著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタンです。

掲載誌:Bulletin of Shakarim University Technical Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

小麦粉やパンは、枯草菌の仲間など、さまざまな微生物による汚染を受けやすいことが課題とされています。研究チームは、植物に含まれる生理活性成分が持つ抗菌的な働きに注目しました。そして、ローズヒップ(野バラの一種)の葉から得た抽出物を全粒粉パンに加えると、パンの品質や日持ちがどう変わるかを調べました。

著者らによると、ローズヒップの葉の抽出物にはフラボノイド、タンニン、配糖体、アルカロイド、有機酸など、さまざまな種類の成分が含まれています。研究チームは、これらの成分が原料や製品の微生物学的な安全性を高める可能性があると考えました。そのうえで、パンの味や見た目、物理的・化学的な性質、微生物の数を総合的に評価しました。

どのように調べたか

抽出物には、2019年秋にカザフスタンのアルマトイ州の山間部で採取したローズヒップの葉と茎を使いました。洗浄・乾燥・粉砕したあと、50%エタノールに室温で20時間浸して成分を取り出し、減圧下で濃縮して乾燥した抽出物を得ています。

パンは全粒小麦粉と小麦粉を主な原料とし、抽出物を加えないものを対照としました。抽出物は生地に2〜6%の割合で加えました。研究チームは先行研究に基づき、4%を最適な添加量の候補として選んでいます。評価では、形や色、香り、味などを5段階で採点する官能評価(人の感覚による評価)を行いました。あわせて、水分、酸度、多孔度(パンの中身にある気泡の割合)を測定しました。

微生物の評価では、焼いたパンを室温(20〜25℃)、相対湿度40〜50%で4日間保存しました。そのあいだ、一般的な細菌の目安となる中温性好気性・通性嫌気性微生物の数と、カビや酵母の数を規格に沿った方法で調べました。

主な結果

官能評価では、抽出物4%のパンの総合点が4.86で、対照と同じく最も高い「非常に良い」に分類されました。評価者からは、形が整い、中身は弾力があって均一で、ほのかな甘みと特有の香りがあると評されました。一方、2%では味や香りが物足りないとされました。6%では色が濃い茶色になり、表面が粗く、酸味の強い好ましくない味になったと報告されています。

物理化学的な測定では、酸度にはほとんど変化がありませんでした。多孔度は、対照の54%に対して4%添加で67%、6%添加で69%と高くなりました。著者らは、抽出物の成分が生地のたんぱく質構造や発酵、ガスを保持する力に影響し、柔らかく軽いパンにつながったと説明しています。保存中の鮮度の評価でも、抽出物を加えたパンは対照より高い値を示したと報告されています。また、4%添加のパンでは、ビタミンC、レチノール(ビタミンAの一種)、トコフェロール(ビタミンEの一種)の含有量が対照より高かったとされています。

微生物の結果では、対照のパンは24時間後には細菌が検出されませんでした。しかし48時間後の測定では1グラムあたり4.5×10³個となり、96時間後には5×10³個に達しました。カビについても、対照では保存2日目(48時間後)に出現が報告されています。この時点の値は1グラムあたり10個未満とわずかでしたが、72時間後、96時間後にはさらに多く検出されました。2%添加のパンでも細菌とカビが検出され、細菌数は対照と大きくは変わらなかったと報告されています。これに対し、4%と6%添加のパンでは、96時間の保存期間を通じて細菌もカビも検出されませんでした。

研究が示すこと

著者らは、ローズヒップの葉の抽出物に含まれるフェノール化合物やフラボノイド、タンニンなどが、微生物やカビの増殖を抑えたと解釈しています。それによって、パンの微生物学的な安定性が高まったという見方です。そのうえで、4%添加の全粒粉パンの保存可能期間は72時間から96時間に延びたと結論づけています。

この研究は、植物の葉から得た抽出物を適切な量でパンに加えると、食味を損なわずに保存中の微生物の増殖を抑えられる可能性を示しました。これは実験室規模の試作による結果です。同時に、加える量が多すぎると味や見た目が損なわれることも示されており、添加量の見極めが重要であることがうかがえます。

原著論文の著者・所属:I. N. Kurmanbayeva(Almaty Technological University)、Zh. S. Nabiyeva(Almaty Technological University)、S. E. Ibraimova(Almaty Technological University)、R. A. Izteliyeva(Almaty Technological University)、A. N. Serikbaeva(Almaty Technological University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):I. N. Kurmanbayeva, Zh. S. Nabiyeva, S. E. Ibraimova, et al. THE EFFECT OF ROSE HIP LEAF EXTRACT ON THE QUALITATIVE AND MICROBIOLOGICAL INDICATORS OF WHOLE GRAIN BREAD. Bulletin of Shakarim University Technical Sciences 2026-07-29. DOI: 10.53360/2788-7995-2026-2(22)-48. 原著ライセンス:CC BY.