著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタン、イタリアです。
掲載誌:Functional Foods in Health and Disease
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
果物や野菜を使ったペーストは、植物由来の成分を食品に取り入れる「土台」として使えます。一方で、別の植物素材を加えると、酸味、水分の状態、とろみ、口当たりなどが変わり、食べる人の評価にも影響します。研究チームは、ビタミンCや有機酸、ペクチンなどを含むローズヒップ(ドッグローズの果実)に着目しました。
著者らが調べたのは、ローズヒップを粉末で加えるか抽出物で加えるか、どの程度の量を加えるか、そしてペーストの土台となるカボチャとリンゴの比率をどうするかによって、ペーストの物理化学的な性質、変形のしやすさ、味や香りの好ましさがどう変わるかです。論文は、この研究が配合と食品としての性能を扱うものであり、健康への作用や臨床的な効果は測定していないと明記しています。
どのように調べたか
研究チームは、蒸して柔らかくしたカボチャとリンゴをピューレにして濃縮し、蜂蜜13%と砕いたクルミ12%を加えたペーストを作りました。カボチャとリンゴの比率は70対30、50対50、30対70の3通りです。ここに、乾燥ローズヒップを細かく挽いた粉末か、超音波を使ってエタノールで抽出し濃縮した抽出物を、製品全体の重さに対して1%、3%、5%のいずれかの量で加えました。各配合は5回に分けて独立に製造されています。
測定したのは、pH、滴定酸度(含まれる酸の総量の目安)、水分含量、水分活性(食品中の水がどれだけ自由に動ける状態にあるかを示す指標)、見かけの粘度、そして押しつぶしたときの変形です。変形は、押した力を除くと元に戻る「弾性変形」と、戻らずに残る「塑性変形」に分けて評価しました。さらに、カボチャとリンゴが同量の配合について、52人の成人が味、香り、食感、総合的な好ましさを9段階で評価しました。
なお、抽出物の添加量は固形分60%の濃縮抽出物の重さで計算されています。そのため、同じ添加率でも粉末の方が多くの固形分を含みます。著者らは、二つの形態を比べる際にはこの違いを考慮する必要があると述べています。
主な結果
統計モデルが有意になったのは、pH、水分活性、粘度、水分含量の4項目でした。pHはカボチャの割合と強く関連し(相関係数0.882)、カボチャが多い配合ほど酸性が弱くなりました。粘度と水分含量も、カボチャの割合が高いほど大きくなる傾向がありました。一方、滴定酸度と変形に関するモデルは有意でなく、著者らはこれらを傾向として記述するにとどめています。変形はどの配合でもほとんどが元に戻らない塑性変形でした。
添加の形態による違いもみられました。粉末を加えた配合は、抽出物を加えた配合に比べて、水分活性(平均0.912対0.834)と滴定酸度(平均72対53)が高く、水分含量(平均57.6%対63.6%)は低くなりました。ただし著者らは、この差には形態そのものだけでなく、両者が持ち込む固形分や水分の量の違いも関わっており、形態だけに原因を帰すことはできないとしています。
官能評価では、配合の違いがすべての評価項目に有意な影響を与えました。総合的な好ましさが最も高かったのは粉末3%の配合(9段階で平均8.15)で、抽出物3%の配合(7.96)との差は有意ではありませんでした。どちらもローズヒップを加えない対照(7.25)を上回りました。添加量を5%に増やすと好ましさは下がり、粉末で7.44、抽出物で7.13となりました。抽出物5%の配合は、どの項目でも対照と差がありませんでした。分析の結果、好ましさへの影響は添加の形態よりも添加量の方がはるかに大きいことが示されました。
研究が示すこと
著者らは、カボチャとリンゴの比率、ローズヒップの形態、そしてとりわけ添加量が、このペーストのpH、水分の状態、粘度、好ましさを調整するうえで実際に使える配合上の要素であり、ローズヒップは3%程度が最も受け入れられやすいと結論づけています。粉末か抽出物かよりも、どれだけ加えるかが評価を左右したという点が、この研究の中心的な知見です。
一方で、この研究はあくまで配合と食品としての性質を調べたものです。ローズヒップ由来成分がどれだけ残るか、体内でどの程度利用されるか、健康への作用や安全性については測定されておらず、著者らは健康に関わる機能をうたうには別の研究が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Zhanar Nabiyeva(Almaty Technological University ; Almaty , 050012 , Kazakhstan;)、Talgat Kulazhanov(Almaty Technological University ; Almaty , 050012 , Kazakhstan;)、Gulnur Daribayeva(Almaty Technological University ; Almaty , 050012 , Kazakhstan;)、Dinara Tlevlessova(Almaty Technological University ; Almaty , 050012 , Kazakhstan;)、Bibipatyma Yerenova(Kazakh National Agrarian Research University , Almaty , 050010 , Kazakhstan;)、Aigerim Baibekova(Almaty Technological University ; Almaty , 050012 , Kazakhstan;)、Serena Carpentieri(Department of Industrial Engineering , University of Salerno , Salerno , 84084 , Italy;)、Giovanna Ferrari
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhanar Nabiyeva, Talgat Kulazhanov, Gulnur Daribayeva, et al. Development of a rosehip-enriched pumpkin–apple functional food matrix: Linking additive form to physicochemical, rheological, and sensory properties. Functional Foods in Health and Disease 2026-10-19. DOI: 10.31989/ffhd.v16i10.2124. 原著ライセンス:CC BY.