著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Journal of Human Growth and Development
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
思春期の食習慣は、本人の好みだけでなく、食べ物を手に入れて食べる場所の影響も受けます。生徒が一日の多くを過ごす学校は、その代表的な場所です。ブラジルでは、公立学校の給食を定める全国学校給食プログラム(PNAE)が、健康的な食事を受け取る権利を支える仕組みとされています。一方で、10代の多くが超加工食品をふだんから口にしていることも、これまでの調査で報告されています。
著者らは、学校に給食があるか、売店があるか、菜園があるかといった物理的な「食環境」が、生徒の食事のとり方とどう関係しているかを調べました。全国規模の学校保健調査のデータを用いて、ブラジルの中高生の食事パターンと学校の食環境との関連を評価しています。
何をどのように調べたか
研究チームは、ブラジル地理統計院(IBGE)と保健省・教育省が実施した2019年の全国学校保健調査(PeNSE)のデータを分析しました。対象は、日本の中学1年生にあたる学年から高校3年生までの生徒15万9,245人です。公立校と私立校、都市部と農村部の学校が含まれています。この研究は、ある一時点の状況を調べる横断研究です。
食事については、調査前の7日間に豆、野菜、果物、甘い菓子、清涼飲料、超加工食品(ピザ、ホットドッグ、ハンバーガーなどのファストフード類)をどれくらいの頻度で食べたかという質問を使いました。著者らは、一緒に食べられやすい食品の組み合わせを統計的にまとめる手法(主成分分析)を用い、生徒の食べ方を二つのパターンに整理しました。豆・野菜・果物からなる「健康的なパターン」と、甘い菓子・清涼飲料・超加工食品からなる「不健康なパターン」です。各生徒が各パターンにどの程度当てはまるかを点数化し、最も低い4分の1の生徒と、それ以外の生徒とに分けて比べました。
学校の食環境としては、学校調査票の回答から次の項目を取り上げました。校内の売店の有無、学校から100メートル以内の路上販売などの有無、給食の提供の有無、校内での超加工食品の広告の有無、学校菜園の有無です。関連の強さは「有病率比」で示しました。これは、ある条件がある生徒で、その食事パターンが当てはまる割合が何倍になるかを表す値で、1より大きければその条件のある生徒の方が当てはまりやすいことを意味します。分析では、性別、年齢、人種・肌の色、公立か私立か、地域、母親の教育年数、家庭の所有物などの社会経済的な違いを考慮しました。
主な結果
社会経済的な要因を調整したうえで、学校が給食を提供していることは、健康的なパターンへの当てはまりやすさと関連していました(有病率比1.016、95%信頼区間1.006〜1.025)。学校菜園があることも、健康的なパターンと関連していました(有病率比1.012、95%信頼区間1.004〜1.020)。
反対に、校内に売店があること(有病率比1.026、95%信頼区間1.015〜1.038)と、校内に超加工食品の広告があること(有病率比1.012、95%信頼区間1.003〜1.020)は、不健康なパターンへの当てはまりやすさと関連していました。学校周辺の路上販売などについては、どちらのパターンとも統計的に意味のある関連は見られませんでした。
著者らは、当てはまりが最も高い4分の1の生徒と最も低い4分の1の生徒を比べる追加の分析も行いました。その結果、主な関連は維持され、給食・菜園と健康的なパターンとの関連、売店・広告と不健康なパターンとの関連は、より大きくなったと報告しています。
この研究が示すこと
この研究は、同じ学校の中に、健康的な食べ方と結びつく要素と、そうでない食べ方と結びつく要素が同時に存在しうることを示しました。給食や菜園は健康的な食事パターンと、売店や超加工食品の広告は不健康な食事パターンと関連していました。ただし、横断研究であるため、示されたのは関連であり、学校の環境が食事を変えたという因果関係までは確かめられていません。
著者らは、この結果が学校給食政策の強化や、学校の食環境に関する国の規制づくりを後押しする根拠になると述べています。食べ物の選択を個人の責任だけに帰すのではなく、生徒を取り巻く学校の環境全体から考える必要性を、全国規模のデータから示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Heloisi Gonçalves Santos Passos(Federal University of Espírito Santo)、Tamires Dos Santos Vieira(Escola Superior de Ciências da Santa Casa de Misericórdia de Vitória)、Viviane Fernandes Moreira(Federal University of Espírito Santo)、Aline Bergamini Effgen Sena(Federal University of Espírito Santo)、Ariadina Galdino dos Santos(Federal University of Espírito Santo)、Luíz Carlos de Abreu(Federal University of Espírito Santo)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Heloisi Gonçalves Santos Passos, Tamires Dos Santos Vieira, Viviane Fernandes Moreira, et al. School food environment and dietary patterns among brazilian adolescents: a cross-sectional study. Journal of Human Growth and Development 2026-09-10. DOI: 10.36311/jhgd.v36.19375. 原著ライセンス:CC BY.