今年の「処暑」は8月23日です。二十四節気のひとつで、太陽黄経150度にあたる日とされ、暑さが収まるころとされています。日付は年によって動きます。とはいえ実際の暑さの引き方には地域差があり、まだまだ蒸し暑さの残る土地も少なくありません。それでも店先を見渡すと、夏野菜に混じって秋の気配を帯びた食材がぽつぽつと並び始める時期です。

この時期の食卓を彩る顔ぶれは多彩です。粒の詰まったとうもろこし、さやごと茹でて摘まむえだまめ、煮物にほっとする日本かぼちゃに、小腹を満たす干しぶどうが並びます。そこに、秋の入り口を告げる魚としてさんまが加わります。

脂の乗りは成分表にも表れる

さんまの可食部100gあたりのエネルギーは287kcalです。たんぱく質は18.1gで、日本人の食事摂取基準にある女性30〜49歳の推奨量50g/日の36%にあたります。脂質は25.6gと、たんぱく質を上回る量を占めています。この脂質の中身を見ると、DHA(ドコサヘキサエン酸)が2200mg、EPA(イコサペンタエン酸)が1500mgと、いずれも今回並べた食材の中で最も多く含まれています。

かたくちいわしもDHA770mg・EPA1100mgと決して少なくありませんが、「さんま」の値はそれをさらに上回ります。脂が乗るというのは感覚的な言い方ですが、この脂質の多さは成分表の数字にもはっきり表れています。さんまは漁期や漁場、魚体の大きさによって脂溶性の成分に差が出やすい魚とされ、秋に脂がのるといわれるのも、この魚らしい持ち味です。

もうひとつ目を引くのがビタミンB12ビタミンDです。可食部100gあたりでビタミンB12は16µg、ビタミンDは16µgと、これも今回の食材の中で最も多い値です。ビタミンB12は女性30〜49歳の目安量が4µg/日ですから、100gあたりでその4倍にあたる量が含まれている計算になります。アミノ酸や核酸の代謝に関わり、赤血球(ヘモグロビン)の形成を助けるとされる栄養素です。

ビタミンDは目安量9µg/日に対して16µgと、こちらも上回る値です。カルシウムの吸収を促し、骨の形成に関わるとされていますが、女性30〜49歳の耐容上限量は100µg/日と定められています。日常の食事でとる分には心配のない量ですが、サプリメントなどでの重ねとりには注意が必要です。一尾はおよそ150gが目安で、皮つきのまま塩焼きにするのが定番の食べ方とされています。

野菜と乾物にもそれぞれの役割

とうもろこしはβ-クリプトキサンチンが可食部100gあたり54µgと、今回の中で最も多く含まれています。黄色やオレンジ色の色素成分で、体内でビタミンAに変わるとされ、とうもろこしに豊富な成分としても知られています。甘みの主体はしょ糖で3.3gと、ぶどう糖2.4g、果糖2.2gを上回ります。1本はおよそ300gが目安です。

えだまめは葉酸が可食部100gあたり320µgと際立ち、女性30〜49歳の推奨量240µg/日の133%にあたります。核酸の生合成に関わり、赤血球の形成や胎児の発育に関わるとされる栄養素です。さやつき10さやでおよそ30gが目安です。日本かぼちゃはα-カロテンが可食部100gあたり49µgで、こちらも体内でビタミンAに変わるとされる色素成分です。煮物1人分はおよそ150gが目安です。

干しぶどうは炭水化物が可食部100gあたり80.3gと突出しており、甘みの主体は果糖31.7g(推定値)で、ぶどう糖28.6g(推定値)を上回ります。小さな粒に糖がぎゅっと詰まった食材なので、20粒でおよそ10gという少量でも十分な甘みが得られます。なお、ここまでに挙げた1本・10さや・1人分の重量は、皮やさや、わたや種を含む購入時のものです。一度にたくさん食べるものではなく、季節の食卓に「ひとつまみ」添えるくらいが、ちょうど良いのかもしれません。

ひと皿の中で役割が分かれる

こうして数字を並べてみると、処暑の食卓は一つの主役だけで成り立っているわけではないと分かります。「さんま」が脂の乗りとビタミン類で存在感を放つ一方、「とうもろこし」や「かぼちゃ」は彩りの色素を、えだまめは葉酸を、干しぶどうは甘みを、それぞれの持ち場で支えています。旬の魚を主役に据え、野菜や乾物を脇に添える。処暑の食卓では、その組み合わせのなかで栄養の持ち場が自然に分かれています。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。栄養素のはたらきに関する記述のうち、ビタミンD・α-カロテン・β-クリプトキサンチンは厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」脂溶性ビタミン編を、葉酸・ビタミンB12は同水溶性ビタミン編を参考にしています。