著者の所属・活動拠点の国は、ギリシャ、アメリカです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:AIに計算を任せない献立づくり

果物、野菜、豆類、全粒穀物、オリーブオイル、ナッツ、魚を多くとる地中海式の食事は、健康に良い食事の型として広く知られています。一方で、本場とされるギリシャを含む地中海地域でも、近年はこの食べ方から離れる傾向が報告されており、研究の知見を日々の具体的な献立に落とし込む実用的な道具が求められています。

近年は、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM:大量の文章を学習して文章を生成するAI)に献立を作らせる試みもあります。しかし、エネルギー量や栄養素の計算が不正確になったり、ばらつきが出たりする可能性が指摘されています。そこで研究チームは、AIには文章やデータの整理といった補助的な作業だけを担わせ、栄養計算と献立作成は決まったルールに従うプログラムに任せる枠組み「MAI-DIET」を開発しました。対象は、見かけ上健康な地域在住の成人です。

研究の目的は、この枠組みを開発すること、作られた献立の栄養面の充足度と食事の質を評価すること、LLMが直接作った献立と構成の一貫性を比べること、そして実際に働く医療専門職にとって受け入れやすいかを初期段階で確かめることでした。

仕組みと調べ方

MAI-DIETは三つの要素からなります。一つ目は、栄養士が伝統的な料理本や家庭料理などから集めたギリシャ・地中海式のレシピ239品と、米国農務省の食品成分データベースなどを基にした食品成分ライブラリーです。レシピの材料表記をグラム単位にそろえるといった整形作業ではLLMが補助しましたが、すべての項目は研究者が確認しました。AIがレシピや食品データを新たに作ることはありませんでした。

二つ目は、研究チームが作った「ペルセポネ」と呼ばれるルールベースの献立作成プログラムです。利用者の性別、年齢、体格、活動量、体重の目標から1日の必要エネルギーを推定し、レシピの分量を調整しながら、アレルギー、栄養基準、品目の繰り返し、魚や豆類などの食品群のバランスを考慮して、朝昼夕の3食と2回の間食を選びます。調理による栄養素の損失も考慮して計算され、同じ条件を入れれば毎回同じ献立が出てくる設計です。三つ目は、研究者による人の目での確認です。

研究チームは、1日1600〜2600キロカロリーの範囲にわたる架空の6人分について、それぞれ28日間の献立を作成しました。そのうえで、あらかじめ定めた栄養基準を満たすかどうか、地中海式食事への適合度など既存の評価指標でどう評価されるかを調べました。また、同じ6人分についてLLMに直接28日分の献立を作らせて比較し、さらにギリシャの栄養士、医師、薬剤師、看護師にそれぞれ1つの献立を割り当てて、アンケートで評価してもらいました。

主な結果

論文によると、6つの献立はすべてエネルギーの基準を満たし、脂質の目標や、オリーブオイルに多い一価不飽和脂肪酸を中心とした脂質構成も達成していました。魚由来のオメガ3脂肪酸、ビタミンC、ビタミンB12、葉酸、鉄の目標も満たされていました。一方、たんぱく質はすべての献立で上限をやや上回り、炭水化物は高エネルギーの献立で目標範囲をわずかに下回りました。ナトリウム(塩分)は2200〜2600キロカロリーの献立で目標を大きく上回り、カルシウムは1600キロカロリーの献立で欧州の基準値を17.5%下回ったと報告されています。

食事の質の指標では、6つすべての献立が地中海式食事への良好な適合を示す水準に達しました。植物由来の成分が豊富な食品からのエネルギーは全体の約半分を占め、超加工食品の含有はごくわずかでした。

LLMが直接作った献立との比較では、MAI-DIETの献立のほうが同じ料理の繰り返しや、料理名のはっきりしない仮置きの食事が少なく、日ごとのエネルギー量のばらつきも小さいという結果でした。LLMの献立では168日中21日で以前の日とまったく同じ献立が繰り返されましたが、MAI-DIETではそうした日はありませんでした。ただし著者らは、LLMの献立の栄養値は独立に再計算していないため、この比較は栄養計算の正確さではなく構成の一貫性についてのものだとしています。

医療専門職103人による評価では、全体の受容性は5点満点で平均3.84と、おおむね好意的でした。地中海式食事との適合性は86.4%、微量栄養素の分析の妥当性は85.4%が肯定的に評価しました。一方で、実生活での実行しやすさ(54.4%)や専門業務での使いやすさ(57.3%)への評価は控えめで、地中海以外の地域の人々への応用可能性に肯定的だったのは38.8%にとどまりました。

この研究が示すこと

この研究は、AIに栄養計算や献立作成そのものを任せるのではなく、文章やデータの整理の補助にとどめ、計算は検証可能なルールと確認済みの食品データで行うという役割分担の形を示しました。著者らは、MAI-DIETは臨床家の判断に代わるものではなく、専門家が出発点として使える、根拠をたどれて再現性のある献立を提供することを目指したものだと位置づけています。架空の利用者を対象とした初期段階の評価ではあるものの、栄養基準の多くを満たす献立を安定して作れること、そしていくつかの栄養素や実用面に課題が残ることが具体的に示されました。

原著論文の著者・所属:Konstantinos Divanis(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Alexandra Foscolou(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Georgios Prosalentis(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Charalampos Mylonas(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Maria I. Antoniou(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Athina Krokou(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Antonios-Nikolaos Filias(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Eleni Papagiannopoulou(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Panagiotis D. Dousis(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Aikaterini D. Polychronidou(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)、Georgia Gkioxari(Division of Computing and Mathematical Sciences, Caltech, Pasadena, CA 91125, USA)、Aristea Gioxari(Department of Nutritional Science and Dietetics, School of Health Sciences, University of the Peloponnese, Antikalamos, 24100 Kalamata, Greece)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Konstantinos Divanis, Alexandra Foscolou, Georgios Prosalentis, et al. Clinician–Artificial Intelligence Collaboration for Mediterranean Meal-Plan Generation: Development, Technical Feasibility, and Professional Acceptability of the MAI-DIET Framework. Nutrients 2026-08-14. DOI: 10.3390/nu18162661. 原著ライセンス:CC BY.