「何を食べるか」が、病気と向き合う毎日にどれほど影響するのか——神経変性疾患のひとつであるパーキンソン病と食事の関係が、近年の研究で少しずつ明らかになってきています。リトアニアで行われた最新の研究は、患者の栄養摂取状況を詳細に分析し、食事管理が補助的な療法として注目されていることを示しています。

研究でわかってきたこと

2026年4月に学術誌『ニュートリエンツ』に掲載されたリトアニアの研究では、パーキンソン病患者59名と健康な対照群54名の食事内容が比較されました。参加者の食事内容は、異なる2日間の24時間食事回想法(食べたものをすべて思い出して記録する手法)で把握され、推奨摂取量と照らし合わせる形で分析されています。

研究では、パーキンソン病患者の栄養状態に関していくつかの注目すべき傾向が報告されています。まず、患者はリトアニアの推奨摂取量と比べ、食物繊維・ビタミンA・ビタミンDの摂取量が低い傾向があったとされています。また、総糖質からのエネルギー摂取割合が高めであったことも指摘されています。

さらに、半数以上の患者でたんぱく質・脂質・不飽和脂肪酸・ビタミンE・ビタミンC・カルシウム・亜鉛が推奨量に満たなかったと報告されています。一方、健康な対照群と比べると、患者は食物繊維・植物性たんぱく質・炭水化物をより多く摂取している傾向も見られたといいます。

特に興味深いのは、抑うつ気分のある患者は、そうでない患者に比べて炭水化物・食物繊維・植物性たんぱく質・一部のビタミン・ミネラルの摂取量が少ない傾向があったという点です。食事と精神状態が相互に関連している可能性が示唆されており、食事管理が運動症状だけでなく非運動症状にも影響しうるとの見方が研究者によって示されています。

なお、パーキンソン病患者では栄養不良のリスクが最大60%に上ることもあると報告されており、日常的な食事の質を高めることへの関心が世界的に高まっています。

注目の食品と実測データ

今回の研究で不足が指摘された栄養素のうち、食物繊維・ビタミンD・カルシウム・亜鉛は、日本人にとっても摂取が難しいとされる栄養素として知られています。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)においても、これらの栄養素は多くの年代で目標量・推奨量への到達が課題とされています。

食物繊維は野菜・豆類・海藻・きのこ類などに豊富に含まれています。ビタミンDは魚介類やきのこ類(日光にあてたもの)が代表的な供給源です。カルシウムは乳製品・小魚・大豆製品などから、亜鉛は肉類・魚介類・ナッツ類などから摂取できると一般的に知られています。

また、ビタミンAについても、緑黄色野菜(にんじんほうれん草かぼちゃなど)やレバーなどが豊富な供給源とされています。これらの食品を日々の食卓にバランスよく取り入れることが、幅広い栄養素の補給につながると考えられています。

※本見出しで取り上げた食品の数値データについては、農林水産省・厚生労働省等の公的機関が公表するデータをご参照ください。

日々の食事に取り入れるヒント

研究の結果を踏まえ、日常の食事で意識したいポイントをまとめました。特定の食品が病気を治したり予防したりするわけではありませんが、栄養バランスを整えることは健やかな毎日を支える土台となります。

  • 野菜・豆類・海藻を毎食意識する:食物繊維は一度にまとめて摂るより、毎食少しずつ取り入れる方が消化器官への負担が少なく続けやすいといわれています。みそ汁に豆腐海藻を加えたり、副菜に根菜類を使ったりする工夫が手軽です。
  • 魚を週に数回取り入れる:青魚(さばやいわしなど)はビタミンDだけでなく、不飽和脂肪酸(DHA・EPAなど)も含む食品として知られています。焼き魚・煮魚・缶詰など、手軽な調理法を活用してみましょう。
  • 緑黄色野菜を意識的に選ぶ:にんじんほうれん草かぼちゃなどは、ビタミンAやビタミンCの摂取にも貢献します。炒め物やスープに加えると摂取量を増やしやすくなります。
  • 乳製品・小魚でカルシウムを補う:牛乳ヨーグルトチーズのほか、小魚(ちりめんじゃこなど)も日本の食卓に取り入れやすい食品です。
  • 食欲が落ちているときは食べやすい形に工夫する:研究では抑うつ気分がある患者で複数の栄養素の摂取量が減少していたことが報告されています。体調が優れないときは、スープやおかゆなど消化しやすい形にするのも一つの方法です。

まとめ

パーキンソン病患者を対象としたリトアニアの研究は、食事管理が日々の生活の質に関わりうることを改めて示唆しています。特定の食品や栄養素に頼るのではなく、多様な食品を組み合わせてバランスよく摂ることが、長期的な健康を支える基本です。食事に少しの工夫を加えることから、今日の食卓を見直してみてはいかがでしょうか。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Dietary Intake of Patients with Parkinson's Disease in Lithuania(ニュートリエンツ(2026-04-20))