著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、コバルトなどの微量ミネラルは、家畜が少量ながら必ず必要とする栄養素です。酵素の働きを助け、体内の酸化のバランスや免疫細胞の機能にも関わります。植物由来の飼料だけでは不足しやすいため、家畜の飼料には微量ミネラルが添加されます。広く使われているのは硫酸塩などの無機の形のミネラルで、安価で手に入りやすい一方、消化管を通る間にほかの物質と結びつき、体に利用されにくくなることがあると論文は説明しています。

ウシやヒツジなどの反すう動物は、第一胃(ルーメン)という大きな胃に多くの微生物をすまわせ、飼料を発酵させています。著者らによると、ミネラルが第一胃で溶け出すと微生物の働きに影響することがあり、量が多すぎると繊維の消化を妨げるおそれもあります。そこで、ミネラルを被覆材で包み、第一胃を素通りさせて腸で吸収させる方法が考えられています。

研究チームは、被覆した複合微量ミネラルが、第一胃の発酵や細菌の構成、免疫、と畜時の成績、肉質にどのような影響を与えるかを調べました。論文は、とくに肉質や第一胃発酵への影響はこれまであまり調べられていなかったと指摘しています。

どのように調べたか

実験には、生後4か月、体重約30キロの雲南半細毛種の雄ヒツジ30頭を使いました。ヒツジは10頭ずつ3群に分けられ、それぞれ異なる飼料を与えられました。1群目は、微量ミネラルを追加しない基本の飼料を食べました。2群目は、基本の飼料に硫酸鉄や硫酸銅などの無機ミネラルを加えた飼料を食べました。3群目は、基本の飼料に被覆ミネラルを飼料1キロあたり400ミリグラム加えた飼料を食べました。2群目と3群目の飼料には同じ量の微量ミネラルが含まれていました。

被覆ミネラルは、消化されにくいでんぷん、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロースを組み合わせた材料で包んだものです。研究チームの以前の研究では、このミネラルの約66%が第一胃を素通りすると報告されています。添加量の400ミリグラムは、成長と免疫機能をもとにした予備試験で選ばれました。

試験期間は、慣らしの10日間を含めて40日間でした。試験の終了後、研究チームはさまざまな項目を測定しました。たとえば、肝臓に蓄えられたミネラルの量、血液中の免疫や抗酸化に関わる成分、と畜時の成績、肉質を調べました。肉質の指標には、肉を切るのに必要な力(せん断力)や、肉から出る肉汁の量などが含まれます。さらに、第一胃の液を採取し、発酵によってできる物質と、そこにすむ細菌の構成を遺伝子解析で調べました。

主な結果

肝臓に含まれる鉄、銅、マンガン、亜鉛の量は、被覆ミネラル群が最も多く、無機ミネラル群がそれに続き、ミネラルを追加しない群が最も少なくなりました。著者らは、被覆によってミネラルが腸で吸収されやすくなったことを示す結果と考えています。

と畜時の生体重と枝肉の重さには、群の間で差がありませんでした。一方、体重に占める枝肉の割合(と畜歩留まり)は、ミネラルを加えた2群で高くなりました。ただし、無機ミネラル群と被覆ミネラル群の間には差がありませんでした。肉のせん断力は、ミネラルを加えた2群で低くなり、とくに被覆ミネラル群が最も低い値でした。著者らはこの結果を、肉がやわらかくなったことを示すものと解釈しています。肉のpH、加熱による重量の減少、色には差がありませんでした。

血液中の免疫グロブリンA、G、Mと、免疫に関わる補体C3とC4は、ミネラルを加えた群で高くなりました。この増加は、被覆ミネラル群で最も大きくなりました。抗酸化酵素のカタラーゼは増え、酸化による傷害の目安とされるマロンジアルデヒドは減りました。どちらの変化も、被覆ミネラル群で無機ミネラル群より大きいものでした。

第一胃の発酵では、ミネラルを加えた2群で変化が見られました。微生物がつくるタンパク質と揮発性脂肪酸の総量が増え、とくに酢酸や酪酸などが増えました。ただし、被覆ミネラル群と無機ミネラル群の間には差がありませんでした。著者らは、被覆ミネラルのおよそ3分の1は第一胃で溶け出していたことが、その一因かもしれないと述べています。

第一胃の細菌については、群内での種類の豊かさ(多様性)には差がありませんでした。一方、細菌の構成全体を比べると、被覆ミネラル群はほかの2群と分かれる傾向を示しました。ミネラルを追加しない群と比べ、被覆ミネラル群ではプレボテラ1、ルミノコッカス1、セレノモナス1という細菌のグループの割合が増えました。逆に、クリステンセネラ科R-7群とブラディリゾビウムの割合は減りました。さらに相関解析では、ルミノコッカス1などの割合が高いほど、と畜歩留まりや抗酸化・免疫の指標が高く、せん断力が低いという関係が見られました。

研究から伝わること

この研究は、同じ量の微量ミネラルを与えた場合でも、被覆した形のほうが無機の形より、肝臓へのミネラルの蓄積、免疫や抗酸化の指標、肉のやわらかさの指標で良い結果を示したと報告しています。著者らは、被覆ミネラルによる第一胃の細菌の変化が、こうした体の変化と結びついている可能性を示しました。ただし、これは相関解析にもとづく推測です。細菌の変化が肉質を改善させたという因果関係を確かめたものではありません。

論文は限界として、飼育期間が短く、使った動物の数も限られていることを挙げています。そのうえで研究チームは、ヒツジの枝肉の特性や肉質、健康を高める栄養上の方法として、被覆ミネラルの利用を支持する根拠が得られたとまとめています。

原著論文の著者・所属:Shoupei Zhao(Animal Nutrition Institute, Sichuan Agricultural University)、Xiaoqi Zhao(Yunnan Animal Science and Veterinary Institute)、Yifan Ren(Animal Nutrition Institute, Sichuan Agricultural University)、Jia Zhou(Chongqing Academy of Animal Sciences)、Xiaojun Ni(Yunnan Animal Science and Veterinary Institute)、Mingyu Cao(Animal Nutrition Institute, Sichuan Agricultural University)、Bai Xue(Animal Nutrition Institute, Sichuan Agricultural University)、Guobo Quan(Yunnan Animal Science and Veterinary Institute)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shoupei Zhao, Xiaoqi Zhao, Yifan Ren, et al. Coated trace minerals improved carcass characteristics and meat quality in growing sheep in association with enhanced antioxidant status and shifts in the rumen microbiota. Frontiers in Microbiology 2026-08-25. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1942183. 原著ライセンス:CC BY.