著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:AppliedChem

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

捨てられがちな葉柄にも目を向ける

タイオバ(学名 Xanthosoma sagittifolium)は、ブラジルで昔から料理に使われてきたサトイモ科の植物です。研究チームは、食べられるのに広く利用されていない「非在来型食用植物」の一つとしてタイオバに注目しました。食べられるのは主に葉の平らな部分である葉身で、葉身と茎をつなぐ柄の部分である葉柄は捨てられることが多いといいます。

植物の器官ごとに成分の分布は異なります。光合成を担う葉と、植物体を支え、水や養分を運ぶ葉柄とでは、成分が違っていても不思議ではありません。しかし先行研究は主に葉を扱っており、両者を同時に比べた体系的な調査は不足していました。そこで研究チームは、ブラジル南東部の一つの栽培地で育てられたタイオバについて、葉身と葉柄の栄養成分、ミネラル、脂質の質、抗酸化に関わる性質、シュウ酸の量、急性毒性の簡易評価を並べて比較しました。

何をどのように調べたか

試料は、ミナスジェライス州の農業研究機関が管理する栽培圃場から、2024年の3月、4月、5月の3回に分けて採取されました。同じ株から葉身と葉柄を採り、3回分をそれぞれ部位ごとに混ぜ合わせて、葉身と葉柄の混合試料を1つずつ作りました。各分析は同じ混合試料で3回繰り返しましたが、これは測定の精度を確かめるためのもので、別々の株の違いを調べたものではありません。そのため著者らは統計的な検定は行わず、平均値や比率による記述的な比較にとどめています。

調べた項目は、水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、炭水化物といった基本成分、カルシウムやカリウムなどのミネラル、脂肪酸の種類と量、ポリフェノール類の目安となる値、複数の方法による抗酸化能でした。脂肪酸の組成からは、脂質の質を評価する指標として、動脈硬化指数と血栓形成指数も計算しました。さらに、えぐみの原因となり、ミネラルの吸収を妨げることもあるシュウ酸の量を測りました。毒性については、塩水に住む小さな甲殻類アルテミアの幼生を水抽出液にさらし、死亡率を調べる簡易試験を行いました。

葉身と葉柄で異なる成分の特徴

乾燥重量あたりで比べると、葉身のたんぱく質は100gあたり約34.8gで、葉柄の約8.1gの4倍以上でした。脂質も葉身のほうが多く、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など、分析したミネラルの多くも葉身で多くなっていました。たとえばカルシウムは、葉身が100gあたり約1505mg、葉柄が約767mgでした。ポリフェノール類の目安となる値や、FRAP法と呼ばれる方法で測った抗酸化能も、葉身のほうが高い結果でした。

一方、葉柄は水分が約94%と葉身の約86%より多く、炭水化物(乾燥重量100gあたり約30.8g)やカリウム(同約7631mg)が葉身を大きく上回りました。食物繊維はどちらの部位も乾燥重量100gあたり約43gと多く、ほぼ同じ値でした。ただし生の状態では水分量の違いが効いてきます。著者らの試算では、生100gあたりの食物繊維は葉身で約6.1g、葉柄で約2.6gになります。

脂肪酸では、どちらの部位も多価不飽和脂肪酸が主体でした。葉身はα-リノレン酸やリノール酸などを多く含んでいました。動脈硬化指数と血栓形成指数は、どちらの部位でも低い値でした。シュウ酸は両部位に含まれており、葉身は葉柄のほぼ2倍の濃度でした。アルテミアを使った試験では、どちらの部位の水抽出液でも急性の致死作用は検出されませんでした。

研究が示すこと

著者らは、葉身と葉柄が互いに異なり、補い合う栄養の特徴を持つと結論づけています。そのうえで、捨てられがちな葉柄も含めて丸ごと利用することは、食の多様化と食品ロスの削減につながる可能性があるとしています。ただし、シュウ酸による懸念を和らげるには、適切な加熱処理が前提になると述べています。なお、この結果は一つの栽培地から得た混合試料の分析にもとづくもので、毒性の評価も小さな甲殻類を使った初期的な確認にとどまります。

原著論文の著者・所属:Daniela Gomes de Moura(Department of Food Science, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Ailton Junior Antunes da Costa(Faculty of Veterinary, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Dhionne Correia Gomes(Department of Food Science, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Samuel Beiral Alves Pessoa(Department of Pharmaceutical Products, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Rachel Oliveira Castilho(Department of Pharmaceutical Products, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Renata Adriana Labanca(Department of Food Science, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)、Marinalva Woods Pedrosa(Agricultural Research Company of Minas Gerais, Prudente de Morais 35701-970, Brazil)、Julio Onesio-Ferreira Melo(Department of Exact and Biological Sciences, Federal University of São João del-Rei, Sete Lagoas 35702-031, Brazil)、Raquel Linhares Bello de Araújo(Department of Food Science, Faculty of Pharmacy, Federal University of Minas Gerais, Belo Horizonte 31270-901, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daniela Gomes de Moura, Ailton Junior Antunes da Costa, Dhionne Correia Gomes, et al. Nutritional Assessment, Lipid Profile, Antioxidant Capacity, and Preliminary Toxicity Assessment of the Leaf Blade and Petiole of Xanthosoma sagittifolium (Taioba) from a Cultivar in Southeastern Brazil. AppliedChem 2026-10-28. DOI: 10.3390/appliedchem6040078. 原著ライセンス:CC BY.