この研究は、コートジボワール、トーゴの研究機関の研究論文です。

掲載誌:GSC Biological and Pharmaceutical Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜこの果実を調べたのか

ナツメの一種であるZiziphus mauritiana Lam.(クロウメモドキ科)は、西アフリカのサバンナに広く分布するとげのある常緑の果樹です。乾燥や痩せた土壌、高温に強いため、乾燥・半乾燥地域の農林複合システムで重要な役割を果たしており、マリやブルキナファソでは収穫の端境期に人々の食料と収入を支えてきました。果実は生のまま、あるいは乾燥・加工して食べられ、葉・樹皮・根・種子は伝統医療にも用いられています。

コートジボワール北部のサバンナにもこの樹木は生育し、地域の人々が慣習的に採取して利用しています。しかし著者らによれば、同国での既存研究は森林域で採取した葉からのサポニンやフラボノイド配糖体の単離、および動物を用いた抗糖尿病作用の検討にとどまり、実際に食べられている果実の栄養・植物化学成分を記載した公表データは見当たりませんでした。研究チームは、この空白を埋めることを目的として、コルホゴ県で採取した果実の成分を調べました。食品や機能性素材としての活用を検討するうえで、こうした基礎データが前提になるという考えからです。

どのように調べたか

研究チームは2025年6月から8月にかけて、コルホゴ県で生理的成熟に達したナツメの果実を合計30 kg収穫し、大学の研究室へ運びました。洗浄したのち、果肉と種子を分けずに丸ごと室温(27±2 ℃)で重量が一定になるまで乾燥させ、粉末に挽いています。果肉だけを分析する研究が多いなかで丸ごと扱ったのは、乾燥果実をそのまま食べる伝統的な食べ方を反映させるための意図的な選択だと説明されています。

この粉末について、水分・灰分・脂質・タンパク質・糖の量を標準的な分析法で測り、炭水化物は差し引きで算出、エネルギー値は国際的な換算係数を用いて計算しました。ポリフェノール(植物に含まれる抗酸化性の成分群)は固相抽出で取り出したうえで高速液体クロマトグラフィー(HPLC、成分を分離して定量する手法)にかけ、標準物質との比較で同定・定量しています。ビタミンも脂溶性・水溶性それぞれの公定法に沿ってHPLCで分析し、ミネラルは酸で試料を分解したうえで比色法および原子吸光分光法で測定しました。分析はいずれも3回繰り返し、同じ単位で表せる成分群ごとに一元配置分散分析とダンカンの多重比較検定(5%水準)を行って、含有量の順位づけを統計的に確認しています。

報告された主な結果

まず目立つのは炭水化物の多さです。乾燥果実粉末の炭水化物は82.63±0.35 g/100 gに達し、エネルギー値は368.0±0.4 kcal/100 gと算出されました。水分は8.64%、脂質は3.13%、タンパク質は2.33%、灰分は3.27%で、いずれも中程度にとどまっています。著者らは、脂質が果肉のみを分析した先行研究より高く、逆にタンパク質は低いことについて、脂質の多い種子を含めたことや品種・土壌条件の違いが関係している可能性を指摘しています。

ポリフェノールは5種類が同定・定量され、ミリスチシンが1630.63 mg/kgと突出して多く、次いでオイゲノール(287.48 mg/kg)、没食子酸(38.23 mg/kg)、カフェ酸(21.54 mg/kg)、カテキン(11.20 mg/kg)の順でした。統計解析では5成分すべてが互いに異なるグループに分類され、明確な序列が確認されています。この構成は、ジンバブエの同種果実でp-ヒドロキシ安息香酸やフェルラ酸などが主体と報告された先行研究とは異なっており、著者らは遺伝的な違い、成熟段階、抽出・分析法の違いが理由として考えられると述べています。

ビタミンは調べた10種のうち9種が定量でき、ビタミンEが6.18 mg/100 gで最も多く、ビタミンC(4.18 mg/100 g)、ナイアシン(ビタミンB3、1.34 mg/100 g)が続きました。ビタミンB5は確実な定量ができていません。ビタミンCの値は他地域の報告より低めですが、著者らはこのビタミンが熱や酸化に弱いことと、本研究で用いた長時間の露天乾燥との関係を指摘しています。ミネラルでは8元素が定量され、カルシウムが5304.69 mg/kg(530.5 mg/100 g)で最も多く、カリウム(2643.95 mg/kg、264.4 mg/100 g)、ナトリウムがこれに続きました。リンとマグネシウムは中程度、鉄・マンガン・亜鉛は微量元素として最も少ない群でした。

この研究が示すこと

著者らは本研究の限界も明示しています。採取地はコルホゴ県の1か所、収穫期も1シーズンのみであるため、この種で知られる地理的・季節的・品種的なばらつきをまだ捉えられていません。また果肉と種子を分けずに分析したことは伝統的な食べ方に沿う一方、両者を分けて報告する多くの先行研究との直接比較を難しくしています。繰り返しも単一の混合試料からの分析上の三重測定にとどまります。さらに、植物化学成分やビタミンの構成は伝統的な薬用利用と矛盾しないものの、本研究では生理活性の測定そのものは行っておらず、そうした性質は今後の実験的な確認が必要だとしています。

それでもこの報告は、コートジボワールで実際に食べられているナツメ果実の成分を初めて数値として示したものです。エネルギーと炭水化物に富み、ポリフェノール、ビタミン、ミネラルについても無視できない量を含むという姿が、同国の資料として初めて記録されました。これまで葉の植物化学と動物薬理に限られていた知見の空白を埋め、地域の野生食用果実を評価するための出発点となる基準データが得られたことが、この研究の意味だといえます。

著者:Yves Nyamien、Haffiata KONE-SORO(Laboratory of Biology and Agro-resources Valorization , Peleforo GON COULIBALY University , BP 1328 Korhogo , Côte d'Ivoire)、Koffi Diallo(National Institute of Youth and Sports , National School of Sports Science and Technology , Abidjan , Côte d'Ivoire)、Tiatou Souho(Laboratory of Food Biochemistry and Nutrition , Faculty of Sciences and Techniques of Kara , Togo)、H.G. Biego(Laboratory of Biochemistry and Food Science , Training and Research Unit of Biosciences , Félix HOUPHOUËT-BOIGNY University , 22 P.O. Box 582 Abidjan 22 , Côte d'Ivoire)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yves Nyamien, Haffiata KONE-SORO, Koffi Diallo, et al. NUTRITIONAL AND PHYTOCHEMICAL COMPOSITION OF JUJUBE (ZIZIPHUS MAURITIANA LAM.) FRUIT HARVESTED IN CÔTE D'IVOIRE. GSC Biological and Pharmaceutical Sciences 2026-09-08. DOI: 10.30574/gscbps.2026.36.3.0310. 原著ライセンス:CC BY.