著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。

掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: DataCite

研究の目的

赤ちゃんは生後6か月ごろまでは母乳だけで育ちますが、その後は母乳に加えて離乳食(補完食)で栄養を補う必要があります。著者らによると、ナイジェリアの伝統的な離乳食には、単一の穀物から作るでんぷん中心のかゆが多く、良質なたんぱく質や微量栄養素(ビタミンやミネラル)が不足しがちです。

「トムブラウン」は、エネルギー源となるトウモロコシやキビと、たんぱく質や脂質を補う大豆や落花生を混ぜて作る、ナイジェリアで広く使われている離乳食用の穀物粉です。ただし、穀物や豆類にはフィチン酸などの「抗栄養因子」が含まれています。これは鉄や亜鉛などのミネラルと結びつき、体への吸収を妨げる成分です。発酵や焙煎といった伝統的な加工法は、こうした成分や栄養の状態を変えることが知られています。

研究チームは、発酵を加えるかどうかでトムブラウンのビタミンとミネラルの組成がどう変わるかを比べました。あわせて、ナイジェリア標準化機構(SON)が補完食に定めた基準値と比較し、味や香りなどの官能特性も調べました。

何をどう調べたか

材料のトウモロコシ、キビ、大豆、落花生は地元の市場で購入し、汚れや割れた粒を取り除いてから二つに分けました。一方は水に24時間浸けて発酵させ、天日で乾燥してから焙煎し、粉にしました。これらの粉をトウモロコシ40%、キビ30%、大豆20%、落花生10%の割合で混ぜたものを試料A(発酵あり)とし、発酵させない粉を同じ割合で混ぜたものを試料Bとしました。

二つの試料について、標準的な分析法でビタミン類とミネラル類の含有量を測定しました。さらに、訓練を受けた20人の評価者が、味、見た目、食感、とろみ、総合的な好ましさを9段階の評価尺度で採点しました。試料間の差は統計的な検定で確認されています。

主な結果

ビタミンでは、発酵させた試料Aのほうが、葉酸(ビタミンB9)、ビタミンC、ビタミンB2、B6、Kの値が統計的に有意に高くなりました。例えば葉酸は、試料Aが32.40マイクログラム、試料Bが25.65マイクログラムでした。ビタミンCは試料Aが1.90ミリグラム、試料Bが0.31ミリグラムでした。著者らは、発酵中に微生物が水溶性ビタミンを作り出したことが関係していると考えています。一方、脂溶性のビタミンEは発酵させない試料Bのほうが高くなりました。ビタミンAはどちらも0.01マイクログラムで、SONの基準を下回りました。

ミネラルでは、試料Aのほうがカルシウム、ナトリウム、鉄が有意に多く、鉄は9.13ミリグラムでした。著者らは、発酵によってミネラルと抗栄養因子の結びつきがほどけた可能性を挙げています。また、この鉄の量は補完食に求められる範囲の下限に近いと述べています。反対に、リンとマグネシウムは試料Bのほうが多く、それぞれ236.00ミリグラムと110.50ミリグラムでした。論文では、水に溶けやすいこれらのミネラルが、発酵のための浸水中に水へ流れ出たためと推測しています。カルシウムはどちらの試料もSONの基準値に届きませんでした。

官能評価では、発酵させた試料Aでナッツのような香ばしい香りが強まったと報告されています。この香りは伝統的な離乳食で好まれる特徴だとされています。

研究が示すこと

この研究は、同じ材料と配合でも、発酵を加えるかどうかで離乳食に含まれるビタミンやミネラルのバランスが変わることを示しています。発酵は一部のビタミンや鉄を多くし、発酵させない処理はリンやマグネシウムを多く保ちました。どちらの方法でも、カルシウムやビタミンAは基準に届きませんでした。著者らは、家庭で作る離乳食で鉄を多く含ませるには、焙煎前に発酵させる方法が取り入れやすいとしています。そのうえで、不足する栄養素は地元の食材などで補う工夫が必要だと述べています。

原著論文の著者・所属:Eke, Lorretta Nneka(Department of Food Science and Technology, Akanu Ibiam Federal Polytechnic Unwana, Ebonyi State)、Egwu, Bridget Ogbonnie(Department of Food Science and Technology, Akanu Ibiam Federal Polytechnic Unwana, Ebonyi State)、Okonkwo, Evelyn Ijeoma(Department of Science Laboratory Technology, Akanu Ibiam Federal Polytechnic Unwana, Afikpo, Ebonyi State, Nigeria)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eke, Lorretta Nneka, Egwu, Bridget Ogbonnie, Okonkwo, Evelyn Ijeoma. Comparative Analysis of the Micronutrients And Sensory Properties of Weaning Food (Tom-Brown) Cereals Produced from Fermented and Roasted Maize, Millet, Soybeans, and Groundnut. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-09-30. DOI: 10.5281/zenodo.22792073. 原著ライセンス:CC BY.