著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Processes

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

忙しい生活のなかで、温めるだけ、あるいは少しの手間で食べられる調理済み食品の需要が高まっています。こうした食品は「家庭食代替(HMR)」と呼ばれ、手軽さに加えて栄養や味の質を保つことが求められます。魚介類はたんぱく質や脂肪酸、ビタミン、ミネラルを含むため、HMRの素材として有望だと考えられています。

研究チームが注目したのは、韓国や日本で広く食べられているマアナゴです。マアナゴは栄養面で価値がある一方、脂質が比較的多く傷みやすいという課題があります。焼き加工は香りや色を引き出しますが、高温で成分が変化する可能性もあります。また、生のマアナゴの保存中の品質変化については研究がありますが、味付けして焼いたマアナゴを長期間冷凍保存した場合の品質については情報が限られていました。そこで著者らは、HMR向けの味付け焼きアナゴを開発し、その栄養特性、安全性、冷凍保存中の品質の安定性を総合的に調べました。

製品の作り方と調べた内容

製品は、アナゴの切り身を醤油、砂糖、水、みりんからなるたれで約100℃で煮た後、たれを塗り重ねながらオーブンで焼き、冷却・冷凍・真空包装する工程で作られました。焼き条件は、温度と時間を変えた試作品を訓練を受けたパネルが試食した総合的な好ましさを基に、応答曲面法と呼ばれる統計的手法で最適化されました。モデルが予測した最適条件は201.4℃・10.5分でしたが、工業的な扱いやすさを考慮して200℃・10分が最終条件として選ばれました。分析では、焼き温度の影響が焼き時間よりも大きいことが示されました。

続いて、生の切り身と完成品について、エネルギーやたんぱく質、脂質、ミネラルなどの栄養成分、アミノ酸、遊離アミノ酸、脂肪酸の組成を比較しました。値はいずれも水分を含む状態の100gあたりで示されています。安全性については、原料である生の切り身で重金属(ヒ素、カドミウム、水銀、鉛)と放射性物質(ヨウ素131、セシウム134、セシウム137)を調べました。

さらに、完成品を−23℃、−18℃、−13℃の3つの温度で180日間保存し、30日ごとに品質を測定しました。指標には、脂質の酸化の程度を示すTBARS、鮮度低下に伴って増える揮発性の窒素化合物量を示すTVBN、一般的な細菌の数を示す一般生菌数、大腸菌群、pH、そして見た目・におい・味・食感・総合的な好ましさの官能評価が用いられました。

主な結果

完成品の100gあたりのたんぱく質は17.7gで、生の切り身の16.7gより多く報告されました。脂質は7.4g(生は2.4g)、エネルギーは156.6kcal(生は88.4kcal)、ナトリウムは220.5mg(生は88.5mg)と、完成品のほうが高い値でした。一方、カリウムは完成品のほうが低く、鉄とビタミンDには統計的に有意な差がありませんでした。アミノ酸では、グルタミン酸(2670.0mg)、リシン(1700.0mg)、アスパラギン酸(1656.6mg)が多く含まれていました。これに対し、たんぱく質に組み込まれていない遊離アミノ酸の多くは、完成品のほうが少ない結果でした。

脂肪酸では、完成品100gあたり一価不飽和脂肪酸が2663.7mg、飽和脂肪酸が1584.1mg、多価不飽和脂肪酸が1553.9mgでした。多価不飽和脂肪酸のなかではDHAが最も多く929.1mg、EPAは284.2mgと報告されています。安全性の検査では、生の切り身から重金属も放射性物質も検出されませんでした。

180日間の冷凍保存では、TBARS、一般生菌数、TVBNがいずれも少しずつ増えましたが、著者らは許容範囲内にとどまったと報告しています。最終的な値は、TBARSが1kgあたり0.41mg、一般生菌数が1gあたり1.92〜2.11(対数値)、TVBNが100gあたり7.58〜7.82mgでした。官能評価の点数は保存とともにおおむね低下し、特に−13℃では味と食感の低下が目立ちました。180日目の総合的な好ましさは−13℃で7.34、−18℃で7.47であり、全体として−23℃で保存したものが品質と官能特性を最もよく保っていました。これらのデータをもとにした数理モデルによる推定では、−18℃での賞味可能な期間は25か月とされました。

研究が示すこと

この研究は、マアナゴを味付けして焼き、冷凍保存する製品について、加工条件の決め方から栄養成分、原料の安全性、保存中の品質変化までを一つの流れとして示しました。著者らは、この味付け焼きアナゴがHMRで用いる魚介類の素材として利用できる可能性を支持する結果だとまとめています。また、同じ冷凍保存でも、より低い温度で保存したほうが品質が保たれやすい傾向が示された点も、この研究の重要な報告の一つです。

原著論文の著者・所属:Maya Malikhaturohmah(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)、Seok Jeong Lee(Woojin Moolsan Co., Ltd., Tongyeong 53000, Republic of Korea)、Hye-Ryeon An(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)、Dong Myeong Kang(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)、Antony Rinthiya Mariadavid(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)、Jae Hak Sohn(Department of Food Science and Culinary Arts, College of Health and Welfare, Silla University, Busan 46958, Republic of Korea; Seafood Research Center, Industry-Academic Cooperation Foundation, Silla University, Busan 49277, Republic of Korea)、Khawaja Muhammad Imran Bashir(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)、Jae-Suk Choi(Department of Seafood Science and Technology, The Institute of Marine Industry, Gyeongsang National University, Tongyeong 53064, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maya Malikhaturohmah, Seok Jeong Lee, Hye-Ryeon An, et al. Development and Quality Characterization of Seasoned Grilled Conger Eel (Conger myriaster) Fillets for Home Meal Replacement Applications. Processes 2026-10-29. DOI: 10.3390/pr14213463. 原著ライセンス:CC BY.