著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ルンダンは、インドネシア・西スマトラのミナンカバウの人々に伝わる煮込み料理です。肉などをココナッツミルク、唐辛子、多くの香辛料とともに長時間煮込み、汁気が少なく茶色く仕上げます。調理の途中、まだ汁気が多くしっとりした段階で取り出したものは「カリオ」と呼ばれ、これも広く食べられています。つまり、カリオとルンダンの違いは主に煮込み時間の長さによるものです。近年は肉の代わりに、赤いんげん豆などの豆類を使ったルンダンも作られています。

研究チームによると、加熱調理によって豆の成分が変わることや、牛肉をカリオ・ルンダンに調理すると成分が変わることは、それぞれ別々に調べられてきました。しかし、植物性の材料である赤いんげん豆が、カリオからルンダンへの長い煮込みの過程でどう変化するかについては、情報が限られていました。そこで著者らは、生の豆、カリオ、ルンダンの3段階を比べ、基本的な栄養成分、食物繊維、たんぱく質の分解されやすさ、アミノ酸の組成がどう変わるかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは、地元市場で買った乾燥赤いんげん豆を水に浸してから、伝統的な手順で調理しました。まず香辛料を炒め、ココナッツミルクなどを加えて煮詰めたソースに豆を入れ、さらに煮込みます。この段階でカリオとして一部を取り出し、残りは温度を下げてさらに120分煮込み、ルンダンとしました。分析は、ソースや香辛料から豆だけを分けて行いました。同じ手順の調理を独立に3回行い、それぞれを別々に分析しています。

調べた項目は、水分、灰分(ミネラル分の目安)、たんぱく質、脂質、炭水化物の基本的な成分と、食物繊維です。食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と溶けない「不溶性食物繊維」、およびその合計に分けて測りました。さらに、胃で働く消化酵素ペプシンをたんぱく質に作用させ、どれだけ分解されて溶け出すかを測りました。著者らは、この測定は腸での吸収能力を表すものではなく、調理によってたんぱく質が胃の酵素で分解されやすくなったかを比べる目安だと説明しています。あわせて、たんぱく質を構成するアミノ酸の組成も分析しました。

主な結果

基本成分は、調理の段階によってはっきり変わりました。水分は生の豆で16.60%でしたが、浸水と煮込みを経たカリオでは55.60%に増えました。さらに煮詰めたルンダンでは41.69%に下がりました。たんぱく質は、生の豆の24.11%からカリオで12.97%に下がり、ルンダンでは14.18%とやや上がりました。脂質は生の豆の2.46%からカリオで1.26%に下がった一方、ルンダンでは5.34%と最も高くなりました。著者らは、カリオでの減少には浸水や煮込みによる成分の溶け出しが関わっている可能性を挙げています。ルンダンでの増加については、水分が蒸発して成分が濃縮されたこと、特に脂肪の多いココナッツミルクが煮詰まったことが関係していると考えています。

食物繊維は、水分を除いた乾燥重量あたりで比べると、合計量が生の豆の17.85%からカリオで19.23%、ルンダンで21.75%へと段階的に増えました。不溶性食物繊維は調理によって増え、水溶性食物繊維はカリオでいったん減ったあと、ルンダンで最も高くなりました。ただし、水分を含んだ実際に食べる状態の重量あたりで見ると、食物繊維は生の豆が最も多く、水分の多いカリオが最も少ないという結果でした。

ペプシンによる分解されやすさは、生の豆の49.15%に対し、カリオでは56.05%に高まりました。ルンダンでは52.62%で、生の豆より高いもののカリオより低くなりました。著者らは、加熱によってたんぱく質の構造がほどけ、酵素が働きやすくなった可能性を挙げています。一方、ルンダンのように長く煮込むと、たんぱく質がほかの成分と結びつき、かえって分解されにくくなった可能性も示しています。

アミノ酸は、どの段階でも体内で合成できる非必須アミノ酸が多く、なかでもグルタミン酸とアスパラギン酸が多く含まれていました。調理によって減るアミノ酸もあれば、アラニンのように増えるものもありました。硫黄を含むメチオニンとシステインは含有量が最も少なく、調理後の減少も最も目立ちました。メチオニンは生の豆の0.09%からルンダンで0.06%に下がっています。研究チームは、メチオニンをこの豆のたんぱく質で最も不足しやすいアミノ酸(制限アミノ酸)と位置づけました。

研究が示すこと

この研究は、同じ赤いんげん豆の料理でも、カリオで止めるかルンダンまで煮込むかによって、栄養面の特徴が異なることを示しています。著者らは、カリオの段階ではたんぱく質がペプシンで分解されやすく、ルンダンまで煮込むと乾燥重量あたりの食物繊維が多くなったことから、目的とする栄養特性に応じて調理条件を考えるべきだとまとめています。

ただし、こうした変化が実際の健康にどう影響するかは、この研究では評価されていません。今回の成果は、伝統的な調理法が植物性食材の栄養成分をどう変えるかを、生の豆からカリオ、ルンダンへの段階ごとに示した基礎的な記録といえます。

原著論文の著者・所属:Surya Aulia H(Universitas Andalas)、Fauzan Azima(Universitas Andalas)、Rizki Dwi Setiawan(Universitas Andalas)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Surya Aulia H, Fauzan Azima, Rizki Dwi Setiawan. EFFECT OF TRADITIONAL KALIO AND RENDANG SLOW-COOKING PROCESSES ON THE NUTRITIONAL QUALITY OF RED KIDNEY BEANS (PHASEOLUS VULGARIS L.). Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences 2026-08-18. DOI: 10.55251/jmbfs.14527. 原著ライセンス:CC BY.