掲載誌:International Journal of Science and Technology (IJST)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:果物加工の副産物をお菓子に生かす
ぶどうは世界で広く栽培され、干してレーズンにしたり、果汁やワインに加工されたりします。果汁を搾ったあとには「搾りかす(ポマス)」と呼ばれる皮や種などの残りが出ます。著者らは、搾りかすには食物繊維やフラボノイドなどのポリフェノール類(植物由来の成分で、抗酸化作用を持つものが多い)が含まれ、廃棄物の有効利用という点でも関心が高まっていると説明しています。
一方、ブラウニーは世界中で親しまれている焼き菓子ですが、炭水化物や脂質が多く、食物繊維などは少ない食品です。そこで研究チームは、黒ぶどうレーズンから作った搾りかす粉末を小麦粉の一部の代わりに使い、栄養面や抗酸化性を高めたブラウニーを作れるか、また味や見た目の評価が損なわれないかを調べました。
何をどのように調べたか
研究チームは、市販の黒ぶどうレーズンを水に浸してからミキサーでペーストにし、布でこして液体を分けました。残った搾りかすを50〜55℃で乾燥させ、粉にして使いました。
ブラウニーは、精製小麦粉だけを使った対照品と、小麦粉の5%、10%、15%をこの粉末に置き換えた3種類の計4種類を、ほかの材料は同じにして焼きました。評価は、ある程度訓練を受けたパネル(評価者)による9段階の官能評価(見た目、香り、味、口当たりなどの好ましさ)のほか、水分・灰分・脂質・たんぱく質・食物繊維などの成分分析、pHと糖度(可溶性固形分)の測定、試験管内での抗酸化活性(DPPHという試薬を使った方法)と総フラボノイド量の測定、一般生菌数の測定です。各試験は3回ずつ行い、統計的に比較されました。
主な結果
官能評価では、どの試作品も受け入れられる評点だったと報告されています。なかでも粉末15%のブラウニーが、見た目(9点満点で8.20)、味(8.67)、香り(8.37)、口当たり(8.67)で最も高く、対照品が最も低い評点でした。著者らは、果実の風味や色が加わったことなどがその理由として考えられるとしています。
成分分析では、対照品と15%品を比べると、食物繊維が2.00%から11.64%へと大きく増えました。水分と灰分(ミネラルの目安)はわずかに増え、脂質、たんぱく質、エネルギーはわずかに減り、炭水化物には有意な差は見られませんでした。
抗酸化活性は、アスコルビン酸に換算した値で1gあたり35.86mgから45.37mgへ、総フラボノイド量はケルセチン換算で100gあたり23.80mgから64.60mgへ増えたと報告されています。また、pHは6.8から5.9に下がり、糖度は10.2から12.4°Brixに上がりました。一般生菌数は対照品の1gあたり3.56×10⁴個に対し、15%品では1.23×10⁴個と少なくなりました。著者らは、ぶどうの搾りかすに含まれる有機酸やフェノール化合物がこうした変化に関わっている可能性を挙げています。
研究が示すこと
この研究で、著者らは小麦粉の15%を黒ぶどうレーズンの搾りかす粉末に置き換えたブラウニーを最適な配合と位置づけ、官能評価を落とさずに食物繊維や抗酸化活性、フラボノイド量を高められたと結論づけています。ふだん捨てられがちな果物加工の残りを、焼き菓子の材料として価値ある形で生かせる可能性を示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Anjali Anjali、Prof. Neetu Singh、Dr. Madhvi Daniel、Puja Kumari
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anjali Anjali, Prof. Neetu Singh, Dr. Madhvi Daniel, et al. Formulation and Quality Assessment of Brownie Enriched with Black Grapes Raisin Pomace Powder. International Journal of Science and Technology (IJST) 2026-08-01. DOI: 10.70558/ijst.2026.v3.i3.241318. 原著ライセンス:CC BY.