著者の所属・活動拠点の国は、コートジボワールです。

掲載誌:Biotechnology Journal International

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

チョコレートの原料となるカカオ豆は、収穫後に発酵と乾燥を経て出荷されます。発酵・乾燥後の豆の品質には、市場での評価、香り、健康面という三つの側面があると著者らは述べています。このうち健康面の品質を損なう要因として挙げられているのがカビです。カビは収穫後の処理から、発酵・乾燥した豆の保管に至るまでの過程で存在し、豆の品質を低下させます。

研究チームによると、コートジボワール産のカカオもこの問題と無縁ではなく、カビがつくる毒素であるオクラトキシンAに汚染される大きなリスクにさらされています。そこで本研究は、カビに対抗する働きを持つ可能性のある生物、具体的には抗カビ性を持つ酵母のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)とカンジダ・インコムニス(Candida incommunis)を使って、カカオ豆のカビ汚染を減らせるかを調べました。このように生物の働きで有害な生物を抑える方法は「生物防除」と呼ばれます。

何を調べたか

研究は2024年3月から6月にかけて、コートジボワールのナンギ・アブログア大学の研究室で行われました。著者らはまず、カカオの発酵中から分離されたカビであるアスペルギルス・カルボナリウス、アスペルギルス・オクラセウス、アスペルギルス・ニガーの3種を対象に、2種の酵母がカビの生育を抑えるかを確かめました。確認には、酵母とカビを直接向き合わせる方法と、間接的に作用させる方法の両方が用いられました。

次に、これらの酵母を発酵前のカカオ豆に接種し、発酵を進めました。その過程で温度や酸の量(滴定酸度)などの物理化学的な指標を測定しています。

主な結果

抄録によると、S. cerevisiaeとC. incommunisはどちらも、調べた3種のカビすべてに対して生育を抑える作用(拮抗作用)を示しました。

カカオ豆に接種して発酵させた段階では、試した酵母のうちC. incommunisだけが発酵中の温度上昇をもたらし、温度は49 °Cに達しました。接種した豆の滴定酸度は、発酵中、カカオ1グラムあたり0.06〜0.12当量(NaOH換算)の範囲でした。

また、試したいずれの酵母も、カカオの商品としての品質には影響を与えなかったと報告されています。一方で、発酵中のカビに対して完全な抑制効果を示したのはC. incommunisだけでした。

研究が示すこと

実験室で抗カビ作用を示した2種の酵母のうち、実際のカカオ豆の発酵の中でカビを完全に抑えたのはC. incommunisでした。著者らは、この酵母が高いカビへの拮抗能力を持つことから、有害なカビに汚染された発酵食品の除染や、カビ毒の生成を減らすことに応用できる可能性があると結論づけています。カカオの品質を損なわずにカビを抑える手段として、在来の酵母に目を向けた研究といえます。

原著論文の著者・所属:Didier Kra Brou Kédjébo(Food Biotechnology and Microbiology Laboratory, Food Science and Technology Research Department, Nangui Abrogoua University, 02 BP 801 Abidjan 02 Côte d’Ivoire)、Dominique Kouakou Kouadio(Food Biotechnology and Microbiology Laboratory, Food Science and Technology Research Department, Nangui Abrogoua University, 02 BP 801 Abidjan 02 Côte d’Ivoire)、Brice Judicaël Assi-Clair(Food Biotechnology and Microbiology Laboratory, Food Science and Technology Research Department, Nangui Abrogoua University, 02 BP 801 Abidjan 02 Côte d’Ivoire)、Maï Koumba Koné(Nutrion and Food Technology Laboratory, Joint Research Unit for Innovation in Agricultural Sciences and Processing Technologie, Félix Houphouët-Boigny National Polytechnic Institute, BP 1093 Yamoussoukro, Côte d’Ivoire)、Adobi Christian Kadjo(Laboratory of Biochemistry, Biotechnology and Food Science, Department of Science and Technology, Alassane Ouattara University, 18 BP 01 Bouaké, Côte d’Ivoire)、Simplice Tagro Guéhi(Food Biotechnology and Microbiology Laboratory, Food Science and Technology Research Department, Nangui Abrogoua University, 02 BP 801 Abidjan 02 Côte d’Ivoire)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Didier Kra Brou Kédjébo, Dominique Kouakou Kouadio, Brice Judicaël Assi-Clair, et al. Biocontrol of Molds Growth during Cocoa Bean (Theobroma cacao L.) Fermentation Using Native Yeast Species: Saccharomyces cerevisiae and Candida incommunis. Biotechnology Journal International 2026-10-22. DOI: 10.9734/bji/2026/v30i6918. 原著ライセンス:CC BY.