著者の所属・活動拠点の国は、パキスタンです。

掲載誌:International Journal of Agriculture Innovations and Cutting-Edge Research (HEC Recognised)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

野菜の価値は収穫量だけでなく、含まれるミネラルや食物繊維、ビタミンCなどの栄養成分にも左右されます。研究チームは、パキスタンなどで広く栽培される冬野菜のホウレンソウとタマネギを対象に、肥料の組み合わせと「有用微生物群(EM)」の併用が、収穫物の栄養成分をどう変えるかを調べました。

EMは、光合成細菌、乳酸菌、酵母を混合培養した液体の微生物資材です。有機物の分解を促し、養分を作物が吸収しやすくするとされていますが、効果が見られたという報告とほとんど見られなかったという報告があり、評価は一定していません。著者らは、EMの効果は肥料の種類や施用量によって変わるという仮説を立て、EMを併用した場合としない場合で肥料の組み合わせを比較しました。

どのように調べたか

実験は、パキスタン北西部の半乾燥地にあるゴマル大学で、2009〜10年と2010〜11年の2シーズンにわたって行われました。畑ではなく、同じ川底由来の土壌を詰めた鉢で作物を育てる「ポット試験」を5種類実施しています。

有機肥料には、牛ふんなどを主体とする厩肥(きゅうひ)、製糖工場の副産物であるプレスマッド、作物残さから作った堆肥、鶏ふんの4種類を用いました。化学肥料には窒素・リン・カリウムを含むNPK肥料を使っています。1つ目の試験では有機肥料またはNPK肥料を単独で与え、残る4つの試験では、有機肥料とNPK肥料をそれぞれ推奨量の100%または50%で組み合わせました。有機肥料はEMを染み込ませたものと、染み込ませないものを用意しました。比較の基準として、肥料もEMも与えない区も設けています。

収穫したホウレンソウの葉とタマネギの鱗茎(食べる部分)について、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの主要なミネラル、亜鉛、鉄、銅、マンガン、クロム、ニッケルといった微量元素、食物繊維、ビタミンC、粗タンパク質を測定しました。粗タンパク質は、測定した窒素の総量に一定の係数を掛けて求めた推定値です。窒素がすべてタンパク質に由来すると仮定して計算するため、実際のタンパク質量より多めに出る可能性があると著者らは説明しています。

主な結果

肥料の種類によって、両作物のミネラル組成や栄養成分にはっきりした違いが出ました。全体として、肥料を与えない区で値が最も低く、プレスマッドを使った区で最も高くなる傾向が見られました。厩肥、堆肥、鶏ふんでも改善は見られましたが、その幅はプレスマッドより小さいものでした。

EMを併用すると、多くの組み合わせでこれらの値がさらに高まる傾向がありました。ただし、その上乗せの大きさは試験や成分、作物によってばらつきました。統計解析の詳しい数値が論文に示されていないこともあり、著者らはEMの効果を、正式に証明されたものではなく「傾向」として慎重に位置づけています。

具体例として、2010〜11年のホウレンソウの1つ目の試験では、EMを併用したプレスマッド区で、肥料を与えない区と比べて窒素が最大70%、リンが29%、カリウムが23%増え、食物繊維は71%、ビタミンCは65%、粗タンパク質は60%増えました。タマネギでは増加率がさらに大きく、粗タンパク質はおよそ11倍になりました。著者らは、これは肥料を与えない区のタマネギの値がもともと非常に低かったためだと説明しています。

一方、著者らは、増えた成分がすべて望ましいわけではないと指摘しています。ナトリウム、クロム、ニッケルの増加は栄養上の利点とはいえず、食品安全の観点から評価が必要だとしました。タマネギのクロムとニッケルは、水分を除いた乾燥重量で比べても、野菜についてよく引用されるFAO/WHOの指針値(クロム2.3、ニッケル5.0 mg/kg)を大きく下回っていました。ナトリウムについては、水分を含む生の重量や1回に食べる量にもとづいて意味を評価する必要があると述べています。

研究が示すこと

この研究は、プレスマッドをNPK肥料やEMと組み合わせる方法が、ホウレンソウとタマネギの栄養成分を高める手段として、さらに検討する価値があることを示しました。

同時に、著者らは結果の範囲をはっきり限定しています。実験は1か所の1種類の土壌を使ったポット試験です。収量、微生物の働き、土壌の性質、経済性は調べていません。また、EMの微生物そのものの効果と、それを染み込ませた有機物や養分の効果を切り分ける設計にもなっていません。このためこのデータだけでは、EMと肥料の相乗効果も、肥料の使用量を減らせることも確かめられていないと著者らは結論づけています。肥料の組み合わせによって野菜の栄養成分が変わりうることを示しつつ、その解釈には慎重さが必要であることも伝える研究です。

原著論文の著者・所属:Salma Shaheen(Assistant Professor, Department of Soil Science, Faculty of Agriculture, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)、Abida Saleem(Assistant Professor, Department of Soil Science, Faculty of Agriculture, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)、Tooba Khan(BSc (Hons.) student, Department of Soil Science, Faculty of Agriculture, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)、Rafia Younis(Assistant Professor, Department of Environmental Sciences, Faculty of Agriculture, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)、Asma Batool(Assistant Professor, Department of Entomology, Faculty of Agriculture, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)、Nasr Ullah Khan(Associate Professor, Gomal Centre of Biochemistry and Biotechnology, Gomal University, Dera Ismail Khan, Khyber Pakhtunkhwa, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Salma Shaheen, Abida Saleem, Tooba Khan, Rafia Younis, Asma Batool, Nasr Ullah Khan Effects of Effective Microorganisms Combined With Organic and Inorganic Fertilizers on the Mineral Composition and Biochemical Quality of Onion (Allium cepa L.) and Spinach (Spinacia oleracea L.). International Journal of Agriculture Innovations and Cutting-Edge Research (HEC Recognised) 2026-10-24. DOI: 10.67244/jai.bwo-researches.v4i4.a272. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。