薬膳では、とうがん(果実・生)は体のほてりやのぼせを鎮め、夏バテを解消するとされています。一方のはまぐり(生)は、薬膳・東洋医学では体をうるおし、水分代謝をよくするとされる食材です。とうがんは鶏肉、はまぐりはレモンとの食べ合わせがよいとされ、五性はどちらも「寒」、五味はどちらも「甘」を含む点で共通しています。まったく違う見た目の野菜と貝が、薬膳では同じ「寒」の仲間として語られてきました。日本食品標準成分表の実測値を見比べると、この二つにはもう一つ、はっきりした共通点が見えてきます。

低カロリー・高水分という共通点

とうがんは100gあたりのエネルギーが15kcalで、たんぱく質0.5g・脂質0.1g・炭水化物3.8gとどの成分も少なく、水分は95.2gにのぼります。実際、水分の多さではりょくとうもやし(生)の95.4gに次ぐ値です。品種によって大小があり、果肉はやわらかく味も香りも淡白とされ、大きいものは数キロになるため切り売りされることが多い野菜です。

「冬瓜」という字は、丸ごと風通しのよい冷暗所に置けば夏に収穫しても冬まで日持ちすることに由来するといわれています。煮物1人分の目安はおよそ100g(皮やわた、へたを含む重量)で、1個ではおよそ2kgにもなります。とうがんの主産地は沖縄・愛知・岡山・神奈川・静岡とされています。

はまぐりは100gあたり35kcal・たんぱく質6.1g・脂質0.6g・炭水化物1.8gで、水分は88.8gです。エネルギーはとうがんよりやや高いものの、水分の多さはとうがんに通じます。1個あたりの重量はおよそ25g(貝殻を含む)で、可食部はそこから貝殻の分を除いた部分です。はまぐりは沿岸性の二枚貝で、ひな祭りの潮汁などに縁起食材として用いられるとされています。薬膳で同じ「寒」に分類されてきた二つの食材は、成分表の上でも、低カロリー・高水分という食材としての性質を共有しています。

それぞれが持つ個性

はまぐりにはもう一つ際立った数値があります。はまぐりビタミンB12は100gあたり28µgで、比較した食品の中で最も多い値でした。ビタミンB12はアミノ酸や核酸の代謝に関わり、赤血球の形成を助けるとされる栄養素で、動物性食品に多く含まれ、加熱に比較的強いものの汁に溶け出しやすいため、汁ごと食べる調理がよいとされています。ビタミンB12の目安量は成人30〜49歳で男性・女性とも4µgです。

生のはまぐりにはビタミンB1を分解する酵素が含まれるため、加熱してから食べる食品です。一方で食塩相当量は100gあたり2gあり、貝そのものに塩気があることが分かります。食塩相当量の目標量は成人30〜49歳で男性7.5g未満・女性6.5g未満です。とうがんは食物繊維総量が1.3gで、たんぱく質や脂質はごくわずかにとどまります。

食卓での取り入れ方

とうがんは皮の色が濃く張りがあり、切り口が白くみずみずしくて種が詰まっているものが新鮮とされています。とろりと煮えたとうがんと、グルタミン酸などによるうまみを汁ごと味わえるはまぐりを合わせた汁物や煮物は、実際の成分表の上でも低カロリー・高水分という条件がそろう組み合わせといえそうです。もやしを添えれば水分の多い野菜がもう一品加わり、彩りや食感の変化も楽しめます。

共通していたのは成分ではなく性質だった

薬膳で同じ「寒」に分類されてきたとうがんとはまぐりを数字で見比べると、共通していたのは特別な一成分ではなく、100gあたり15〜35kcalという低カロリーと、おおむね9割かそれ以上を水分が占めるという性質でした。見た目のまったく違う野菜と貝が、成分表の上では似た者どうしでした。汁ごと味わう料理で古くから組み合わされてきたのも、この性質を思えば筋の通った取り合わせです。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準