著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。
掲載誌:International Journal of Science for Global Sustainability
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ナイジェリアでは、乳幼児の栄養不良が今も大きな公衆衛生上の課題です。母乳だけでは栄養が足りなくなる生後6か月ごろからは、母乳と並行して「補完食」(離乳食)を与えます。しかし市販の離乳食は高価で、多くの家庭では手に入れにくいのが現状です。そのため農村部などでは、身近な穀物で作った食事が使われますが、必要な栄養素が不足しがちだと指摘されています。
研究チームは、地元で手に入りやすいトウモロコシ、ミレット(トウジンビエ)、ソルガム(モロコシ)の3種類の穀物に注目しました。これらを伝統的な方法で加工してから離乳食に仕上げ、加工法の違いで栄養成分がどう変わるかを調べることが目的です。著者らは、加工法が離乳食の栄養密度に与える影響は、ナイジェリアを含む多くの途上国でまだ十分に研究されていないと述べています。
どのように調べたか
穀物はそれぞれ「焙煎」「発酵」「未加工」の3通りに処理されました。3種類の穀物と3通りの処理を組み合わせ、9種類の離乳食を作っています。配合は100グラムあたり、穀物35グラム、大豆21グラム、落花生11グラム、砂糖10グラム、塩2グラム、スイカの種3グラム、カボチャの種2グラム、トマト3グラム、パーム油13グラムです。穀物以外の配合はすべて同じにそろえ、穀物の種類と加工法の違いだけを比べられるようにしました。
研究チームはまず、粉が水をどれだけ吸うか(吸水性)、水を含んでどれだけ膨らむか(膨潤性)、一定の体積あたりの重さ(かさ密度)を測りました。いずれも、離乳食にしたときの食感や濃さに関わる性質です。さらに、水分、灰分(燃やした後に残る無機質の総量)、たんぱく質、脂質、繊維、炭水化物といった基本的な栄養成分を標準的な分析法で測り、そこからエネルギー量を計算しました。ビタミンA、E、Cの量も測定しています。
主な結果
性質の面では、発酵させたミレットとソルガムの吸水性が、ほかの処理より高くなりました。未加工の穀物は膨潤性とかさ密度が高く、焙煎や発酵をした穀物ではかさ密度が下がりました。かさ密度が最も低かったのは発酵ミレットです。著者らによると、膨らみにくく軽い粉ほど、同じ量のかゆでも濃く作れます。そのため、胃の小さい乳児が一さじあたりで多くの栄養をとりやすくなると考えられます。
栄養成分では、たんぱく質が最も多かったのは発酵ミレットを使った離乳食で、10.76%でした。脂質は2.48~6.24%の範囲で、焙煎ソルガムが最も多くなりました。炭水化物は70.07~86.68%で、最も多かったのは焙煎トウモロコシです。焙煎トウモロコシは、エネルギー量も100グラムあたり406.72キロカロリーで9種類の中で最大でした。
ビタミンについては、焙煎ミレットのビタミンA(100グラムあたり1.77ミリグラム)とビタミンC(同52.87ミリグラム)が9種類の中で最も多くなりました。ビタミンEは、未加工ミレット(同31.71ミリグラム)と焙煎ミレット(同31.18ミリグラム)が特に多い結果でした。著者らはこれらをもとに、焙煎ミレットを最も栄養のバランスがよい配合と評価しています。ビタミンA、E、Cのいずれも、乳児の推奨量に達するか上回る水準だとしています。
研究から見えること
この研究は、同じ材料と同じ配合で作った離乳食でも、穀物の種類と、焙煎・発酵といった伝統的な加工法の選び方によって、たんぱく質、エネルギー、ビタミンの量や食感に関わる性質が変わることを示しました。調べたのは離乳食の成分と性質で、乳児に実際に食べさせて効果を確かめたものではありません。それでも著者らは、身近で安価な穀物と豆類を組み合わせ、伝統的な加工を施した離乳食が、資源の限られた地域で乳児の栄養を支える選択肢になりうると述べています。
原著論文の著者・所属:Ijeoma Okoro(Shehu Shagari University of Education, Sokoto)、Mansur Lawal(Usmanu Danfodiyo University, Sokoto, Nigeria)、R. S. Wasagu(Usmanu Danfodiyo University, Sokoto, Nigeria)、Amina Rabe(Usmanu Danfodiyo University, Sokoto, Nigeria)、Andrew Onu(Usmanu Danfodiyo University, Sokoto, Nigeria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ijeoma Okoro, Mansur Lawal, R. S. Wasagu, et al. Nutritional Quality and Vitamin Composition of Complementary Foods Formulated from Traditionally Processed Food Ingredients. International Journal of Science for Global Sustainability 2026-10-06. DOI: 10.57233/ijsgs.v12i3.1158. 原著ライセンス:CC BY.