「パントテン酸」という名前は耳慣れないかもしれませんが、食べたものをエネルギーに変える代謝の過程で、このビタミンB群の一つは欠かせない役割を担っています。体内では「補酵素A(コエンザイムA)」という物質の構成成分となり、糖質・脂質・たんぱく質すべての代謝に関わります。補酵素とは、代謝の反応がスムーズに進むために必要な"助け手"のようなものです。
日本人の食事摂取基準では、女性(30〜49歳)の1日目安量は5mgとされています。耐容上限量(これ以上は摂りすぎとされる上限)は設定されておらず、余分な分は体外に排出される水溶性ビタミンです。その名はギリシャ語の「至るところに」に由来し、多くの食品に広く含まれますが、食品によって含有量には大きな差があります。
第1位から第5位——レバー4品と、1つの例外
第1位 鶏肝臓(鶏レバー)生 100gあたり10mg
1日目安量の2倍に相当する密度です。肝臓は体内で代謝が活発に営まれる器官で、パントテン酸をはじめとするビタミンB群が集まりやすい部位といえます。ただし、動物性ビタミンA(レチノール)の含有量も非常に高く、100gあたりの値は日本人の食事摂取基準が定める耐容上限量(18歳以上男女ともに2700µgRAE/日)の約5.2倍に相当します。鶏レバーは通常一度に多く食べる食品ではありませんが、頻繁な大量摂取は避けるのが安心です。
第2位 乾しいたけ(干し椎茸)乾 100gあたり8.77mg
5品の中で唯一、動物性食品ではありません。1位との差はわずかで、驚くほど高い密度です。この理由は乾燥による濃縮にあります。生しいたけは水分が約90%ありますが、乾燥させることで重さあたりの成分量が大幅に増えます。実際に使う量は1〜2枚(約5g程度)が目安で、一度に摂れる量はごく少量にとどまりますが、植物性食品でこれほどの密度を持つ食材は珍しい存在です。だしや煮物に活用し、戻し汁もスープに使えば手軽に取り入れられます。
第3位 豚スモークレバー 100gあたり7.28mg
生のレバーではなく、燻製加工品がランクインしています。燻製の工程で水分が抜け、成分が凝縮された結果です。動物性ビタミンA(レチノール)は100gあたりで同耐容上限量の約6.3倍と5品の中で最も高いため、食べる量には特に注意が必要です。
第4位 豚肝臓(豚レバー)生 100gあたり7.19mg
3位の豚スモークレバーとほぼ並ぶ値で、レバニラ炒めなど家庭でもなじみ深い食材です。約50gを一食の目安とした場合、パントテン酸は約3.6mgほどの概算になります。レチノールは100gあたりで同耐容上限量の約4.8倍で、こちらも食べすぎには注意が必要です。
第5位 牛肝臓(牛レバー)生 100gあたり6.4mg
レバー4品のうち唯一、レチノールが同耐容上限量の範囲内に収まります(100gあたりで約40%程度)。他の3品のレバーに比べ、レチノールの観点からは扱いやすい選択肢といえます。約50gを使う場合、パントテン酸は約3.2mgほどの概算になります。
データから見えてきたこと
肝臓が上位を占めるのは、代謝の中枢を担う臓器としてエネルギー代謝に関わる栄養素が集まりやすいためと考えられます。そこへ、乾燥による凝縮で高い密度を持つ植物性食品が肉薄する——このデータの顔ぶれは、「どの食品に栄養素が集まるか」という食材の特徴を端的に映しています。
日常の食事に取り入れるなら、レバーは食べる頻度と量を意識しながら月に数回が安心な目安です。レチノールの含有量が比較的少ない牛レバーを選ぶのも一案。乾しいたけはだしや煮物・スープで日常的に活用でき、戻し汁ごと使えば成分を余すことなく取り込めます。パントテン酸は多くの食品に少量ずつ含まれるビタミンだからこそ、特に多い食品を把握しておくと、日々の食選びの参考になるでしょう。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。