著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。
掲載誌:Proceedings of the Southwest State University Series Engineering and Technologies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
植物に含まれる生理活性物質(体に何らかの働きを持つ可能性がある成分)は、抗酸化成分やビタミン、フラボノイドの供給源として、食品や医薬などの分野で関心を集めています。論文によると、野生や栽培の果実から得た抽出物は、これまでも機能性飲料やバルサム(薬草酒の一種)などの原料として使われてきました。一方で、抽出が時間とともにどう進むかを詳しく追った研究や、複数の乾燥果実を混ぜて抽出したときに成分の取れ方がどう変わるかを調べた研究は少ないと、著者らは指摘しています。
そこで研究チームは、ロシア・クルスク州に自生するバーベリー(セイヨウメギ)、ローズヒップ(野バラの一種の実)、サンザシの果実を対象にしました。二つの抽出方法で得た抽出液の成分量を比べたうえで、乾燥果実を混ぜて抽出した場合の値と照らし合わせ、相乗効果があるかどうかを確かめることを目的としました。ここでいう相乗効果とは、混合物から取り出せた成分量が、果実ごとに抽出した値から計算した理論上の量を上回ることを指します。
何をどう調べたか
果実は2025年9〜10月にクルスク州シチグリで採取されました。傷のない完熟果を選んで洗浄し、細かく砕いたうえで、成分が熱で壊れにくい温度で乾燥させました。乾燥前の果実の水分量は、バーベリーが約78%、サンザシが約65%、ローズヒップが約61%と報告されています。
抽出方法は二つです。一つは浸漬法(マセレーション)で、果実を溶媒に漬け、光を避けて一定期間置きます。溶媒には70%エタノール(2週間)と植物油(4週間)を使いました。もう一つはソックスレー抽出で、溶媒を沸騰させて循環させ、果実から成分を連続的に洗い出す装置を用います。こちらでは70%エタノールを使いました。
抽出液に含まれるビタミンCは滴定で、フラボノイドとサポニン(いずれも植物に多い成分群)の総量は、発色反応を利用した分光光度法で測りました。さらに、ソックスレー抽出では成分が抽出液にたまっていく速さを時間を追って記録しました。混合試験では、3種のうち2種を等量ずつ混ぜた組み合わせと、3種を1:1:1などの比率で混ぜた組み合わせを用意しています。油の抽出液については、光と酸素にさらす人工的な劣化試験を4週間行い、酸化の進み具合を示す過酸化物価と酸価を追いました。
主な結果
抽出方法による違いは、見た目の段階から表れました。浸漬法の抽出液はいずれも透明な黄色でした。一方、ソックスレー抽出の液はローズヒップで鮮やかな黄色、サンザシで黄橙色、バーベリーで鮮やかな橙色になりました。著者らは、この色の違いがカロテノイド色素が抽出液に移ったことを示している可能性があるとしています。
成分量を比べると、沸騰温度で抽出するソックスレー法ではフラボノイドとサポニンが多く取れました。一方、ビタミンCは浸漬法より少なくなっています。研究チームは、加熱によってビタミンCが酸化したためと説明しています。ただし、抽出の進み方を記録したところ、ソックスレー抽出を3サイクル行っても成分量は頭打ちにならず、ビタミンCもフラボノイドもまだ取り切れていないことが分かりました。
果実を2種ずつ混ぜた場合は、多くの組み合わせで、取れた量が個別の値からの理論値を上回りました。相乗効果が最も大きかったのはビタミンCでした。フラボノイドについては、バーベリーとサンザシの組み合わせで約1.5倍に増えた一方、バーベリーとローズヒップの組み合わせでは理論値に届きませんでした。サポニンの増加はわずかでした。
3種を混ぜた場合、多くは理論値をわずかに上回る程度で、相乗効果は2種の場合より小さくなりました。例外として、3種を1:1:1で混ぜたときのフラボノイドは理論値のほぼ2倍に達しました。反対に、2:2:1の配合ではビタミンCが理論値に届かず、著者らは抽出が妨げられたか、混合物中でビタミンCが不安定になった可能性を挙げています。また3種混合では、抽出初期の速度が上がり、成分量が頭打ちに達するまで抽出が進んだと報告されています。
油の抽出液の劣化試験では、ローズヒップの油抽出液が、何も加えていない油やほかの果実の油抽出液よりも明らかに酸化しにくい結果となりました。著者らは、ローズヒップに含まれる油に溶けやすい天然の抗酸化成分によるものと考えています。
この研究が示すこと
この研究は、同じ果実でも抽出方法によって取れる成分の種類と量が変わることを示しました。加熱を伴う抽出はフラボノイドやサポニンを多く引き出す一方で、ビタミンCを減らす方向に働くということです。さらに、果実を混ぜて抽出すると、組み合わせや比率によって成分の取れ方が理論値より増えることも減ることもありました。原料の配合そのものが抽出の効率を左右しうるという、実験条件の中での観察結果といえます。
原著論文の著者・所属:A. D. Tayvorba(Southwest State University)、E. A. Zyulina(Southwest State University)、S. D. Pozhidaeva(Southwest State University)、С. Д. Пожидаева(Юго-Западный государственный университет)、А. Д. Тайворба(Юго-Западный государственный университет)、Е. А. Зюлина(Юго-Западный государственный университет)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. D. Tayvorba, E. A. Zyulina, S. D. Pozhidaeva, et al. Evaluation of the synergistic properties of biologically active compounds extracted from barberry, rosehip, and hawthorn fruits to select a composition with the best yield. Proceedings of the Southwest State University Series Engineering and Technologies 2026-08-08. DOI: 10.21869/2223-1528-2026-16-2-158-175. 原著ライセンス:CC BY.