著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリア、ニュージーランドです。
掲載誌:Frontiers in Allergy
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:段階的な食物導入の実態を知る
牛乳や卵の食物アレルギーは乳幼児期によくみられ、オーストラリアでは乳児期に負荷試験で確認された食物アレルギーが特に多いことが報告されています。食物アレルギーへの対応は、原因食物を完全に避けるだけの方法から、患者ごとに状況を見ながら食べられる範囲を広げていく方法へと変わってきました。
その方法の一つが「フードラダー(食物のはしご)」です。焼き菓子に練り込んだ牛乳や卵のように、十分に加熱した形から食べ始め、医療者の判断のもとで加熱の程度が少ない形へ一段ずつ進めていく道具です。論文は、決められた量を計画的に増やしていく経口免疫療法とは目的や管理の仕方が異なるものとして、両者を区別しています。
研究チームによると、オーストラリアとニュージーランドでは、職種や診療の場の違う臨床家がフードラダーをどう使い、どんな資料を用い、過去のアナフィラキシー(全身に及ぶ重い急性アレルギー反応)などの状況が判断にどう影響しているかについて、情報が限られていました。そこで著者らは、オーストラレーシア臨床免疫・アレルギー学会(ASCIA)に関わる医療者を対象に、フードラダーの使い方を記述する探索的な調査を行いました。
調べ方:70人の臨床家へのオンライン調査
調査は2024年6月の1か月間、ASCIAのメール配信リストを通じて案内されました。20問の質問票で、回答者の背景、フードラダーを使う対象、具体的な進め方を尋ねました。さらに、牛乳または卵のアレルギーがある生後9か月の乳児について、状況の異なる5つの場面を示し、ラダーを勧めるかどうかを答えてもらいました。
回答したのは70人です。アレルギー・免疫の専門医が約4割を占め、一般小児科医、看護師、管理栄養士、研修医なども含まれていました。主に子どもを診ている人が約4分の3でした。分析は回答の数と割合を示す記述的なものに限られ、統計的な比較は行われていません。
主な結果:牛乳と卵が中心、過去のアナフィラキシーには慎重
70人中66人(94.3%)がフードラダーを使っていると答えました。使用者のうち71.2%は、IgE抗体という免疫の物質が関わるタイプと、関わらないタイプの両方のアレルギーにラダーを用いていました。ラダーの種類は牛乳(98.5%)と卵(97.0%)がほとんどで、大豆は34.8%、小麦は6.1%でした。最も多く勧めている年齢層は1〜2歳の幼児でした。
使用者の約3分の2が、既存の標準化されたラダーを使ったり、レシピや家庭での導入手順を患者に渡したりしていました。次の段階へ進む目安としては、1回ではなく複数回問題なく食べられてからとする回答が93.9%を占めました。ある段階で症状が出た場合に再挑戦するまでの間隔は、1〜3か月(45.5%)と3〜6か月(33.3%)が多く挙げられました。
使用者の90.9%は、ラダーを使わない条件(除外基準)を設けていました。最も多かったのは、その食物で過去にアナフィラキシーを起こしたこと(77.3%)で、次いでコントロール不良のぜんそく(57.6%)でした。乳児の場面設定でも、その食物でアナフィラキシーの既往がある場合にラダーを勧めた割合は牛乳で12.9%、卵で18.6%にとどまりました。一方、IgEが関わらない牛乳アレルギーでは84.3%、アナフィラキシーを伴わないIgE型の牛乳アレルギーでは67.1%、同じく卵アレルギーでは78.6%が勧めると答えました。
この研究が示すこと
この調査は、オーストラリアとニュージーランドの臨床現場で、フードラダーが牛乳と卵を中心に広く使われていると回答者が報告していることを示しました。同時に、使う資料や再挑戦の時期、リスクの高い状況への対応には回答者によってばらつきがあり、過去のアナフィラキシーがある場面で医療者が最も慎重になる傾向も浮かび上がりました。
ただし著者らは、これは記述的な結果にすぎないと強調しています。回答率は計算できず、食物アレルギーに関心の高い医療者が多く回答した可能性があります。また、患者の安全性や効果は調べておらず、フードラダーの安全性・有効性や、ラダーによってアレルギーが治るかどうかを示すものではありません。論文は、ラダーを医療者の指導のもとで一部の患者が食べられるものを広げる助けになりうる手段と、慎重に位置づけています。今回の結果は、現場の実践の姿と医療者の慎重さがどこに表れるかを示す一つのスナップショットだといえます。
原著論文の著者・所属:Alan Nguyen(Department of Paediatrics, The University of Melbourne; Epworth Allergy Specialists, Epworth HealthCare; Population Allergy, Murdoch Children's Research Institute)、Yiran Tu(Queensland Paediatric Immunology and Allergy Service, Queensland Children's Hospital)、Kuang-Chih Hsiao(Department of Immunology, Starship Child Health, Te Whatu Ora - Health New Zealand; Department of Paediatrics: Child and Youth Health, University of Auckland)、Jane Peake(Queensland Paediatric Immunology and Allergy Service, Queensland Children's Hospital; University of Queensland)、Alberto Pinzon-Charry(Griffith University; Queensland Paediatric Immunology and Allergy Service, Queensland Children's Hospital; University of Queensland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alan Nguyen, Yiran Tu, Kuang-Chih Hsiao, et al. Food ladder use among ASCIA-affiliated clinicians in Australia and New Zealand: an exploratory descriptive survey. Frontiers in Allergy 2026-07-28. DOI: 10.3389/falgy.2026.1889636. 原著ライセンス:CC BY.