「野菜は茹でると栄養が流れる」とよく言われる。だがオクラとうがんえだまめの3つを生とゆでで見比べると、この印象は少し違って見えてくる。エネルギーや主要な成分はほとんど動かず、それどころか一部のミネラルはゆでたほうが数値が高い。何が流れて、何が残るのか。実測値で追ってみる。

生とゆで、エネルギーはほぼ横ばい

まずオクラは生100gあたり26kcalに対しゆでたオクラは25kcal。たんぱく質は2.1gで変わらず、脂質は0.2gから0.1gへわずかに減る程度だ。とうがんはもともと生100gあたり15kcal・水分95.2gと、水分が多く淡白な夏野菜で、たんぱく質0.5g・食物繊維1.3gと成分自体が少ない。えだまめも生125kcalに対しゆでたえだまめは118kcal、たんぱく質は11.7gから11.5gとこちらもほぼ横ばいだ。カロリーやたんぱく質・脂質という主要成分だけを見れば、生でもゆでても大差はない。

動いているのはミネラルだった

ところが、ミネラルに目を移すと様子が変わる。オクラは、ミネラルの一種であるモリブデンが生6µgからゆで8µgと約1.3倍に増えている。えだまめはゆでるとナトリウムが生1mgから2mgへ約2.0倍、カルシウムが58mgから76mgへ約1.3倍に増える。いずれも「ゆでて100gあたりの数値が上がった」実例で、加熱で栄養が失われるどころか、100gあたりで見ると濃くなっている成分があるということだ。これは水分の出入りと成分の再分配の結果として起きている変化であり、ゆでたからすべての栄養が逃げるという単純な図式ではない。なお、えだまめのナトリウムはゆで湯に加える塩の影響も考えられるため、この数値をそのまま「無塩でも高ナトリウム」と読むのは早計だ。食塩相当量の目標量(成人30〜49歳)は男性7.5g未満・女性6.5g未満と照らしても、えだまめ1食分(さやつき10さや=30g)程度の量であれば心配する水準ではない。

オクラにはこのほか、水溶性食物繊維が生1.4gからゆで1.6gとこちらも増えている。水溶性食物繊維は糖の吸収をゆるやかにしたり、コレステロールの吸収を抑えたりする働きが一般的に知られており、オクラ特有のねばねばはこの水溶性食物繊維によるところが大きく、刻むほど粘りが出やすい。ただしオクラの保存では「へたを切らずに保存すると水溶性の栄養が流れにくい」とされ、切り方や下処理次第で溶け出す量は変わりうる。えだまめの葉酸は生320µgからゆで260µgへと数値が下がっており、こちらは加熱で流れやすい成分の代表例と言える。葉酸の推奨量(成人30〜49歳)は男女ともに240µg。赤血球の形成や胎児の発育に関わる成分とされており、食卓全体で組み合わせながら意識して摂りたい栄養素だ。

※水溶性食物繊維の働きは栄養素としての一般的な知識であり、特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

毎日の食卓への取り入れ方

結論から言えば、この3食材は生かゆでかを栄養の損得だけで選ぶ必要はない。オクラは刻んで生のまま和え物にしても、さっとゆでて食感を変えても、たんぱく質や脂質の数値はほとんど動かない。とうがんはもともと水分が多く淡白な味なので、出汁を含ませる煮物やスープに向き、加熱してもエネルギーやたんぱく質はごくわずかなまま夏らしい一品になる。えだまめはさやつき10さや=30gが手軽な一食の目安で、塩ゆでにしても主要な栄養価は大きく変わらない。むしろ選ぶ基準にすべきは、とろみを楽しみたいか歯ざわりを楽しみたいか、煮物向けの淡白な味を活かしたいかといった、調理の目的や食感の好みのほうだ。

まとめ

「茹でると栄養が流れる」という見方は、水溶性食物繊維や葉酸など一部の成分には当てはまるが、すべての栄養素に共通する話ではない。今回見た夏野菜では、オクラのモリブデン・えだまめのナトリウムとカルシウムが、ゆでることでむしろ100gあたりの数値を上げていた。生かゆでかは「栄養が逃げるかどうか」で決めるより、食べたい食感や作りたい料理に合わせて選んでよい。今度これらの野菜を茹でるとき、流れていくものだけでなく、そこに残り濃くなっていくものにも目を向けてみると、成分表の見え方が少し変わってくるはずだ。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)