8月10日は「や(8)きとり(10)」の語呂合わせから生まれた「焼き鳥の日」でした。日付は過ぎてしまいましたが、焼き鳥が一年じゅう食べられるものである以上、この日をきっかけに部位を見比べておいても遅くはありません。焼き鳥といえば串に刺さったさまざまな部位が思い浮かびますが、この記念日と結びつく食材として挙げられるのがむね皮つき焼きです。今回は成分表のデータをもとに、鶏のもも肉や副品目(肝臓・心臓・すなぎも・皮)と並べてみたところ、むね肉が数字の上でも主役の座にふさわしいことが見えてきました。
3項目で首位、ただしパントテン酸は肝臓に譲る
もも肉・肝臓・心臓・すなぎも・皮、そして季節に彩りを添える葉ねぎを含めた7食品を並べて比べると、むね皮つき焼きは100gあたりナイアシン17mg、パントテン酸2.51mg、たんぱく質34.7g、トリプトファン420mgという数字を持ちます。このうちナイアシン・たんぱく質・トリプトファンの3つは、比べた7食品の中でむね肉が最も多い値です。一方でパントテン酸は肝臓10.00mg、心臓4.41mgに次ぐ3番手で、ここは内臓に譲ります。主役は主役でも、全部で一番ではない——その線引きが、比べてみて初めて見えてきます。
まずナイアシンは100gあたり17mgで、2位の心臓(6mg)や3位のもも肉(4.8mg)を大きく引き離しています。ナイアシンは酸化還元酵素の働きを助ける補酵素で、皮膚や粘膜の健康維持に関わるとされる栄養素です。パントテン酸は2.51mgで、女性30〜49歳の目安量5mg/日のおよそ半分をむね肉100gだけで満たせる計算になります。糖や脂肪酸の代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとされる成分です。
たんぱく質は34.7gと、副品目の中で存在感のある肝臓(18.9g)やすなぎも(18.3g)の約2倍近くに達します。女性30〜49歳の推奨量50g/日に対して69%という数字は、むね肉一皿でその日の必要量にかなり近づけることを意味します。体をつくる主成分であり、エネルギー源にもなるたんぱく質は、串焼きの定番であるむね肉らしい持ち味と言えそうです。あわせてトリプトファンも420mgと突出しており、これはセロトニンの材料となる不可欠アミノ酸の一種です。
同じ鶏から生まれる、脇を固める顔ぶれ
もちろん、鶏一羽から取れる部位はむね肉だけではありません。もも肉は皮つき生で100gあたり脂質14.2gとむね肉より脂がのり、コラーゲンに多いヒドロキシプロリンはもも肉の皮で460mg、もも肉本体でも350mgと、むね肉の200mgより多く含まれています。すなぎもはグリシンというアミノ酸が1600mgとむね肉と並んで多く、心臓はビタミンB2が1.1mgと推奨量1.2mg/日の92%を占めます。心臓はレチノール(ビタミンA)も100gあたり700µgと副品目のなかでは多めで、ビタミンAは食品由来でも耐容上限量が定められている栄養素とされるため、一度に多く食べ続けない意識があると安心です。こうした顔ぶれが、むね肉という主役を囲むように並んでいるのが焼き鳥の面白さです。
串を選ぶ楽しみと、覚えておきたい一言
焼き鳥屋の店先でどの串を頼むか迷うのも、この日ならではの楽しみです。むね肉は脂質9.1gと、もも肉の14.2gに比べてさっぱりとした味わいで、たんぱく質やナイアシンの数値がそのまま「しっかり食べられる部位」であることを裏づけています。肝臓のように一串(目安約30g)でも栄養が濃い部位は、少量でも役割を果たす反面、レチノールのように一度に多く食べすぎない配慮も添えたい部位です。ねぎ間などで添えられる葉ねぎは、ビタミンCや香り成分のアリシンを含む淡色野菜としても知られています。栄養バランスを考えるときは、日本人の食事摂取基準も参考にしてみてください。
まとめ
過ぎたばかりの焼き鳥の日をきっかけに成分表を開いて数字を追ってみると、むね皮つき焼きはナイアシン・たんぱく質・トリプトファンの3項目で首位に立ち、パントテン酸だけは肝臓に譲るという姿が見えてきました。全部で一番ではないけれど、串の定番として選ばれてきた理由は数字の側にもある——記念日は過ぎても焼き鳥屋はいつでも開いています。次に一本を選ぶときに、その線引きを思い出してみてください。
【摂取量の目安】にわとり [副品目] 肝臓 生は、ビタミンA(レチノール)が100gで耐容上限量2700μgRAEの約5.2倍、焼きとり1串(約30g)で約1.6倍にあたります。 ビタミンA・Dは脂溶性で体に蓄積しやすいため、多量・連日の摂取やサプリメント併用、妊娠中は過剰摂取に注意が必要とされます(通常の食事で時折とる分には問題になりにくいとされます)。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「たんぱく質」(厚生労働省)