この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:AcTion Aceh Nutrition Journal

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目指した研究か

糖尿病は、インスリンの分泌や働きが損なわれることで血糖の調節がうまくいかなくなる慢性の代謝性疾患です。著者らは、国際糖尿病連合の報告として2024年に世界で20〜79歳の成人5億8870万人が糖尿病とともに生活しており、2030年には8億5250万人に達すると予測されていることを紹介しています。インドネシア国内でも、全国規模の健康調査にもとづき有病率が2018年の10.9%から2023年の11.7%へ上昇したと述べています。

こうした背景から研究チームが着目したのが、インドネシアの伝統的な発酵食品テンペです。テンペは通常大豆を原料に、クモノスカビ(リゾプス属)を使って作られます。ただし国内の大豆生産は需要に追いつかず輸入に頼っているため、地元で得られる原料を使った大豆以外のテンペを開発する必要があると論文は指摘します。そこで選ばれたのが、たんぱく質とエネルギーに富むマメ科のササゲと、フラボノイドやポリフェノール、ビタミンC、ミネラルを含むモリンガ(ワサビノキ)の葉の粉末でした。

この研究の目的は、ササゲとモリンガ葉粉末から作ったテンペの栄養成分と生体活性成分を評価し、2型糖尿病の管理を支える機能性食品として開発しうる最適な配合を見つけることです。著者ら自身、今回の評価は一般栄養成分(プロキシメイト分析)と一部の生体活性成分に限られると明記しています。

どのように調べたか

研究は実験室での実験として計画され、完全無作為化デザインのもと4つの配合(T0、T1、T2、T3)を各3回繰り返し、合計12の実験単位を設けました。全体301.5gのうちササゲとモリンガ葉粉末の比率を変え、T0はモリンガなし、T1が9g、T2が18g、T3が30gで、テンペ用の種菌(イースト)は各1.5gです。作業はすべて2024年9月に、ブラウィジャヤ大学の食事・調理実験室でのテンペ製造と、農業技術学部の食品品質・安全性試験実験室での分析という形で行われました。

製造手順では、材料を計量・洗浄して柔らかくなるまで煮たのち、ササゲを12時間浸漬して自然の乳酸発酵を進め、さらに10分再加熱して微生物の混入を減らしています。水を切って室温まで冷ましてからモリンガ葉粉末と種菌を混ぜ、穴を開けたポリ袋に詰めて28〜30℃で42時間発酵させました。

分析では、水分・灰分・たんぱく質(ケルダール法)・脂質(ソックスレー法)・炭水化物(差し引き法)・エネルギー(アトウォーター法)を国家規格に沿って測定しています。抗酸化活性はDPPH法で測り、ラジカルを半分消去するのに必要な濃度を示すIC50値として表しました。この値は小さいほど抗酸化活性が強いことを意味します。鉄は原子吸光分析、ビタミンCは滴定と分光法、でんぷんは酸加水分解、総糖はアントロン法、アントシアニンはpH差法で調べました。統計解析では一元配置分散分析を用い、最適な配合は各項目の理想値との近さを重みづけして合計するゼレニー法で決めています。

報告された主な結果

著者らが最良の配合として選んだのはT2(ササゲ94%:モリンガ葉粉末6%)でした。その値は、水分58.93%、灰分1.50%、たんぱく質14.90%、脂質0.39%、炭水化物24.27%、エネルギー160.25kcal、でんぷん8.86%、総糖12.73%、鉄15.3、ビタミンC8.66、抗酸化活性のIC50値48.77と報告されています。一方、アントシアニンはいずれの配合でも検出されませんでした。

統計的に有意な差が認められたのは、灰分(p=0.027)、脂質(p=0.014)、鉄(p=0.016)、抗酸化活性(p<0.000)でした。鉄はモリンガ葉粉末の配合量が増えるにつれて上昇し、T0の9.85mg/100gからT3の18.40mg/100gまで変化しています。抗酸化活性はIC50値がT0で51.73、T3で48.54と、モリンガを多く加えた配合ほど強く出ました。逆に、水分、たんぱく質、炭水化物、エネルギー、でんぷん、総糖、ビタミンCでは、配合間に有意な差は認められませんでした。

外観や食感も記録されています。モリンガを加えない T0は淡い黄色でササゲの香りが目立ち、加える量が増えるほど緑褐色から苔のような濃い緑へと色が濃くなり、モリンガの香りも強まりました。最も多く加えたT3は内部が柔らかく崩れやすい食感になったといいます。抗酸化活性が最も強かったのはT3でしたが、著者らは単一の項目を最大化するのではなく、栄養・生体活性・物理的性質を総合して判断したと説明し、食感が良好でテンペの品質規格にも適合するT2を最適と結論づけています。

検出されなかったアントシアニンについて、論文は加熱や発酵の過程での熱分解、発酵中の微生物代謝によるより単純なフェノール化合物への変換、そしてテンペの比較的高い水分が酸化的な分解を進めることなどを理由として挙げています。ビタミンCの値が全体として低かったことも、熱と酸素に弱い性質によるものと説明されています。

この研究が伝えること

この研究は、輸入大豆に依存しない地元産の原料で、栄養面と抗酸化面の特性を備えたテンペを作りうることを実験室レベルで示したものです。ササゲにモリンガ葉粉末を6%加えた配合が、鉄や抗酸化活性の向上と、食べ物としての扱いやすさとの折り合いがつく点として浮かび上がりました。

同時に、論文自身が線を引いている範囲も押さえておく必要があります。評価されたのは成分の分析であり、人が食べたときの血糖への影響を確かめたものではありません。著者らはモリンガの抗糖尿病作用の根拠が主に前臨床研究に由来し、人を対象とした研究の結果は一貫していないと述べ、灰分は総ミネラル量を示すもので吸収されやすさを直接示すわけではないとも注意を促しています。成分の設計図が描けたところまでが、この研究の到達点だといえます。

著者:Irma Sarita Rahmawati(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)、Rahmawati Indira Lahita(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)、Nindiya Muslima Febrianti(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)、Azizah Nurlaila(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)、Aulia Yafi’ Ramadhina(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)、Ginata Ayu Maulana(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, Universitas Brawijaya, Kabupaten Malang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Irma Sarita Rahmawati, Rahmawati Indira Lahita, Nindiya Muslima Febrianti, Azizah Nurlaila, Aulia Yafi’ Ramadhina, Ginata Ayu Maulana Characterization of nutritional composition and bioactive compound of cowpea tempeh with moringa leaf powder as a functional food candidate for type 2 diabetes mellitus. AcTion Aceh Nutrition Journal 2026-09-16. DOI: 10.30867/action.v11i3.3016. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。