外食や中食が続くと「発酵食品でお腹を整えよう」と思う一方で、「発酵食品は塩分が高いのでは」という不安がよぎる。実はこの直感は半分しか当たっていない。同じ発酵食品でも、塩をほとんど使わないものと、塩を土台にして作られるものとで、食塩相当量はまったく違う。手元にある発酵食品を並べてみると、その差がはっきり見えてくる。
塩ゼロで発酵する食品
糸引き納豆は100gあたりの食塩相当量が0gだ。大豆を蒸して納豆菌を加えるだけで発酵が進むため、そもそも塩を加える工程がない。1パックはおよそ40gが目安なので、食塩相当量を気にせず食べられる発酵食品ということになる。同じくヨーグルト(全脂無糖)も食塩相当量は100gあたり0.1gとごくわずかだ。牛乳を乳酸菌で発酵させる過程に塩は関与しないため、こちらも「塩ゼロに近い発酵食品」といえる。ヨーグルトには乳酸0.7gを含む有機酸が0.9g含まれており、糖を利用する過程でできるエネルギー基質として働くとされる。
塩を土台にする発酵食品
一方、保存性を高めるために塩を使う発酵食品もある。米みそ(甘みそ)は100gあたり食塩相当量6.1g、ナトリウムにして2400mgを含む。みそ汁1杯に使う量はごく少量だが、塩を使うからこそ長期保存でき、こうじの働きで甘みも生まれる調味料だ。はくさいのキムチは2.9g、きゅうりのぬかみそ漬は5.3gと、どちらも塩を使うことで乳酸発酵を進め、保存性を保っている。同じ「漬ける」でも、らっきょうの甘酢漬は食塩相当量1.9gと控えめだ。こちらは塩よりも酢の力を借りた漬物で、クエン酸0.2gを含む。クエン酸はクエン酸回路に関わり、エネルギー代謝を支える有機酸とされる。
ここに一本の糸が見える。発酵食品の塩分の高低を決めているのは「発酵の有無」そのものではなく、「保存のために塩を使う工程が入っているかどうか」という一点だ。納豆やヨーグルトは短時間で発酵が進み、すぐに食べきる前提のため塩を必要としない。対して甘みそ・キムチ・ぬかみそ漬は、時間をかけて乳酸発酵や熟成を進める間、雑菌の繁殖を防ぎながら保存する役目を塩が担っている。つまり「発酵食品だから塩分が高い」のではなく、「長期保存を前提にした発酵食品だから塩を使う」というのが実際の構図だ。
外食続きの日の選び方
食塩相当量の目標量は、成人(30〜49歳)で男性7.5g未満・女性6.5g未満とされている。外食や中食が続く日はすでにしょうゆやたれで塩分を摂っていることが多いので、そこに追い打ちをかけたくない。そんな日は納豆やヨーグルトのような「塩ゼロ発酵」を選べば、塩分を増やさずに発酵食品を食事に足せる。逆に、外食の回数が少なく減塩に余裕がある日なら、みそ汁1杯やキムチ・ぬかみそ漬を少量添えるくらいは十分に選択肢に入る。らっきょうの甘酢漬のように塩よりも酢に頼るタイプも、箸休めとして取り入れやすい。
まとめ
発酵食品はひとまとめに語れない。塩を使わずに発酵が完結する納豆・ヨーグルトと、塩を土台にして保存性を確保する甘みそ・キムチ・ぬかみそ漬とでは、食塩相当量に大きな差がある。外食が続いて塩分が気になる日は塩ゼロ発酵を選び、余裕がある日は塩ありき発酵で風味を楽しむ。この分岐を知っているだけで、「発酵食品=塩分が心配」という漠然とした不安が、具体的な選び方に変わる。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・食品安全委員会・e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)