著者の所属・活動拠点の国は、トルコ、アゼルバイジャンです。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ローズヒップはバラ属(Rosa)の植物がつける果実で、ビタミンC(アスコルビン酸)やポリフェノールなどの成分を豊富に含むことが知られています。ただし、果実の性質や含まれる成分は種や個体によって大きく異なることがあります。トルコのアナトリア地方はバラ属の遺伝的多様性が高い地域の一つで、多くの野生ローズヒップが自生しています。
研究チームは、同じ地域で同じ収穫期に採取した分類上異なる野生ローズヒップについて、果実の形や大きさ、色、成分、抗酸化能、個々のフェノール化合物を同じ枠組みでまとめて比べた研究は限られていると指摘しました。そこで本研究では、トルコ北東部アルトヴィン県で採取した野生ローズヒップを比較し、種の間の違いと同じ種の中での違いがどの程度あるかを調べることを目的としました。
何をどのように調べたか
研究チームは、アルトヴィン県アルダヌチ地区の標高およそ1210〜1260メートルの近接した場所から、4種のバラ属に当たる5つの試料を同じ日に採取しました。内訳は、ハマナス(R. rugosa)、イヌバラ(R. canina)、R. villosa、そして黒い実をつけるR. pimpinellifoliaの2試料です。種の同定は植物学者が形態の特徴に基づいて行ったもので、遺伝子による確認は行われていません。各試料は、複数の株から集めた果実を混ぜ合わせた「複合試料」として扱われました。
調べた項目は、果実の重さ・大きさ・形、色を数値で表す色彩測定、果汁に溶けている糖などの量の目安となる可溶性固形分、ビタミンC、総フェノール量、総フラボノイド量です。抗酸化能は、鉄を還元する力を測るFRAP法と、DPPHというラジカル(不安定な分子)を消去する力を測る方法の2通りで評価しました。さらに、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)という成分分離の手法を用い、26種類のフェノール化合物の標準品と照らし合わせて個々の成分を調べました。成分量は生の果実100グラム当たりで示されています。
主な結果
果実の性質には明らかな違いがありました。ハマナスの試料は平均4.45グラムと最も大きく、やや扁平な球形でした。一方、R. pimpinellifoliaの2試料は平均1.20グラムと0.65グラムの小さな球形の果実で、ほかの試料より明らかに暗い紫黒色を示しました。可溶性固形分は19.60%から53.83%まで幅があり、R. pimpinellifoliaの試料で高い値でした。
ビタミンCは生果実100グラム当たり78〜211ミリグラム、総フェノール量は905〜2902ミリグラム、総フラボノイド量は115〜510ミリグラムの範囲でした。いずれもR. pimpinellifoliaの1試料(RS5)が最も高く、もう1つのR. pimpinellifolia試料(RS4)がそれに続き、イヌバラの試料が最も低い値でした。抗酸化能も同じ傾向で、R. pimpinellifoliaの2試料がFRAP法で最も高い還元力を示し、DPPH法でも最も強いラジカル消去能を示しました。著者らは、これらの試料ではビタミンCとフェノール類がともに多かったため、抗酸化能に対するビタミンC単独の寄与は判別できなかったとしています。
個々の成分分析では、26種類の標準品のうち6種類が検出・定量されました。没食子酸とエラグ酸はすべての試料に含まれていた一方、カテキンはR. pimpinellifoliaの2試料だけで、エピカテキンはRS5だけで検出されました。ケルセチンは最初の3試料、ルチンは後半の3試料で見つかりました。また、同じR. pimpinellifoliaと同定された2試料の間でも、ルチンやエピカテキン、没食子酸、エラグ酸の量に大きな差があり、同じ種でも成分構成がかなり異なり得ることが示されました。
著者らは、検出されなかった成分が試料に存在しないとは言えないこと、また果実の色に関わるアントシアニンは標準品が入手できず定量できなかったことを注記しています。さらに、採取地点が近く環境条件も測定していないため、観察された違いを標高などの特定の環境要因に結びつけることはできないとしています。
研究が示すこと
この研究は、同じ地域・同じ時期に採取した野生ローズヒップでも、果実の性質や成分、抗酸化能に大きな幅があることを示しました。著者らはこれらの結果を野生ローズヒップの品質に関する基礎データと位置づけ、とくにフェノール量と抗酸化能が高かったR. pimpinellifoliaを、栄養補助的な用途の有力な候補と考えています。同時に、同じ種の中でも成分構成が異なっていたことから、ローズヒップを評価する際には種だけでなく個々の試料の違いにも目を向ける必要があることがうかがえます。
原著論文の著者・所属:Erol Tunca(Bee and Bee Products Application and Research Center, Karadeniz Technical University, Trabzon 61080, Türkiye; Department of Chemistry, Faculty of Science, Karadeniz Technical University, Trabzon 61080, Türkiye)、Ali Murat Kesemen(Artvin Vocational School, Artvin Çoruh University, Artvin 08000, Türkiye)、Meryem Kara(Çumra Vocational School, Selcuk University, Konya 42500, Türkiye)、Aziza Huseynova(Department of Biochemistry, Faculty of Medicine, Nakhchivan State University, Nakhchivan AZ7000, Azerbaijan)、Sevgi Kolaylı(Bee and Bee Products Application and Research Center, Karadeniz Technical University, Trabzon 61080, Türkiye; Department of Biochemistry, Faculty of Medicine, Nakhchivan State University, Nakhchivan AZ7000, Azerbaijan; Department of Chemistry, Faculty of Science, Karadeniz Technical University, Trabzon 61080, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Erol Tunca, Ali Murat Kesemen, Meryem Kara, et al. Comprehensive Phenolic Profiling, Antioxidant Bioactivity, and Pomological Evaluation of Wild Rosehip (Rosa spp.) Samples. Molecules 2026-09-26. DOI: 10.3390/molecules31193429. 原著ライセンス:CC BY.