著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

肉の代わりとなる植物性の「代替肉」は、見た目や味、調理のしやすさで肉に近い食品として広がっています。主な原料には大豆たんぱく質が多く使われています。しかし大豆には、気候や農地の条件に左右されやすいこと、青臭さや豆臭さが残ること、アミノ酸の一種メチオニンが少ないこと、アレルギーの原因になりうることなどの課題があると、著者らは指摘しています。

そこで研究チームが注目したのが、カシューアップルの搾りかすです。カシューアップルはカシューナッツの付け根にできる果実状の部分で、果肉加工工場からは大量の搾りかすが出ます。この搾りかすは糖分が多いため、酵母を育てる材料に使えます。酵母が増えると菌体そのものがたんぱく質源となり、これは「単細胞たんぱく質」と呼ばれます。

一方で、代替肉を家庭で加熱したり温め直したりしたときに品質がどう変わるかは、まだよく分かっていません。この研究の目的は、酵母で発酵させたカシューアップルの搾りかすを植物性ミートボールに加え、調理と再加熱が栄養成分、酸化のしやすさ、ミネラルの残り方にどう影響するかを調べることでした。

どのように調べたか

研究チームは、ブラジルの果肉加工工場から入手したカシューアップルの搾りかすにパン用酵母を加え、水分が少なめの状態で24時間発酵させました。これを乾燥させて粉にし、「発酵カシューかす粉」を作りました。発酵の前後で成分を比べたところ、発酵後の粉ではたんぱく質が2.86倍に増えていました。灰分(ミネラル分の目安)、粗繊維、脂質も増え、糖分は減っていました。

ミートボールは4種類用意しました。大豆たんぱく質だけを使った対照品と、大豆たんぱく質の一部を発酵カシューかす粉に置き換えた品です。置き換えの割合は10%、20%、30%の3段階でした。それぞれについて、生の状態、湯せんで中心温度75℃まで加熱した状態、冷蔵1日後に電子レンジで中心温度65℃まで温め直した状態の3通りを分析しました。

調べた項目は多岐にわたります。水分・たんぱく質・脂質・繊維などの成分、酸性度、色、加熱による重さや形の変化、脂質とたんぱく質の酸化の程度、たんぱく質の分子の大きさの分布、ミネラル量などです。さらに、多くの項目をまとめて傾向を見る統計手法も用いて、配合と加熱のどちらが違いを生む主な要因かを検討しました。

主な結果

発酵カシューかす粉を多く加えるほど、粗繊維が増えました。ただし繊維は、加熱や再加熱の後には減っていました。ミネラルではリン、マグネシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅が増え、ナトリウムは粉の割合が増えるにつれて減る傾向でした。ただし、温め直した試料はナトリウムのこの傾向から外れていました。たんぱく質は、生の状態では10%と30%の品で高い値でしたが、加熱後は大豆たんぱく質の割合が最も高い対照品で最も多くなりました。

粉を加えると、ミートボールはより酸性に傾き、色はより暗くなりました。対照品との色の差は、目で見て分かる程度とされる基準を超えていました。また、粉を加えた品は水分を保ちやすく、遠心分離で失われる水分が少なくなりました。加熱したときの歩留まり(加熱前に対する加熱後の重さの割合)は、10%の品で対照品より高く、10〜30%の品どうしでは差がありませんでした。

酸化については、生の状態では20%と30%の品で脂質の酸化を示す値が低くなりました。しかし加熱するとすべての品で値が上がり、特に10%と20%の品で高くなりました。たんぱく質の酸化の指標は、温め直した後では対照品が最も高く、30%の品が最も低い値でした。電気泳動という方法でたんぱく質を分析すると、粉の割合が増えるほど、また温め直した試料ほど、たんぱく質の帯が薄くなりました。著者らはこれを、配合と加熱によってたんぱく質の分布が変化したことを示す可能性がある結果として慎重に解釈しています。

全体の傾向をまとめた分析では、試料の違いを最も大きく生んでいたのは発酵カシューかす粉の配合割合でした。加熱の有無は二次的な要因で、主にミネラルの分布や水分に関わる性質に影響していました。

この研究が示すこと

この研究は、捨てられがちな果物の搾りかすを酵母で発酵させると、植物性ミートボールの繊維とミネラルを増やす材料になりうることを示しました。あわせて、加熱や温め直しによって酸化の進み方やミネラルの残り方が変わることも明らかにしました。食べる前の調理まで含めて品質を評価する必要性がうかがえます。なお、著者らは味や食感などの官能評価と消費者の受け入れやすさは調べておらず、これらへの影響はまだ確かめられていないと述べています。

原著論文の著者・所属:Rogério Silva de Almeida(Post-Graduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba, João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Isabelly da Silva Ramalho(Post-Graduate Program in Agrifood Technology, Federal University of Paraíba, Bananeiras, Paraíba, Brazil)、Valquíria Cardoso da Silva Ferreira(Post-Graduate Program in Agrifood Technology, Federal University of Paraíba, Bananeiras, Paraíba, Brazil)、José Evangelista Santos Ribeiro(Post-Graduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba, João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Normando Ribeiro-Filho(Post-Graduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba, João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Fábio Anderson Pereira da Silva(Post-Graduate Program in Agrifood Technology, Federal University of Paraíba, Bananeiras, Paraíba, Brazil; Post-Graduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba, João Pessoa, Paraíba, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rogério Silva de Almeida, Isabelly da Silva Ramalho, Valquíria Cardoso da Silva Ferreira, et al. Effect of thermal processing on chemical and technological properties of meatball analogues produced using enriched cashew apple waste. Journal of Food Science and Technology 2026-10-01. DOI: 10.1007/s13197-026-06935-x. 原著ライセンス:CC BY.