著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Veterinary Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:使われにくい副産物を飼料にする

パーム核ミールは、アブラヤシの実を加工したあとに残る副産物です。たんぱく質や繊維を含みますが、繊維が多いことと、消化を妨げる「β-マンナン」という成分を含むことから、捨てられたり安値で売られたりすることが多いと著者らは説明しています。捨てられたパーム核ミールは分解の過程でメタンを出し、長期保管による浸出水が土や水を汚すおそれもあるとされます。

研究チームは、微生物で発酵させればパーム核ミールの繊維やβ-マンナンが分解され、乳牛の飼料としての価値が高まると考えました。そのうえで、乳牛の飼料によく使われる小麦ふすま(小麦を製粉したときに出る外皮などの副産物)を発酵パーム核ミールに置き換えた場合に、乳生産、消化、第一胃(牛の4つある胃のうち最初の大きな胃で、微生物が飼料を発酵させる場所)の働き、血液中の炎症の指標がどう変わるかを調べました。

何をどのように調べたか

発酵パーム核ミールは、加熱殺菌したパーム核ミールに小麦の製粉副産物(ふすまより細かい部分)と大豆糖蜜を加え、乳酸菌、酵母、枯草菌の3種類の微生物を混ぜて、空気を断った状態で約33℃、96時間発酵させて作られました。乳酸菌は酸性化と安定化、酵母は発酵の促進と食べやすさの改善、枯草菌は酵素を出して繊維やβ-マンナン、たんぱく質を分解する役割を担うとされています。

試験では、泌乳中のホルスタイン牛に、小麦ふすまを含む飼料、発酵させていないパーム核ミールを含む飼料、発酵パーム核ミールを含む飼料の3種類を与えて比べました。3種類の飼料はエネルギーとたんぱく質の水準がそろうよう設計されています。小麦ふすまは飼料の乾物中で5.86%の割合で、これを丸ごと置き換える形です。牛ごとの差や時期による差を統計的に抑えるため、同じ牛が期間ごとに異なる飼料を順番に食べる「ラテン方格法」と呼ばれる計画が使われ、1期間は28日間でした。

研究チームは、乳量や乳成分、食べた量、消化率、第一胃内の発酵産物、血液中の炎症・免疫の指標に加え、第一胃の細菌の構成と、第一胃液に含まれる代謝物(微生物などが作り出す小さな分子)の網羅的な分析も行いました。

主な結果

発酵パーム核ミールは、発酵させていないパーム核ミールに比べて繊維成分とβ-マンナンが少なく、溶けやすいたんぱく質や小さなペプチドなどが多くなっていました。第一胃の中で分解されやすい割合も高まっていたと報告されています。

発酵パーム核ミールを与えた牛は、3つの群の中で最も多く飼料を食べました。乳量などの乳生産や消化率は、発酵させていないパーム核ミールの群より良好で、多くの項目で小麦ふすまの群と同程度でした。一方、発酵させていないパーム核ミールの群は、乳脂肪の割合が高いものの乳たんぱく質の割合は低く、消化率も他の2群より低い結果でした。ただし、食べた量あたりの乳生産(飼料効率)は群の間で差がなく、著者らは、発酵パーム核ミールは乳の総生産量を増やしたものの、飼料効率を高めたわけではないと述べています。

第一胃では、発酵パーム核ミールの群で、微生物が作るたんぱく質や、牛のエネルギー源となる揮発性脂肪酸(酢酸やプロピオン酸など)の量が多くなりました。酢酸とプロピオン酸の比率は変わらなかったため、著者らは発酵の型が大きく変わったのではなく、発酵の全体量が高まったと解釈しています。

血液では、発酵させていないパーム核ミールの群で、炎症に関わる物質(TNF-αやIL-8)が多く、免疫に関わる抗体の一種(IgG)が少ない結果でした。発酵パーム核ミールの群では、これらの値は小麦ふすまの群と同程度でした。著者らは、第一胃で分解しきれなかったβ-マンナンが炎症を引き起こし、それが生産性の低下に関わった可能性があるとの仮説を示しています。

第一胃の細菌の構成も飼料によって異なり、発酵パーム核ミールの群では小麦ふすまの群に比べて、繊維を分解する細菌のグループなどが多くなっていました。第一胃液の代謝物では10種類が群の間で異なり、プリン(遺伝物質などの構成要素となる物質)に関わる代謝などに違いが見られました。

研究が示すこと

著者らは、エネルギーとたんぱく質を適切に調整した飼料であれば、発酵パーム核ミールは泌乳中のホルスタイン牛の飼料で小麦ふすまや未発酵のパーム核ミールを完全に置き換える候補になりうると結論づけています。小麦ふすまの供給や価格が不安定なときに飼料設計の選択肢を広げ、副産物の活用にもつながる可能性があるとしています。

一方で著者らは、発酵前に小麦の製粉副産物と大豆糖蜜を加えているため、未発酵品との違いは発酵だけの効果ではなく、原料の調整との組み合わせとして見るべきだと注意を促しています。また、細菌の変化は短期間の反応として解釈すべきこと、分析した試料数では小さな差を見逃した可能性があること、費用と効果の正式な分析は行っておらず、あらゆる条件で飼料費が下がるとは言えないことも述べています。この研究は、捨てられがちな副産物を発酵によって乳牛の飼料として使いやすくできる可能性を、乳生産と第一胃の両面から示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Xianglong Zhang(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Xitong Guan(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Jiahui Cao(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Yuxuan Yan(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Yueyang Zhao(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Hongxiang Mao(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China; Wilmar (Shanghai) Biotechnology Research and Development Center Co., Ltd., Shanghai 200137, China)、Lizhou Ma(Wilmar (Shanghai) Biotechnology Research and Development Center Co., Ltd., Shanghai 200137, China)、Lingling Huang(Wilmar (Shanghai) Biotechnology Research and Development Center Co., Ltd., Shanghai 200137, China)、Xiangfang Tang(State Key Laboratory of Animal Nutrition, Institute of Animal Science, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing 100193, China)、Shunjin Jiang(Guangdong Rongda Biology Co., Ltd., Qingyuan 511510, China)、Yang Li(College of Animal Science and Technology, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China; Guangdong Rongda Biology Co., Ltd., Qingyuan 511510, China; State Key Laboratory of Animal Nutrition, Institute of Animal Science, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing 100193, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xianglong Zhang, Xitong Guan, Jiahui Cao, et al. Effects of Fermented Palm Kernel Meal on Lactation Performance, Rumen Fermentation, Rumen Microbiota, and Rumen Metabolomic Profiles in Holstein Dairy Cows. Veterinary Sciences 2026-08-03. DOI: 10.3390/vetsci13080777. 原著ライセンス:CC BY.