発酵食品といえば「菌のおかげで健康によい」というイメージが先に立つ。だが実際に成分表の数値を並べてみると、注目すべきは乳酸菌そのものというより、菌が働いたあとに食品の中に残る副産物であることが見えてくる。納豆、みそ、キムチ、ヨーグルト、しろしょうゆ。同じ「発酵食品」という一つの箱に入れて語られがちなこれらの食品は、残す副産物がまるで違う。中身で選ぶための数値を見ていく。
納豆だけが際立つ三つの成分
糸引き納豆は、ビタミンK・パントテン酸・水溶性食物繊維の三つで、比較した発酵食品の中でも数値が際立つ。ビタミンKは100gあたり600µgで、比較した他の発酵食品(キムチ42µg、甘みそ8µg、ぬかみそ漬1µg、ヨーグルトTr µg、しろしょうゆ0µg)を大きく上回る。ビタミンKは血液を正常に固める働きを持ち、骨の形成にも関わる栄養素だ。ビタミンKの目安量(成人30〜49歳)は男女ともに150µg。1パック約40gなら240µgほどが摂れる計算になる。
パントテン酸も納豆が3.63mgで、ヨーグルト0.44mg、ぬかみそ漬0.43mg、しろしょうゆ0.28mg、キムチ0.24mgを引き離す。糖や脂肪酸の代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける成分とされる。パントテン酸の目安量(成人30〜49歳)は男性6mg・女性5mgとされている。さらに水溶性食物繊維も納豆が2.3gと、ぬかみそ漬0.7g、キムチ0.6g、甘みそ0.3gを上回る数値となっている。食物繊維の目標量(成人30〜49歳)は男性22g以上・女性18g以上とされており、納豆はその達成を助ける食品の一つとして位置づけられる。納豆一つでこれだけの顔ぶれが揃うのは、菌の働きそのものより、発酵の過程で豆の栄養が分解・凝縮された結果と考えると腑に落ちる。
では乳酸菌食品も同じ理屈か——ここで裏切られる
納豆の主役がビタミン類だったので、次はヨーグルトやしろしょうゆも似た成分で語れると思いきや、そうではない。この二つの主役は「有機酸」、なかでも乳酸だ。ヨーグルト(脱脂加糖)は乳酸0.7g・クエン酸0.2gを含み、クエン酸はここで比較した食品の中では最も多い。クエン酸はクエン酸回路に関与し、エネルギー産生に関わるとされる有機酸だ。ヨーグルトの甘みの主体は、含まれる糖の中で最も多いしょ糖6.5gで、乳糖3.6g・ガラクトース0.7g・ぶどう糖0.2gがこれに続く。しろしょうゆも乳酸0.7g(推定値)を含み、ヨーグルトと並ぶ。つまり同じ「発酵食品」でも、納豆が育てるのはビタミン類、乳酸菌系の食品が残すのは乳酸を中心とした有機酸というように、菌の種類によって残る副産物がまったく異なるのだ。
キムチ・みそは塩とナトリウムの顔も持つ
はくさいのキムチはクエン酸0.1gに加え、酢酸0.1gも含む有機酸の食品だが、忘れてはいけないのがナトリウムだ。100gあたり食塩相当量は2.9g。米みそ(甘みそ)は食塩相当量6.1g、しろしょうゆに至っては食塩相当量14.2gに達する。食塩相当量の目標量(成人30〜49歳)は男性7.5g未満・女性6.5g未満とされている。しろしょうゆは少量使いの調味料なので、100gの数値をそのまま摂る食品ではない点は押さえておきたい。ぬかみそ漬も食塩相当量3.8gと、漬物らしい塩の効かせ方をしている。
毎日の食卓での取り入れ方
ビタミンKやパントテン酸、水溶性食物繊維を意識するなら納豆1パック(約40g)を主菜の副菜に添えるのが手軽だ。有機酸のさっぱりした風味を食卓に加えたいときはヨーグルトを、香りと塩気のアクセントにはキムチやみそ、しろしょうゆを少量ずつ使い分けるとよい。同じ発酵食品でも一つの器に盛り込みすぎるとナトリウムが重なりやすいので、みそ汁にキムチや漬物を組み合わせる日は、量を控えめにする意識を持つとバランスが取りやすい。
まとめ
「発酵食品だから」とひとくくりにするのではなく、その食品が発酵の過程で何を残したかで選ぶと、食卓での使い分けが見えてくる。同じ発酵という工程から、これほど違う顔が生まれているのは面白い。次に見るときは、菌の名前ではなく、菌が残した副産物の欄に目を向けてみたい。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・食品安全委員会・e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)