発酵食品6品の食物繊維量を日本食品標準成分表(八訂)で並べると、最大10g超から推定ゼロまで開きます。菌を摂ることには意味があります。ただ、腸内の菌を育てるには「菌の餌」となる食物繊維が欠かせない——食物繊維は腸内細菌が発酵・分解できる基質であり、菌が活動するエネルギー源となる——その量が、発酵食品ごとにまったく違います。
6品の食物繊維量、その差を数字で見る
その序列は以下のとおりです(可食部100gあたり)。
テンペは3位以下のほぼ2倍以上、納豆も3位以下と約2倍近い差で他を引き離し、ヨーグルトの食物繊維はほぼゼロです。日本人の食事摂取基準(2025年版)が定める食物繊維の目標量は、成人(30〜49歳)で男性22g以上・女性18g以上であり、日常的に不足しがちな栄養素のひとつとされています。
テンペと納豆が強い理由——菌と繊維を同時に届ける
テンペはインドネシア発祥の大豆発酵食品で、大豆をテンペ菌(クモノスカビの一種)で発酵させたものです。食物繊維10.2gという数字は、豆の細胞壁がそのまま残っているためで、発酵によって菌も届きながら繊維もしっかり保たれています。1食分(約20g)に換算すると約2gの食物繊維を摂れる計算です。日本での知名度はまだ高くありませんが、スライスして焼くだけで食べられる手軽さがあります。
糸引き納豆は食物繊維9.5g(100gあたり)を含み、うち水溶性食物繊維が2.3g(1パック約40gでは約0.9g)です。水溶性食物繊維という成分一般については、水に溶けて粘性を上げる性質を持ち、食後の血糖値上昇の緩和や腸内でのコレステロール吸収への関与を示す研究知見があります。1パック(約40g)では食物繊維を約4g摂れます。菌と繊維の両方を一つの食品で補える点は、この二品に共通する強みといえます。ただし、菌が腸内で実際に定着・機能するかどうかは菌の種類や量、個人の腸内環境によって異なります。
みそ・キムチ・ぬかみそ漬けは「量の調整」がカギ
米みそは食物繊維4.9gと中程度の数値を持ちますが、食塩相当量が100gあたり12.4gと高いです。みそ汁1杯に使う大さじ1杯(約17g)では食物繊維は約0.8gほど。繊維の供給源としての貢献は限られ、塩分との兼ね合いで使用量に上限がある食品です。発酵食品で塩分が積み上がりすぎないよう、みその量は1日の食事全体の塩分バランスを見ながら調整することが大切です。
白菜キムチ(1人分・約30g)は食物繊維約0.7g、食塩相当量は100gあたり2.9gで1人分では約0.9g。ぬかみそ漬け(1人分・約30g)は食物繊維約0.5g、食塩相当量は100gあたり3.8gで1人分では約1.1g。どちらも少量でそれなりの塩分を含むため、一度にたくさん食べることは難しく、食物繊維の供給量としては小さな役割に留まります。菌を届けながら塩分を増やしすぎないための「副菜的な使い方」が現実的です。なお、キムチ・ぬかみそ漬けはいずれも非加熱で摂取する発酵食品です。妊婦や免疫機能が低下している方は、摂取にあたって医師・管理栄養士にご相談ください。
ヨーグルト(カップ1杯・約210g)は乳酸菌を含む発酵食品として定番ですが、食物繊維は推定ゼロです。菌そのものを届ける力はあっても、菌の餌を補う力はほぼ持ちません。それ自体に問題はありませんが、ヨーグルトだけで腸活を完結させようとするには、繊維の供給源を別途考える必要があります。なお、乳酸菌が腸内で実際に定着・機能するかどうかも菌の種類や量、個人の腸内環境によって異なる点は他の発酵食品と同様です。
明日からの選び方——繊維量で食卓を組む
実践的には、朝の納豆をパックごと食べる習慣で食物繊維を底上げし、夕食にテンペを1食分(約20g)加えるだけで、納豆1パック約4g+テンペ約2.0gで合計約5.8g(およそ6g)の食物繊維を発酵食品から補えます。みそ・キムチ・ぬかみそ漬けは風味と菌の多様性を加える役割として少量使いに徹し、塩分が積み上がりすぎないよう全体量を見ながら組み合わせるのが使いやすいです。
ただし、発酵食品はあくまで食物繊維の補助的な供給源のひとつです。野菜・海藻・豆類・全粒穀物など多様な食品から食物繊維を摂ることが基本であり、発酵食品の組み合わせだけで目標量を満たそうとする必要はありません。また、納豆・テンペはともに大豆食品のため、これらを一日の中で重ねて摂る場合は、大豆食品全体の量のバランスにも目を向けてください。大豆の過剰摂取が気になる方や疾患のある方は、摂取量を調整し、かかりつけの医師・管理栄養士にご相談ください。
腸活を食物繊維の視点で組み直すなら、まず「何の菌か」より「どれだけ繊維があるか」を確かめることが出発点になります。菌を選ぶ前に、菌を育てる繊維量を食品の数字で見る——その習慣が、発酵食品の選び方を変えます。
本記事は健康な成人を前提とした内容です。疾患のある方や食事制限が必要な方は、医療専門職にご相談ください。
※特定の食品の健康効果を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準