著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、スロバキア、チェコです。

掲載誌:Animals

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

豚肉の品質は、品種、飼料、ストレス、飼育環境などさまざまな要因の影響を受けます。中でも豚の性別は、成長の速さ、体の組成、脂肪のつき方、筋肉の代謝に関わるため、肉質を左右する重要な要因とされています。

商業的な養豚では、雌豚、生後まもなく外科的に去勢した雄豚(去勢雄)、去勢していない雄豚(非去勢雄)の3つの区分が一般的です。非去勢雄は飼料効率がよく赤身が多い一方、特有の「雄臭」が出やすく脂肪が少ないことがあると説明されています。去勢は雄臭を防ぎますが、脂肪がつきやすくなります。近年は動物福祉への関心から外科的去勢を減らす動きがあり、性別による肉質の違いを総合的に比べることの重要性が高まっていると著者らは述べています。

そこで研究チームは、デンブレッド(DanBred)交雑種の豚を対象に、雌、去勢雄、非去勢雄のロース肉にあたる背最長筋について、物理化学的な性質、加工・調理に関わる品質、食味、栄養面の特徴を比較しました。

どのように調べたか

研究では30頭の豚を性別で3群(各10頭)に分けました。去勢雄は生後7日以内に去勢されています。豚は性別ごとに別の畜舎で飼われ、体重約32キロから肥育を始め、平均94日間かけて約126キロまで育てられました。飼料と水は自由に摂取でき、成長段階に応じた4段階の配合飼料が与えられました。

豚は商業施設で処理され、枝肉の重さや赤身の割合、背脂肪の厚さ、ロース芯(ロース断面の筋肉部分)の大きさが測定されました。さらに、24時間冷却した枝肉の腰の部分から背最長筋を採取し、pH、色、水分・たんぱく質・脂肪などの成分、脂肪酸の組成、ビタミンAとビタミンE類、コレステロールの量を分析しました。

食味については、訓練を受けた5人の評価者が、加熱した肉の香り、柔らかさ、ジューシーさ、風味などを5段階で採点しました。あわせて、肉を刃で切断するのに必要な力(せん断力)や、肉を2回押しつぶしたときの弾力やまとまりやすさなど、機械による食感の測定も行いました。

主な結果

出荷時の体重、赤身の割合、背脂肪の厚さには、性別による統計的に意味のある差は見られませんでした。一方、雌と去勢雄は非去勢雄より枝肉が重く、ロース芯も大きいという結果でした。著者らは、性別が屠体成績に与える影響は限定的だったとまとめています。

肉の成分では、非去勢雄の肉は雌や去勢雄に比べて水分を除いた固形分(乾物)が少なく、去勢雄よりたんぱく質も少ないと報告されました。筋肉内の脂肪量やpHには有意な差はなく、pHはどの群も正常な品質の豚肉とされる範囲にありました。色については、非去勢雄の肉は他の群より有意に暗く、黄色みも雌や去勢雄より有意に少ないと報告されました。

脂肪酸の組成にも性別による違いが見られました。去勢雄は不飽和脂肪酸、特に一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)の割合が最も高く、非去勢雄は多価不飽和脂肪酸(リノール酸やα-リノレン酸など)の割合が最も高い結果でした。研究チームは、不飽和脂肪酸とステアリン酸を合わせた「望ましい脂肪酸」と、血中コレステロールを高めるとされるミリスチン酸・パルミチン酸を合わせた指標も算出しました。前者は去勢雄で最も高く雌で最も低く、後者は雌で最も高く去勢雄で最も低かったことから、著者らは脂肪酸の栄養面では去勢雄が最も好ましいと評価しています。

ビタミンEの仲間であるトコフェロールの合計量は雌で最も多く、去勢雄より有意に多い結果でした。ビタミンA(レチノール)は非去勢雄で去勢雄より多く、コレステロールは非去勢雄で雌や去勢雄より多いと報告されました。

食味評価では、非去勢雄の肉は香りと風味の好ましさの点数が最も低く、風味の強さは雌より高く評価されました。柔らかさの点数には群間で差がなかった一方、去勢雄の肉は雌や非去勢雄よりジューシーさが低いと評価されました。機械による測定では、非去勢雄の肉は切断に必要な力とエネルギーが最も大きく、柔らかさに欠けることが示されました。雌の肉は弾力性とまとまりやすさが他の群より高い結果でした。

研究が示すこと

著者らは、この研究の飼育条件のもとでは、雌と去勢雄の豚肉が非去勢雄の豚肉に比べ、加工・調理面、食味、栄養面でより望ましい特徴を持っていたと結論づけています。ただし、性別による違いの一部は過去の研究と一致しない点もあり、著者らは品種や系統、出荷体重、飼料、飼育方式の違いが影響している可能性を挙げています。

去勢を減らす方向へ生産のあり方が見直される中で、性別によって肉質の何がどう変わるのかを多面的に示した点に、この研究の意味があります。著者らは、こうした結果がデンブレッド交雑種の生産方式を選ぶ際の判断材料になり得るとしています。

原著論文の著者・所属:Karolina Dobiesz(Department of Pig Breeding, Faculty of Animal Bioengineering, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, ul. Oczapowskiego 5, 10-719 Olsztyn, Poland)、Wojciech Kozera(Department of Pig Breeding, Faculty of Animal Bioengineering, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, ul. Oczapowskiego 5, 10-719 Olsztyn, Poland)、Grzegorz Żak(Department of Pig Breeding, National Research Institute of Animal Production, 32-083 Balice, Poland)、Magdalena Szyndler-Nędza(Department of Pig Breeding, National Research Institute of Animal Production, 32-083 Balice, Poland)、Aurelia Mucha(Department of Pig Breeding, National Research Institute of Animal Production, 32-083 Balice, Poland)、Pavol Findura(Department of Machines and Production Biosystems, Faculty of Engineering, Slovak University of Agriculture in Nitra, Tr. A. Hlinku 2, 949 76 Nitra, Slovakia; Faculty of Agriculture and Technology, University of South Bohemia in České Budějovice, 370 05 České Budějovice, Czech Republic)、Miroslav Pristavka(Department of Quality and Engineering Technology, Faculty of Engineering, Slovak University of Agriculture in Nitra, 949 76 Nitra, Slovakia)、Renata Lewko-Wojtowicz(Ceva Animal Health Polska, ul. Okrzei 1A, 03-715 Warszawa, Poland)、Jarosław Krzysztoń(Agri Vet Sp. z o.o., ul. Marcelińska 92, 60-324 Poznań, Poland)、Krzysztof Karpiesiuk(Department of Pig Breeding, Faculty of Animal Bioengineering, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, ul. Oczapowskiego 5, 10-719 Olsztyn, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Karolina Dobiesz, Wojciech Kozera, Grzegorz Żak, et al. Effect of Sex on the Physicochemical, Technological, and Nutritional Quality of Longissimus Dorsi Muscle in DanBred Hybrid Pigs. Animals 2026-10-18. DOI: 10.3390/ani16203281. 原著ライセンス:CC BY.