著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Animals : an open access journal from MDPI
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の背景と目的
欧州ではウサギ肉の消費が減り、ケージを使う集約的な飼育への社会的な懸念も高まっています。それでも欧州で生産されるウサギの9割以上は、現在も金網ケージで飼育されています。こうした状況を受け、ケージを使わない飼育方式への関心が高まっています。著者らは、そうした代替方式は従来の生産を置き換えるものではなく、消費者に別の選択肢を示すものだと位置づけています。
ウサギ肉は脂肪が少なく、多価不飽和脂肪酸、とくにn-3系脂肪酸の割合が高いことが知られています。また、新鮮な牧草を食べるとウサギ肉のn-3系脂肪酸が増えることも報告されています。一方で、放牧されたウサギが実際にどれだけ草を食べ、それが季節によってどう変わるのかについては、データが限られていました。
そこで研究チームは、屋内ケージ飼育と屋外放牧飼育という二つの方式が、育成期のウサギの成長と肉の栄養特性に与える影響を比較しました。あわせて放牧飼育では、ウサギが食べた草の量と、春と秋という季節による違いも調べました。
どのように調べたか
実験は2025年の春と秋に、イタリアで行われました。生後30日で離乳したニュージーランドホワイト種のウサギ160匹(雌雄同数)を使い、季節ごとに40匹ずつを屋内飼育群と屋外飼育群に無作為に割り当てました。屋内飼育群は、温度18℃に保たれた商業用施設で1匹ずつケージに入れて飼育しました。屋外飼育群は、移動式の小屋に10匹ずつ入れ、各小屋を50平方メートルの放牧地とつなぎました。これはウサギ1匹あたり5平方メートルにあたります。放牧地は、イネ科・マメ科・キク科の植物を主とする自然の草地で、ウサギは24時間自由に出入りできました。
どちらの飼育方式でも、水と市販の固形飼料(ペレット)はいつでも食べられるようにしました。つまり両群の違いは、屋外群だけが牧草も食べられる点にあります。草の摂取量は、ウサギが入れないよう囲った区画の草の伸び方と、放牧後に残った草の量を比べて推定しました。
ウサギは生後80日で出荷・処理され、研究チームは体重の増え方、体脂肪の量、背中の筋肉の成分を調べました。筋肉の成分としては、脂肪酸の組成、抗酸化作用をもつビタミンEの一種であるトコフェロールの量、脂質がどれだけ酸化しているかを測りました。
主な結果
まず、飼料と牧草の性質には大きな違いがありました。ウサギが利用できるエネルギー(可消化エネルギー)は、乾物1キログラムあたりペレットが11.26メガジュールでした。これに対し牧草は、春が9.06メガジュール、秋が7.51メガジュールと低い値でした。脂肪酸の組成も異なり、ペレットではn-6系のリノール酸が多いのに対し、牧草ではn-3系のα-リノレン酸の割合が高くなっていました。
成長の面では、ケージ飼育のウサギのほうが最終体重が重く、1日あたりの体重増加量はケージ飼育が41.55〜41.62グラム、放牧飼育が34.38〜40.22グラムでした。放牧飼育のなかでは、春のほうが秋より成長が良好でした。著者らは、その理由を春に草をより多く食べてエネルギー摂取量が多かったためと説明しています。なお、死亡率には飼育方式による差も季節による差も見られませんでした。
肉の成分では、放牧飼育のウサギは筋肉中の脂肪が少なく、筋肉100グラムあたりの脂肪はケージ飼育の約1.75グラムに対して0.64〜0.72グラムでした。脂肪酸の面では、放牧飼育のウサギ、とくに春のウサギで、n-3系脂肪酸が多くなっていました。春の放牧群とケージ群を比べると、EPA(エイコサペンタエン酸)は筋肉100グラムあたり13.5ミリグラム対1.0ミリグラム、n-3系脂肪酸の合計は93.6ミリグラム対38.6ミリグラムでした。DHA(ドコサヘキサエン酸)も、放牧群の16.8〜19.2ミリグラムに対し、ケージ群は0.7ミリグラムでした。n-6系とn-3系の比率は、ケージ飼育の約11.8に対して放牧飼育では約1.8と大きく下がりました。脂質の組成から算出される栄養指標も、放牧飼育のほうが良好な値を示しました。
不飽和度の高い脂肪酸は一般に酸化しやすい性質があります。しかし放牧飼育のウサギでは、肉のトコフェロールがケージ飼育の約1.5倍に増える一方で、脂質酸化の指標には差が見られませんでした。研究チームは、牧草から取り込んだ抗酸化成分が肉の酸化を抑えたと解釈しています。
研究が示すこと
この研究から、放牧飼育では決まった出荷日齢での体重がケージ飼育より軽くなる一方で、肉は脂肪が少なく、n-3系脂肪酸とトコフェロールが多い組成になることが示されました。著者らは、こうした肉の栄養的な性質の違いを生む主な要因として牧草の摂取を挙げています。
ただし本研究では、動物福祉の指標やウサギの運動量は直接測っていません。放牧飼育で体重が軽く脂肪が少なかった理由として挙げられた運動量の増加は、著者らの仮説にとどまります。著者らは、屋外飼育の福祉面や環境面での総合的な評価には、さらなる検討が必要だとしています。成長の速さと肉の栄養的な性質のあいだのこうしたトレードオフは、代替的な飼育方式を考えるうえでの具体的な材料になる結果です。
原著論文の著者・所属:Bosa L(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)、Dal Bosco A(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)、Mattioli S(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)、Vispi M(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)、Nompleggio L(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)、Bernabucci G(Department of Agriculture and Forest Sciences, University of Tuscia, 01100 Viterbo, Italy.)、Primi R(Department of Agriculture and Forest Sciences, University of Tuscia, 01100 Viterbo, Italy.)、Castellini C(Department of Agricultural, Food and Environmental Sciences, University of Perugia, 06121 Perugia, Italy.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bosa L, Dal Bosco A, Mattioli S, et al. Effect of Rearing System and Season on Herbage Intake, Performance and Meat Nutritional Quality of Growing Rabbits. Animals : an open access journal from MDPI 2026-10-13. DOI: 10.3390/ani16203218. 原著ライセンス:CC BY.