった調理に向いているとされ、漬物には向かないとされています。果実生100gあたりはエネルギー20kcal、たんぱく質1.1gと低エネルギーで、有機酸としてはリンゴ酸0.2g(推定値)が含まれています。購入形態での目安量は1個が約250gですが、これはへたと果皮を含んだ重量なので、可食部100gあたりの栄養値とは基準が異なる点には注意が必要です。彩り豊かな紫紺色は、行事の食卓に落ち着いた彩りを添えます。

三品がそろう食卓

お盆の献立にそうめんべいなすあずきが並ぶとき、涼やかな麺、煮る・焼く・揚げるで楽しめる紫紺色の野菜、有機酸やカリウムなど複数の顔を持つ赤い縁起物の甘味という三者三様の役割が、データの上でも裏づけられます。暑い盛りに涼を呼ぶ一皿と、彩りの野菜と、赤い縁起物の甘味を、それぞれの持ち場のまま食卓に揃えてみるのもよさそうです。日本人の食事摂取基準を参考に、この時期ならではの組み合わせを楽しんでみてください。

※特定の食品の効果を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。栄養素のはたらきについては文部科学省食品データベース(fooddb.mext.go.jp)・厚生労働省食事摂取基準等の公的資料を参照しています。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準厚生労働省 e-ヘルスネット食品安全委員会厚生労働省 食事摂取基準(モリブデン)