著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:International Journal of Management Research and Economics
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
海辺の観光と地域の食づくりをつなぐ
インドネシアのタンジュン・レスンでは、ビーチやウォータースポーツを中心とする観光が盛んな一方、周辺の集落で受け継がれてきたヤシ糖づくりは、観光の仕組みに十分組み込まれていません。研究チームは、ヤシの樹液から砂糖をつくる伝統的な仕事が、地域の食や農業を体験する観光としてどのような可能性を持ち、事業化には何が障壁となっているかを調べました。
調査では、ヤシ糖の生産者1人、観光村の運営担当者1人、観光客3人に、用意した質問を軸に柔軟に話を聞きました。さらに、2026年5月に生産現場で丸1日の観察を実施。研究チームは聞き取り内容を整理し、共通する話題や課題を読み取りました。
商品だけでなく、製造過程にも関心
著者らは、樹液を集め、ろ過し、煮詰め、型に入れる工程に、地域で受け継がれた知識や技術があると報告しています。ヤシ糖は食品として販売するだけでなく、そのつくり方や背景を伝えることで、学びや交流の機会にもなり得ると捉えています。
聞き取りに参加した観光客は、地元のヤシ糖について事前にはあまり知りませんでしたが、製造工程の説明を受けると、見学や作業への参加に関心を示しました。包装を魅力的にすること、持ち帰りやすい小さなサイズにすること、ショウガを組み合わせた商品などへの提案もありました。研究チームは、製造の実演や地域の物語、試食を組み合わせる可能性を示しています。ただし、観光客の回答は3人によるもので、幅広い市場の需要や収益性が確かめられたわけではありません。
観光事業にするには、宣伝以外の条件も
研究チームが挙げた障壁は、情報の届きにくさ、現地への行きにくさ、取引への不信です。宣伝は主に個人のSNSに頼り、宿泊施設や観光コースを通じて継続的に紹介されていませんでした。生産地へ向かう道路の状態も悪く、観光客が訪れにくいため、生産者がリゾート施設へ出向いて実演する場合もありました。
また、生産者には、商品を預けて販売してもらう委託販売への不信がありました。商品が紛失・破損した際の補償や支払いの取り決めが不明確なことが、観光事業者との連携を妨げる要因として報告されています。
著者らが示すのは、伝統的な製法と観光客の関心があることと、観光事業として成り立つ準備が整っていることは別だという点です。今回の地域に即した探索的な調査は、ヤシ糖づくりを海辺の観光に結び付けるには、魅力の発信だけでなく、訪問しやすい環境や体験の設計、信頼できる取引の仕組みを一緒に整える必要があると伝えています。
原著論文の著者・所属:Rachmi Satwhikawara(President University)、Cahyani Putri Anggraeni(President University)、Felix Goenadhi(President University)、J. Budhi Susetiyo(President University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rachmi Satwhikawara, Cahyani Putri Anggraeni, Felix Goenadhi, J. Budhi Susetiyo From Traditional Palm Sugar to Agrifood Tourism Enterprise: Entrepreneurial Opportunities and Structural Barriers in Tanjung Lesung. International Journal of Management Research and Economics 2026-08-27. DOI: 10.54066/ijmre-itb.v4i3.4802. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。