7月10日は「な(7)っ(10)とう」の語呂合わせで納豆の日とされる。とはいえ売り場に並ぶのは、糸を引く粒のままの納豆、豆を砕いた挽きわり、塩気の強い五斗納豆と一様ではない。同じ大豆から作られるのに、どれを選ぶかで実は中身がかなり違う。

粒とひきわり、まず何が違うのか

糸引き納豆は大豆を丸ごと発酵させたもので、100gあたりたんぱく質16.5g(女性30〜49歳の推奨量50g/日の33%)を含む。対する挽きわり納豆は、発酵前に大豆を砕いてから仕込む点が異なる。たんぱく質16.6gとエネルギー185kcalは糸引きとほぼ並ぶが、砕く工程のぶん食物繊維は9.5gから5.9gへと目減りする。ここだけ見ると挽きわりは「粒より劣る納豆」に思えるかもしれない。ところが、ある栄養素だけは逆に大きく伸びている。

ひきわりで跳ね上がるビタミンK

糸引き納豆のビタミンKは100gあたり600µg。女性30〜49歳の目安量150µg/日と比べてもすでに十分な量だが、挽きわり納豆は930µgと、目安量の約6.2倍という水準になる。ビタミンKは血液が正常に固まる働きを保つとともに、骨の形成にも関わるとされる栄養素だ。骨の日ではなく納豆の日にこの数値を知ると、粒よりひきわりを選ぶ小さな理由が生まれる。ちなみに納豆と並んでビタミンKを多く含む食品には、パセリやモロヘイヤ、あしたばといった緑黄色野菜や海藻、ほかの発酵食品がある。発酵という工程そのものがこの栄養素と縁が深いのかもしれない。

もっとも、砕いてあるぶん食べやすいというだけの違いではない。挽きわり納豆はパントテン酸も4.28mgと、糸引きの3.63mg(ともに女性30〜49歳の目安量5mg/日)を上回る。パントテン酸は体内でコエンザイムAという物質の材料になり、糖や脂肪酸の代謝、皮膚や粘膜の健康維持に関わるとされる。切り口を変えるだけでここまで数値が動くのは、納豆という食品の奥行きを感じさせる。

異色の一品、五斗納豆

ここで「では塩気のある納豆はさらに上か」と思いきや、話はそう単純ではない。山形・秋田に伝わる五斗納豆は、糸引き納豆に麹と塩を加えて熟成させた発酵食品で、ビタミンKは590µgと糸引きに近い水準にとどまる。その代わり際立つのがモリブデンで、100gあたり75µgは女性30〜49歳の推奨量25µg/日の300%にあたる。モリブデンはプリン体の代謝に関わる酵素の構成成分として働く必須微量ミネラルだ。ただし五斗納豆は食塩相当量が5.8gと、糸引き・挽きわりの0gから一転して高い。ご飯のお供として少量をなめる食べ方が似合う理由がここにある。

納豆の日の食べ方と扱い方

ビタミンKを効率よく摂りたい日は、挽きわり納豆をご飯にのせるだけでも十分だが、パセリを刻んで薬味に添えれば、緑黄色野菜と発酵食品というビタミンKの多い者同士の組み合わせが楽しめる。納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素は熱に弱いとされるため、あつあつのご飯に直接のせるより、少し冷ましてから和えるのが向いている。保存は10度以上で再発酵が進むとされるため冷蔵が基本で、余ったらパックごとポリ袋に入れて冷凍すれば3〜4週間ほど日持ちする。食べる際は冷蔵室かレンジで10〜20秒ほど解凍するとよい。なお抗凝固薬ワーファリンを服用している場合は、ワーファリンの作用が低下するとされるためビタミンKの摂取を控えたほうがよいとされる点は覚えておきたい。薬膳・東洋医学では、納豆は体を温める性質に分類され、血行をよくして冷えや肩こりを和らげるとされる。

※本記事の栄養素の働きに関する記述は一般的な知識として紹介するものであり、特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

まとめ

納豆の日は「納豆を食べる日」という素朴な合言葉のわりに、粒か挽きわりかで中身は静かに違う。挽きわり納豆のビタミンK930µgという数字は、砕くという一手間が生む思いがけない差だった。今年の7月10日は、いつもの糸引きから挽きわりに変えてみる。それだけで、同じ納豆でも少し違う一皿になる。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準