著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Trends in Current Biology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インド北東部のトリプラ州、とくにマニプリと呼ばれる人々のコミュニティでは、昔から2種類のスパイスがカレーや「グダック」と呼ばれる料理、肉料理の味を良くするために使われてきました。ニラ(Allium tuberosum)の葉と、ショウガの仲間であるハナショウガ(Zingiber zerumbet)の根茎です。どちらも伝統的に薬としての用途が知られていますが、著者らによると、日常的に使っている人々の多くはその栄養面の価値をよく知らないといいます。

研究チームは、これら2種について栄養成分の基本的な組成と、DPPHラジカル消去活性という指標で測った抗酸化能を、伝統的な薬用利用の情報とあわせて調べた研究はこれまでないとしています。そこで、地域の人々の利用法を聞き取るとともに、成分と抗酸化能を実験室で分析しました。

何を調べたか

2020年8月、西トリプラ県で、これらのスパイスを料理に使う20〜65歳の男女50人に、半構造化質問票(決まった質問に加えて自由に話を聞く形式)による聞き取りやグループでの話し合いを行いました。得られた情報は、マニプリのコミュニティで伝統医療を担う「マイバ」と呼ばれる人物と話し合って確かめています。

分析には、マニプリの人々の家庭菜園で採取したニラの葉とハナショウガの根茎を用いました。水分、糖、炭水化物、たんぱく質、遊離アミノ酸、脂肪、粗繊維といった栄養成分に加え、フェノール類とフラボノイドの量を測定しました。論文ではこの2つを「反栄養素」の項目として扱っています。さらに、紫色の試薬であるDPPHラジカルをどれだけ消すかを試験管内で調べる方法で、メタノールと石油エーテルという性質の異なる2種類の溶媒で抽出したエキスの抗酸化能を評価しました。

主な結果

聞き取りでは、マニプリの人々がこれらのスパイスを皮膚の感染症、糖尿病、かぜ、せきなどへの対処に使っていることが報告されました。たとえば、ニラの葉は胃の不調や糖尿病に用いられ、ハナショウガの生の根茎をすりつぶしたものは毒のある虫に刺されたあとに、乾燥させた根茎を蜂蜜と混ぜたものはせきやかぜに使われるといいます。ただし、こうした薬としての使い道を知っている人はごく少数でした。なお、これらは伝統的な利用法の記録であり、この研究で効果を確かめたものではありません。

成分分析では、両種ともたんぱく質、糖、炭水化物、粗繊維、遊離アミノ酸、脂肪を含んでいました。ハナショウガの根茎は可溶性糖(試料1グラムあたり1.79ミリグラム)と総炭水化物(同2.89ミリグラム)がニラの葉より多く、反対にニラの葉は遊離アミノ酸、たんぱく質、脂肪が多いという結果でした。フェノール類とフラボノイドはニラの葉のほうが多く、それぞれ試料1グラムあたり10.44ミリグラムと6.41ミリグラムで、ハナショウガ(6.55ミリグラムと3.46ミリグラム)を上回りました。

抗酸化能は抽出に使った溶媒によって結果が分かれました。メタノールで抽出したエキスではニラの葉が、石油エーテルで抽出したエキスではハナショウガの根茎が、より高い活性を示しました。著者らは、ニラの葉の高い活性はフェノール類やフラボノイドの多さによるものと考えており、石油エーテル抽出でのハナショウガの活性には特定の成分が関わっている可能性を挙げています。

研究が示すこと

この研究は、地域で味付けのために使われてきた2種のスパイスが栄養成分を含み、試験管内で抗酸化能を示すことを報告したものです。著者らは、これらのスパイスが日々の食事の一要素になりうること、栄養補助食品などの分野で活用されて地域の暮らしの向上につながる可能性があることを述べています。一方で、薬としての応用を論じるには有効成分についてのさらなる試験が必要だとし、今回の研究を2種の成分と抗酸化能に関する予備的な取り組みであり、今後の研究の基礎データになるものと位置づけています。

原著論文の著者・所属:P Chiranjit(Plant Diversity and Forest Biotechnology Laboratory, Department of Forestry and Biodiversity, Tripura University, Suryamaninagar 799 022, Agartala, Tripura, India)、C Kripamoy(Department of Botany, Tripura University, Suryamaninagar 799 022, Agartala, Tripura, India)、D Bimal(Plant Diversity and Forest Biotechnology Laboratory, Department of Forestry and Biodiversity, Tripura University, Suryamaninagar 799 022, Agartala, Tripura, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):P Chiranjit, C Kripamoy, D Bimal. Nutrients, anti-nutrients composition and antioxidant potentiality of two ethnomedicinally important culinary spices of Tripura, northeast India. Trends in Current Biology 2026-08-24. DOI: 10.14719/tcb.9455. 原著ライセンス:CC BY.