暦の上で秋が始まる立秋を迎えても、実際の暑さはまだ続きます。この時期は残暑を乗り切るため、冷たい麦茶や涼を呼ぶ果物、そして冷えたビールに手が伸びる人も多いのではないでしょうか。食卓にはえだまめやすいか、とうもろこしといった夏の恵みが並び、なかでも枝豆とビールの組み合わせは、居酒屋でも家庭でも定番の光景です。その枝豆が、ある微量ミネラルで際立った数字を持っていることは、あまり知られていません。
枝豆は100gあたりたんぱく質11.7g、食物繊維5.0gを含む栄養価の高い豆ですが、なかでも際立つのがモリブデンという微量ミネラルの含有量です。その量は100gあたり240µgで、成人女性(30〜49歳)の推奨量25µg/日の960%に相当します。ただしこれは100gあたりの値であり、さやつき10さや(可食部約30g)ほどの一食量であれば摂取量は約72µgです。モリブデンの耐容上限量は成人女性で500µg/日と定められており、通常の食事で摂る量であれば大きく下回る範囲です。
モリブデンは、プリン体の代謝や亜硫酸の無毒化に関わる酵素の材料となる必須微量ミネラルです。なかでもキサンチンオキシダーゼという酵素の補酵素として働き、尿酸の産生に関与するとされています。これは栄養素一般のはたらきの話で、枝豆を食べるとどうなる、という意味ではありません。
枝豆の見どころはモリブデンだけではありません。葉酸も100gあたり320µgと、成人(30〜49歳)の推奨量240µg/日の133%に達しており、赤血球の形成などに関わる栄養素として知られています。さらにビタミンEの一種であるδ-トコフェロールも100gあたり2.5mgと、すいかの0mg、とうもろこしの微量と比べて際立って多く含まれています。ビタミンEは脂質の酸化を防ぎ、細胞の膜を守る働きに関わるとされる栄養素です。小さな一粒に、これだけの働きが詰まっていると思うと、ビールの合間につまむ手にも少し違った気持ちが加わりそうです。
立秋の食卓を彩るのは枝豆だけではありません。すいかは100gあたりわずか41kcalと軽やかな果実で、みずみずしい食べ応えが暑さで火照った体に涼を届けてくれる存在です。一方のとうもろこしは、100gあたり89kcalとやや食べ応えがあり、甘みの主体はぶどう糖ではなく、糖類の中で最も多いしょ糖3.3gにあります。1本分というボリュームで、夏の食卓に満足感を添えてくれます。またとうもろこしにはβ-クリプトキサンチンという、体内でビタミンAに変わる成分も含まれており、彩り豊かな夏野菜としての顔もあわせ持っています。
こうして見ると、立秋の食卓に並ぶ枝豆・すいか・とうもろこしは、それぞれ違う役割を担いながら、暑い盛りの体をいたわる名脇役だとわかります。なかでも枝豆は、ふだん名前を意識することの少ないモリブデンで際立っていました。次にこの一皿をつまむとき、小さな一粒の中身を思い出してみてください。詳しい栄養バランスの考え方は日本人の食事摂取基準も参考にしてみてください。
※本記事で紹介した栄養素の働きは一般的な知識に基づくものであり、特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・文部科学省 食品成分データベース・e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)