著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタン、イタリアです。

掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

健康に役立つ成分を多く含む食品をつくろうとすると、苦みや渋みが出るなどして、食べやすさが損なわれがちです。著者らは、とくに子どもの果物・野菜の摂取不足が栄養面だけでなく味の好みの問題でもあることを背景に挙げ、食べやすさと栄養的な価値を両立させるための配合の検討が欠かせないとしています。

研究チームが注目したのは、ビタミン類やポリフェノールなどの抗酸化成分を含むことで知られるローズヒップ(ヨーロッパ原産のバラ、ロサ・カニーナの果実)です。ローズヒップを粉末で加えるか抽出物で加えるかによって食品の性質がどう変わるかは、これまでの研究で結果が分かれており、対象となる食品の中で直接比べる必要があると著者らは述べています。そこで本研究では、カボチャ、リンゴ、はちみつ、クルミでつくるペースト状の前菜を土台に、ローズヒップの形態と配合量が味の評価、栄養成分、抗酸化成分、微生物面の安全性、そして消化の過程での成分の溶け出し方に与える影響を調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、同じ乾燥果実から2種類の添加物を用意しました。一つは果実を細かく砕いた粉末、もう一つは70%エタノールと超音波を用いて成分を取り出し、エタノールを除いた抽出物です。著者らは、抽出物には油に溶けやすい成分などが移る一方、粉末には食物繊維などを含む果実全体が残るため、両者の成分に違いが出ると予想しました。

これらを前菜に重量で1%、3%、5%加え、ローズヒップを加えない対照品と合わせて計7種類の試料をつくりました。ローズヒップを増やした分だけカボチャとリンゴを同じ割合で減らしているため、著者らは、配合量の影響は「ローズヒップが増えたこと」と「土台の材料が減ったこと」を合わせた効果であり、両者を切り分けることはできないと注意を添えています。

味の評価には52人の評価者が参加し、味、香り、食感、総合的な好ましさを「非常に嫌い」から「非常に好き」までの9段階で採点しました。あわせて、たんぱく質・炭水化物・脂質、水溶性の抗酸化成分、ビタミンA(ここではレチニルパルミチン酸という特定の形の量)とビタミンE(4種類のトコフェロールの合計)を測定し、微生物の数が規制の基準内に収まるかも確認しました。

さらに、口、胃、小腸での消化を試験管内で再現する模擬消化試験を行いました。これは人の体内での吸収を直接測るものではなく、各段階で食品から消化液中にどれだけの成分が溶け出すか(バイオアクセシビリティ)を調べる方法です。ポリフェノールの総量、フラボノイドの総量、そして2種類の方法で測った抗酸化の働きの強さを、段階ごとに追跡しました。

主な結果

味の評価では、粉末か抽出物かにかかわらず、配合量が評価を大きく左右しました。1%と3%では高い評価が保たれた一方、5%では味と食感の点数が有意に下がりました。

栄養成分では、たんぱく質、炭水化物、脂質、抗酸化成分、ビタミンA・Eで、形態と配合量の組み合わせによって影響の現れ方が異なりました。ビタミンAは配合量が1%から5%に増えるにつれて、抽出物では36%、粉末では41%減りました。著者らはこれを、ローズヒップが土台のカボチャとリンゴの一部と入れ替わったことによる「薄まり」の結果と解釈しています。また、同じ配合量で比べると、粉末を加えた試料のほうが常にビタミンAが多く残っていました。

抗酸化成分は粉末のほうが多く、3〜5%の配合で1グラムあたり1.19〜1.33ミリグラムと、抽出物の0.87〜0.92ミリグラムを上回りました。一方、ビタミンEは抽出物のほうが配合量に伴う増え方が大きく、相対的な増加は約15%でした。

模擬消化試験では、ポリフェノールの総量と、ラジカル(不安定な分子)を消す働きのほとんど(95%超)が、口と胃の段階で溶け出していました。これに対し、フラボノイドと、物質を還元する働きの強さは、消化が進むにつれて徐々に増えていき、この二つについてはローズヒップを加えた試料が一貫して対照品を上回りました。微生物の数はすべての試料で規制の基準内にあり、ローズヒップの形態や配合量による悪影響は見られませんでした。

研究が示すこと

著者らは、ローズヒップの形態と配合量の組み合わせによって、食べやすさ、栄養成分、消化中の成分の溶け出し方の間に「どれかを取ればどれかが下がる」関係が生じると結論づけています。味の面では1〜3%の配合が最も好ましく、そのうえで抗酸化成分やビタミンAを重視するなら粉末、ビタミンEを重視するなら抽出物というように、目的に合わせて形態を選ぶべきだとしています。同じ素材でも加え方によって食品の性質が変わることを、一つの食品の中で具体的に比べて示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Zhanar Nabiyeva(Department of Applied Biotechnology, Almaty Technological University; Research Institute of Food Safety, Almaty Technological University)、Abdyssemat Samadun(Research Institute of Food Safety, Almaty Technological University)、Diana Abdraimova(Department of Technology of Bread Products and Processing Industries, Almaty, Kazakhstan)、Dinara Tlevlessova(Department of Food Technology, Almaty Technological University)、Serena Carpentieri(Department of Industrial Engineering, University of Salerno)、Gulnur Daribayeva(Research Institute of Food Safety, Almaty Technological University)、Nazym Toleukhanova(Research Institute of Food Safety, Almaty Technological University)、Altynay Zhanayeva(Department of Sciences, Almaty Technological University)、Giovanna Ferrari(Department of Industrial Engineering, University of Salerno; ProdAl Scarl, University of Salerno)、Talgat Kulazhanov(Research Institute of Food Safety, Almaty Technological University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhanar Nabiyeva, Abdyssemat Samadun, Diana Abdraimova, et al. Optimizing rosehip form and concentration in a plant-based appetizer: balancing sensory acceptability with nutrient composition and phenolic bioaccessibility during simulated digestion. Frontiers in Food Science and Technology 2026-10-23. DOI: 10.3389/frfst.2026.1980604. 原著ライセンス:CC BY.