発酵食品と聞くと、乳酸のイメージを持つ人が多いかもしれません。ですが実際に日本食品標準成分表で乳酸の値が収載されているのは、みそではなくヨーグルトです。同じ「発酵食品」でも、その発酵を特徴づけている成分は食品によってまったく違います。みそとヨーグルトを数値で比べると、発酵の「顔つき」の違いが鮮やかに見えてきます。

みそを特徴づけるのは酸ではなく塩

米みそ 赤色辛みそは100gあたりナトリウムが5100mgと、みそ・ヨーグルト・漬物の中で最も多く含まれています。ナトリウムは細胞外液の浸透圧や量を保ち、神経・筋肉の活動などに関わる成分です。同じ米みそでも、米みそ 淡色辛みそは4900mg、米みそ 甘みそは2400mgと、色が濃く辛口になるほどナトリウムが多くなる並びです。甘みそは塩分が少なくこうじの量が多いほど甘みが出るとされ、西京みそなどがその代表例といわれています。食塩相当量で見ると、赤色辛みそは13g、淡色辛みそは12.4g、甘みそは6.1gです。

みその甘みの主体はぶどう糖です。淡色辛みそでは100gあたりぶどう糖が9.1gと、果糖0.7gやガラクトース0.3gよりもはっきり多く含まれています。つまりみその個性を作っているのは、酸ではなく塩とこうじ由来の糖なのです。

ヨーグルトは乳酸・クエン酸・有機酸の顔を持つ

一方、ヨーグルト 全脂無糖は100gあたり乳酸が0.7gと、みそ・漬物を含めた並びの中で最も多く検出されています。乳酸は糖を利用する過程でできるエネルギー基質で、筋肉や心臓などでエネルギー源として使われる有機酸です。ヨーグルトにはさらにクエン酸0.2g、酢酸なども合わせた有機酸の合計が0.9gと収載されており、クエン酸はクエン酸回路に関与し、エネルギー代謝の中心的な役割を果たす有機酸とされています。ヨーグルトのナトリウムはわずか48mgで、みそとは一桁以上違う顔つきです。乳酸菌は米や麦を発酵させたみそ・しょうゆ・漬物・日本酒や、牛乳を発酵させたチーズ・ヨーグルトに存在するとされていますが、成分表の実測値としてその代謝産物である乳酸がはっきり数字に出るのはヨーグルトの方なのです。

ヨーグルトの甘みの主体は乳糖2.9gです。乳糖はぶどう糖とガラクトースが結合した二糖です。乳糖を分解する酵素が少ない人はお腹がゆるくなることがあるとされています。

漬物にもそれぞれの系譜がある

この「塩の発酵」と「酸の発酵」の対比は、漬物にも表れています。きゅうり 漬物 ぬかみそ漬は100gあたりナトリウムが2100mgと、みそに近い塩の系譜に連なる漬物です。ぬかみそに漬けると重量は83%になり、100gの生きゅうりが83gの漬物になる計算です(日本食品標準成分表(八訂)調理方法の概要および重量変化率表より)。一方、はくさい 漬物 キムチはナトリウムが1100mgとぬかみそ漬より控えめですが、有機酸が0.3g、クエン酸が0.1gと、酢酸やクエン酸といった酸の値がわずかに検出されています。乳酸も微量(Tr)ながら収載されており、同じ「漬物」という言葉でくくられていても、ぬかみそ漬が塩を主体にした発酵、キムチが乳酸菌由来の酸をわずかに持つ発酵という、異なる性格を持っていることが数字から読み取れます。

毎日の食事への取り入れ方

みそは米みそ 甘みそなら小さじ1で5.8g、大さじ1で17.3gが目安量です。汁物に溶く量を計量してみると、思ったよりナトリウムを摂っていることに気づくかもしれません。カリウムには余分なナトリウムの排泄を助ける働きがあるとされ、野菜や海藻などカリウムを含む食材をみそ汁に合わせるのも一つの工夫です。ヨーグルトはカップ1杯(200ml)で約210gが目安量で、そのまま食べても、みそ汁とは違う酸味の系統の発酵食品として楽しめます。きゅうりのぬかみそ漬は1本分約90gが目安ですが、これは廃棄する両端を含んだ購入時の重量です。塩気の強い漬物なので、量を控えめにするか、他の食事の塩分と合わせて考えるとよさそうです。

まとめ

「発酵食品」とひとくくりにされがちなみそとヨーグルトですが、成分表の実測値を見比べると、みそを特徴づけているのはナトリウムという塩の顔、ヨーグルトを特徴づけているのは乳酸・クエン酸という酸の顔だとわかります。同じ発酵という言葉の中に、まったく違う成分の物語が隠れているのです。漬物についても、ぬかみそ漬とキムチでは塩と酸のどちらが主役かが異なります。次にみそやヨーグルトを手に取るとき、その裏にある成分の違いを思い出してみると、いつもの食卓が少し違って見えるかもしれません。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)