パントテン酸という名前は、ギリシャ語で「あらゆるところにある酸」を意味するとされています。その名のとおり、動植物を問わずさまざまな食品に幅広く含まれており、通常の食事をしていれば不足の心配はほぼないとされる栄養素です。体内では、補酵素(ほこうそ)と呼ばれる「酵素の働きを助ける物質」の一種であるコエンザイムAの構成成分となり、糖や脂肪酸の代謝にかかわる幅広い酵素反応に関与しています。また、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとも知られています。

水溶性のビタミンB群に属し、食事摂取基準2025では女性(30〜49歳)の1日目安量は5mgと設定されています。では、成分表に収載された食品のなかで、実際に多く含まれているのはどんな食品なのでしょうか。上位5品を見ていくと、「広くまんべんなく」という名の由来とはかなり異なる、偏りが見えてきます。

上位5食品の読み解き

第1位:鶏レバー(生)

トップは鶏レバー(生)で、100gあたり10mg。1日目安量の200%に相当します。焼きとり1串(約30g)に換算すると約3mgで、それだけで1日目安量の6割ほどを占める計算です。

肝臓はもともと、吸収した栄養を一時的に蓄え、体の必要に応じて供給する臓器。パントテン酸もまたその貯蔵先のひとつとなっていると考えられます。注意点として、鶏レバーはビタミンA(レチノール)も非常に多く、100gあたりの値は耐容上限量2700µg/日の約5.2倍(14000µg)に達します。焼きとり1串(約30g)程度であれば日常的な量の範囲ですが、大量に食べ続けることは避けたほうが安心です。

第2位:乾しいたけ

動物性食品が並ぶなか、植物性で唯一上位に入ったのが乾しいたけです。100gあたり8.77mgと、1日目安量の175%。乾燥によって成分が凝縮されているため、1個(約4g)あたりに換算すると約0.4mgほどになります。100gを一度に食べる食品ではないので、1個単位では少量に見えますが、煮物や鍋に数個加えるだけでパントテン酸を日常的にとる選択肢になります。不溶性食物繊維も豊富で、100gあたり44gという高い値を持つ食品でもあります。

第3位:豚スモークレバー

豚スモークレバーは100gあたり7.28mg(目安量の146%)。加工品ですが、パントテン酸の含有量は豚レバー(生)に近い水準を保っています。こちらもレチノールが100gあたり17000µgと、耐容上限量2700µg/日の約6.3倍に達するため、やはり100gという量には注意が必要です。薄切りにして少量ずつ楽しむ食材です。

第4位:豚レバー(生)

豚レバー(生)は100gあたり7.19mg(目安量の144%)。レバにら炒め1人分(約50g)では約3.6mgで、1日目安量の7割超を1皿でまかなえる密度です。こちらも100gあたりのレチノールが耐容上限量2700µg/日の約4.8倍(13000µg)に達しますが、目安量の50g程度であれば過度な心配は要しません。頻度と量に気をつけながら取り入れるのがバランスのよい使い方です。

第5位:牛レバー(生)

牛レバー(生)は100gあたり6.4mg(目安量の128%)。鶏・豚より数値は低いものの、それでも上位5品に名を連ねます。牛レバーのレチノールは100gあたり1100µgで、他のレバーと比べれば格段に低く、上限量を超える心配は少ない水準です。ただし、銅の含有量が高いことには留意を(100gあたり5.3mgは成人女性の推奨量0.7mg/日の757%に当たります)。銅には耐容上限量が設定されているため、大量摂取には注意が必要です。

まとめ

「どこにでもある」という名を持ちながら、パントテン酸の上位5品には鶏・豚・牛の肝臓が3品も並びます。肝臓が栄養の集積・貯蔵に関わる臓器であることと、無関係ではないでしょう。とはいえ、レバーはビタミンAの量が多いものも含まれるため、毎日たっぷりというより、週1〜2回を目安に適量で楽しむのが賢い取り入れ方です。乾しいたけのように植物性の選択肢もあるので、食材を組み合わせながら幅広い食事のなかでパントテン酸を意識してみてください。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準文部科学省 食品成分データベース消費者庁

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。