掲載誌:CyberLeninK (CyberLeninka)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: DataCite
研究の目的
アゼルバイジャン技術大学の研究チームは、国内に自生するローズヒップ(ノイバラなどバラ属の果実)とエルダーベリー(ニワトコの果実)を食品工業の原料として使う可能性を検討しました。著者らによると、これらの野生の果実は栄養価の高い成分を含むと考えられています。しかし実際には十分に活用されておらず、多くが収穫されないまま残っています。
研究の目的は、二つの果実から作った「不透明果汁」の化学組成を比べることです。不透明果汁とは、果肉を除かず濁ったままの果汁を指します。著者らは文献と自らの調査をもとに、ローズヒップではビタミンCなどの成分が液体部分より果肉に多く含まれると述べています。そのうえで、果肉入り果汁の製造が理にかなっていると考えています。
何を調べたか
研究チームは野生のローズヒップとエルダーベリーを対象に、それぞれの果汁を分析しました。ローズヒップはアゼルバイジャンのギョイギョル国立公園で採取されたものです。
測定した項目は次のとおりです。
・総糖量、ビタミンC、ペクチン(果実に含まれる多糖類で、ジャムなどのとろみのもとになる成分)、フェノール化合物(植物に含まれるポリフェノールなどの成分群)
・酸味の指標である滴定酸度とpH
・カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素などのミネラル
分析には一般的に用いられる方法を使い、結果の信頼性は統計的な手法で確かめたとされています。
主な結果
論文によると、ビタミンCはローズヒップ果汁の方がはっきり多く、表では100立方センチメートルあたり18.6ミリグラムでした。エルダーベリー果汁は5.2ミリグラムです。反対に、総糖量はエルダーベリー果汁の方が多いと報告されています。pHには大きな差が見られませんでした。一方、滴定酸度はローズヒップ果汁の方が高く、著者らはローズヒップに有機酸が多いことを示すとしています。
ペクチンとフェノール化合物は、エルダーベリー果汁の方が多いと報告されました。フェノール化合物の量は、100立方センチメートルあたりエルダーベリー果汁で0.96グラム、ローズヒップ果汁で0.78グラムです。
ミネラルについて、著者らはエルダーベリーの方が全体として多いとまとめています。100立方センチメートルあたりのカリウムは、エルダーベリー果汁が556.3ミリグラム、ローズヒップ果汁が505.4ミリグラムでした。マグネシウムはそれぞれ420.2ミリグラムと320.1ミリグラム、ナトリウムは20.6ミリグラムと12.8ミリグラムです。鉄と銅もエルダーベリー果汁の方が多い一方、亜鉛はローズヒップ果汁の方が多いという結果でした。ヨウ素はローズヒップ果汁からは検出されず、エルダーベリー果汁では100立方センチメートルあたり2.8マイクログラムが確認されました。
研究が示すこと
この研究で、二つの野生果実の果汁は成分の特徴が異なることが報告されました。ローズヒップはビタミンCと酸に富み、エルダーベリーは糖やフェノール化合物、多くのミネラルに富んでいます。
著者らはこの違いを踏まえ、二つを組み合わせたブレンド果汁や飲料が有望だと提案しています。成分の構成がより充実し、風味のバランスも整った製品が作れるという考えです。このほか、ジャムやシロップ、天然の着色料など、さまざまな食品への利用も挙げています。
ただし、これらは成分分析にもとづく著者らの見通しです。実際の製品を作って評価したものではありません。また、抗酸化力やアントシアニン(赤紫色の色素)は今回の分析項目に含まれていません。それでもこの研究は、十分に使われてこなかった地域の野生果実について、基礎となる成分データを示した点に意味があります。
原著論文の著者・所属:Касумова А. А.、Набиев А. А.
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Касумова А. А., Набиев А. А.. ПЕРСПЕКТИВЫ ИСПОЛЬЗОВАНИЯ ШИПОВНИКА И БУЗИНЫ В ПИЩЕВОЙ ПРОМЫШЛЕННОСТИ. CyberLeninK (CyberLeninka) 2026-08-11. DOI: 10.24412/2712-8849-2026-8101-702-718. 原著ライセンス:CC BY.