「うすくちしょうゆ」を選べば塩分が少ない——そう考えて棚に手を伸ばしたことはないだろうか。成分表の数字を見ると、その判断が逆効果だったとわかる。
こいくちしょうゆの食塩相当量は100gあたり14.5g。対してうすくちしょうゆは16g。「色が薄い=塩が少ない」という直感と実数は、まったく逆の関係にある。差は1.5g——小さじ1杯(約5.9g)で換算すると、うすくちの方がこいくちより1回あたり約0.09g多く食塩を摂ることになる。一度の使用量では小さな差だが、毎日の積み重ねとして意識しておく価値はある。
では「低塩」と銘打った商品はどうか。うすくちしょうゆ(低塩)の食塩相当量は100gあたり12.8g。うすくちの通常品16gより確かに少ない。ただし、こいくちの14.5gよりも低い——という点に注目したい。「うすくち」という名がついていても、「低塩」と表示があってはじめて塩分がこいくちを下回る。名前の一部だけで判断すると、意図しない逆転が起きる。
みそはどうか。色や辛さのイメージが判断を狂わせる点で、しょうゆと同じ構造を持つ。
| 食品名 | 食塩相当量(100gあたり) |
|---|---|
| こいくちしょうゆ | 14.5g |
| うすくちしょうゆ | 16g |
| うすくちしょうゆ(低塩) | 12.8g |
| 米みそ 甘みそ | 6.1g |
| 米みそ 淡色辛みそ | 12.4g |
| トマトジュース 食塩無添加 | 0g |
米みそ(甘みそ)——西京みそに代表される、こうじをたっぷり使った甘口みそ——の食塩相当量は100gあたり6.1g。一方、米みそ(淡色辛みそ)は12.4g。「淡色」という言葉の響きから塩が少ないと思いがちだが、数字は甘みそのちょうど2倍に近い。色の濃い辛みそなら塩が多い、という直感は当たっているが、「淡色だから少ない」という連想は成立しない。甘みその6.1gという低さは、色でも名前でもなく、麹の配合比率という製法の違いによるものだ。
ここまでの5品を並べると、一つの糸が見えてくる。名前に「薄」「淡」「低」の文字があっても、塩分の少なさを保証しない——むしろ「低塩」の明示がない限り、うすくちはこいくちより多い。減塩を意図した選択が、実は逆になっている構造が、しょうゆとみその両方で繰り返されている。
この流れの中で、もう一段の裏切りがある。塩分の「唯一の逃げ場」として機能する品が、しょうゆでもみそでもなく、野菜加工品の中にある。トマトジュース(食塩無添加)の食塩相当量は0g。果汁100%で塩を加えていないため、この比較の中で唯一、食塩相当量がゼロになる。料理に塩みを足さず水分とともに風味を加えたいとき、食塩無添加のトマトジュースは塩分をまったく持ち込まない選択肢になる。
数字を見る習慣が、選択を変える
6品を通じて見えてくるのは、「名前・色・種別は塩分の代理変数にならない」という事実だ。減塩に取り組む上で、このことを一度確認しておくと選択の精度が変わる。
- しょうゆを使うなら:うすくちの通常品よりこいくち(14.5g対16g)。さらに減らしたければ低塩うすくち(12.8g)を選び、大さじ1(約17g)単位で使用量を意識する。
- みそを使うなら:甘みそ(6.1g)はほかの米みそより食塩相当量が大幅に低い。汁物や和え物で使う量(大さじ1=約17g)に換算すると差がより実感しやすい。
- 調理の水分を補うなら:食塩無添加のトマトジュースは、煮込みやスープのベースに使っても塩を持ち込まない。塩みの調整が純粋に別の調味料だけで完結する。
食塩相当量はナトリウムの量に係数2.54を掛けて算出される。栄養成分表示に「ナトリウム」しか書かれていない場合でも、この換算を使えば食塩量に置き換えられる。日本人の食事摂取基準では成人(30〜49歳)の目標量は男性7.5g未満・女性6.5g未満が示されているが、しょうゆやみそは100gあたりの数値が大きく見えても、実際の一度の使用量は数g程度であることが多い。重要なのは100gあたりの値の大小より、一回に何g使うか——数字を量と一緒に読む習慣が、選択の精度を上げる近道になる。
「うすくち」「淡色」「甘」——言葉のイメージが実数と一致しないケースは、今回の6品だけに限らないはずだ。成分表の「食塩相当量」という一行が、次の買い物で少し違って見えるかもしれない。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)に基づきます。