著者の所属・活動拠点の国は、クロアチアです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
地中海式食事は、野菜や果物、魚、オリーブオイルを中心とした食事パターンとして、心血管疾患のリスク管理に関わる領域で広く推奨されてきました。しかし実際の診療現場で、患者がどの程度この食事法を続けられているのか、また体組成や腎機能にどのような変化が起きるのかを長期にわたって追跡した研究は、これまで限られていました。今回、クロアチアのスプリット大学病院センターで、2型糖尿病と高血圧を併せ持つ成人患者を対象に、3年間にわたって食事や体組成の変化を観察した研究が発表されました。
どのように調べたのか
研究の対象となったのは、同院の臨床栄養外来に通院する2型糖尿病と高血圧を併発する成人患者158人です。研究チームは、体組成を多周波数の生体電気インピーダンス分析という方法で測定し、地中海式食事にどの程度沿っているかは「Mediterranean Diet Serving Score(MDSS)」という指標で評価しました。加えて、腎機能や脂質などの代謝関連の数値も標準的な検査法で調べています。さらに参加者を、管理栄養士による定期的なフォローアップ通院を継続していたグループとそうでないグループに分けて比較しました。
3年間で見えてきたこと
追跡期間中、体重、体格指数(BMI)、ウエスト周囲径、筋肉量、骨格筋指数、そして体細胞の状態を反映するとされる位相角(PhA)のいずれもが有意に減少したと報告されています。一方で脂質の状態については、総コレステロールとLDL(いわゆる悪玉コレステロール)が減少し、HDL(いわゆる善玉コレステロール)は増加するという改善がみられました。ただし研究チームは、この脂質の改善を食事内容の変化だけによるものと断定せず、薬物治療の影響が大きい可能性があると指摘しています。
その一方で、腎機能については望ましくない方向の変化が観察されました。クレアチニンと尿素の値が上昇し、推算糸球体濾過量(eGFR)は低下したとされています。また、心血管疾患の発症も追跡期間中に有意に増加したと報告されています。地中海式食事への遵守度は全体としては改善したものの、高い遵守度に達した参加者は17.8%にとどまったということです。
興味深いのは、管理栄養士による定期的なフォローアップを継続して受けていた参加者では、MDSSのスコアや地中海式食事への遵守度、そして位相角の値が、フォローアップを受けていなかった参加者に比べて有意に高かったという点です。研究チームは、体重や脂質の改善がみられる一方で筋肉量の減少や腎機能の低下、心血管疾患の増加が同時に進んでいたことから、栄養指導だけでなく、筋肉量の維持や運動などを組み合わせた多職種による個別的なアプローチの重要性を指摘しています。
この研究を読むうえで知っておきたいこと
この研究は特定の病院に通院する158人を3年間追跡した観察研究であり、地中海式食事そのものが体重減少や脂質改善を引き起こしたと直接証明するものではありません。特に脂質プロファイルの改善については、著者ら自身が食事よりも薬物治療の影響を反映している可能性があると述べています。また、高い遵守度に達した人が全体の2割弱にとどまっている点や、筋肉量や腎機能がむしろ悪化する方向に動いていた点は、食事指導の効果を評価する上で単純に「良くなった」とは言い切れない複雑さを示しています。一つの医療機関における観察研究である以上、結果がすべての2型糖尿病・高血圧患者に当てはまるとは限らない点にも留意が必要です。
まとめ
2型糖尿病と高血圧を併発する患者を3年間追跡したこの研究では、地中海式食事への遵守度は部分的に改善したものの、高い遵守度に達した人は少数派にとどまり、脂質の改善がみられる一方で筋肉量の減少や腎機能低下、心血管疾患の増加も同時に観察されたと報告されています。研究チームは、管理栄養士による継続的な指導が食事の質や栄養状態の面で良い関連を示していたことから、食事指導と筋肉量の維持、運動を組み合わせた多職種による長期的な支援の必要性を示唆しています。
著者:Dora Bučan Nenadić(Department of Nutrition and Dietetics, University Hospital of Split, 21000 Split, Croatia)、Josipa Radić(Department of Internal Medicine, Division of Nephrology and Haemodialysis, University Hospital of Split, 21000 Split, Croatia)、Ela Kolak(Department of Nutrition and Dietetics, University Hospital of Split, 21000 Split, Croatia)、M. Selak(Department of Nutrition and Dietetics, University Hospital of Split, 21000 Split, Croatia)、Mislav Radić(Department of Internal Medicine, Division of Rheumatology, Allergology and Clinical Immunology, University Hospital of Split, 21000 Split, Croatia)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Dora Bučan Nenadić, Josipa Radić, Ela Kolak, et al. Rethinking Mediterranean Diet Adherence and Body Composition: A 3-Year Prospective Observational Study in Patients with Type 2 Diabetes and Arterial Hypertension. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18152482. 原著ライセンス: cc-by.